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異世界でマスコット系リビングアーマー?やってます   作者: ポンポコ狸
第1章 リビングアーマー、異世界に立つ
10/17

9 バカ帰還す、オマケも付けて

お気に入り260超、PV18900超、応援ありがとうございます。



すみません、投稿話順を間違えていました。こちらが、正しい9話目です。






 ウィリアムさんが出かけてから暫くすると、マルデフ村は大騒ぎとなった。冒険者が森に入って行ったと言う事は既に周知され、村人はウィリアムさんの指示で総出で防衛戦の準備を始める。皆、ゴブリンが村を襲いに来るかも知れないと言う話には半信半疑といった様子だったが、万が一があるかも知れないと言う事でウィリアムさんの指示に粛々と従い防衛戦の準備を進めた。弓矢や投石用の石等の武器に始まり、怪我を治療する為の医薬品や立て篭る為の食糧等、準備するべきものは多岐に渡る。

 そしてその間、自警団の人達は冒険者の足跡を追って森の中に偵察に入り、情報収集に努めていた。そんな中、俺とアリシアはそんな村人達に混じり各作業を手伝っていた。


「アリシア、大丈夫か?」

「はい。この位、どうって言う事ありません」


 俺は投石に使えそうな石を拾い、アリシアが準備してくれたバケツに入れていく。


「そうか、何か手伝う事があったら、遠慮なく言ってくれよ」

「はい!」


 体のサイズ的に俺が出来る作業は制限されているので、アリシアと一緒に石拾いに村の外まで来ていた。だがこの体、なりは小さいが以外に力は強いらしく、石が一杯入ったバケツでも易々と持ち上げ浮遊飛行が出来る。天秤棒に吊るされたバケツが左右2つづつ、重さにして100kgはあるんじゃないんだろうか? さっき1度石を村に運んだ時、天秤棒がミシミシ鳴っていたからな。 

 そして2度目の石収集が終わり村に戻ろうとした時、アリシアが意を決したような表情を浮かべながら話しかけて来た。 


「あの、ヴェルさん……」

「ん? どうした、アリシア? バケツが重いのなら、俺の方に石を移してくれて大丈夫だぞ?」

「あっ、いえ。そうじゃなくて……」

「?」

「あの! 私と叡魔契約を結んで貰えませんか!?」

「……はい?」

 

 俺は思わず、間抜けな声を漏らしてしまった。アリシアの申し出が、思いにも寄らなかった事だからだ。

 叡魔契約を結ぶ? 俺とアリシアが?


「“はい”って事は、私と契約を結んでも良いって事ですよね!? やった!」

「いやいや、ちょっと待とうアリシア! 今の“はい”は、疑問の“はい?”だから!? 了承の返事じゃないからね!?」


 アリシアが俺の漏らした間抜けな声を叡魔契約の了承の返事と受け取り歓喜の声を上げたていたので、俺は慌ててアリシアに間違いを指摘する。


「ええっ……違うんですか?」

「いや、そんな残念な顔をされてもな……なぁ、アリシア? 取り敢えず、何で俺とえいま契約を結ぼうと思ったのか理由を教えてくれないか?」


 俺は天秤棒でつっていたバケツを地面に下ろしながら、アリシアに叡魔契約を結ぼうと言い出した理由を問いかける。叡魔契約を了承するにしても拒否するにしても、アリシアがこんな事を言いだした理由を聞いておかないと判断が出来ないからな。

 アリシアも手に持っていたバケツを地面に下ろし、軽く深呼吸をしてから理由を話し出す。


「ヴェルさんは、昨日お父さんにお弁当を届けに行った時の事、覚えていますか?」

「ん? ああ、勿論。昨日の今日の出来事だしな」

「その時のお父さんと自警団の人達との話を聞いて、私に出来る事って何なんだろうって思ったんです」

「ああ、あの時の……」


 俺はアリシアが何の事を言っているのか、漸く思い至る。そう言えば、村の防衛責任者と言う重荷を背負ったウィリアムさんを励ます為に、自警団の人達が自分達の出来る事でウィリアムさんを全力で支えるって言っていたな。


「私、アレから色々考えたんです。自分に出来る事って何なんだろうって」

「その答えが、俺との叡魔契約か?」


 アリシアは俺の問いに、頭を縦に振って肯定する。


「サイモンさんとノエルさんに話を聞いていた時から、ずっと思っていたんです。もし私がヴェルさんと叡魔契約を結べば、今回の件でお父さんの手助け……この村を守る事が出来るんじゃないかって」

「それは……」


 どうなのだろうか? 確かに俺の体はヴェルキュロサス……リアルよりのスーパー系に属するロボットアニメに登場する機動兵器を模した物だが、今の俺が発揮出来る能力は精々軽い飛行能力程度だ。トテモではないが、俺と叡魔契約を結んでもアリシアがゴブリン達と戦える姿が想像できない。

 何せ、本来ヴェルキュロサスが装備している筈の武装が一切ないのだから。選択装備武装は兎も角、内蔵固定兵装さえも使えないとなると、俺には一切の武装が搭載されていないと言う事だ。そうなると、俺と叡魔契約を交わし叡魔武装を使ったとしても、アリシアは俺と言う硬い鎧を纏ってモンスターと殴り合いをするしか無いのだが……今朝のベットの上で怯えるアリシアの様子を思い浮かべると、そんな風に戦うアリシアの姿は想像が出来無い。


「勿論、これが私の勝手な思いで、ヴェルさんに迷惑を掛ける提案だって言う事は分かっています。でも……」


 どうやら、自分がどういう事を言っているかというのは理解しているらしい。そうなると、俺としては聞くことはこの一つで良いだろう。


「……なぁアリシア、一つ良いか?」

「……何ですか?」

「俺と叡魔契約を結んで今回の件でウィリアムさん……村の為になる事をしたいと言う事は、アリシアはゴブリンが村を襲ってきたらゴブリンと戦う気でいると言う事か?」

「……はい」

「今朝、ゴブリンが村を襲うかも知れないと言う話を聞いてベッドの上で震え青ざめていたアリシアに、そんな事が本当に出来るのか?」

「……」

 

 俺の問いに、アリシアは咄嗟に視線を逸らし何も返事を返して来なかった。恐らくこの態度こそが、アリシアの隠しきれない本音だろうな。ウィリアムさん……村の為に何かをしたいと言うのはアリシアの本心から出た思いだろう。だが同時に、ゴブリンに襲われた時のトラウマを刺激され恐怖している。

 こんな状態では、俺と叡魔契約を交わし力を得たとしてもロクな結果にはならないだろう。だから……。


「……この話はまた後でしよう、アリシア。俺と叡魔契約を結びたいと言うアリシアの考えと気持ちは分かったけど、今のアリシアとは叡魔契約を結ぶ事は出来無いよ。ゴブリンと戦うかもしれないから叡魔契約を結ぼうとしているのに、アリシアはまだ戦う事の覚悟が決まっていないからね」

「……」

「本気で俺と叡魔契約を結ぼうと言うのなら、戦う覚悟が決まったその時にもう一度契約を持ち掛けてくれ。俺もその時、ちゃんと返事をするからさ」

「……はい」


 俺の返事にアリシアは意気消沈し、か細い声で返事を返してきた。覚悟を決め行った告白の結果としては少々可愛そうだが、ここで安易にアリシアとの叡魔契約を結べばどちらに取っても余りよろしくない結果にしかならないだろう。

 それに、俺も覚悟を決める時間が欲しいしな……。


「さてと……じゃぁアリシア、そろそろ村に戻ろうか? あまり遅くなると、また心配されるからさ」


 俺は地面に下ろしていたバケツの付いた天秤棒を持ち上げながら、アリシアに村に帰る事を提案する。ゴブリンが何時村に襲って来るか分からないのに、あまり長い時間外に居るのは宜しくないからな。先日に続いてアリシアが長時間外出したまま戻ってこないとなれば、ウィリアムさん達に無用な心配を与える結果になりかねないかもしれない。 

 

「……そうですね、戻りましょう」


 先程の話のショックで元気は無いが、アリシアは地面に置いていた石の入ったバケツを持ち上げる。意外に力持ちだよな、アリシアって。

 そして、俺達は道中無言のまま、の入ったバケツを持って村へと続く道を歩き出した。











 俺とアリシアが5回目の石の運搬を行い運んだ石を所定の位置に置いた時、物見台の方から村全体に響く鐘の音が鳴り響いてきた。何事かと物見台を見てみると、物見台に登っている村人が血相を変え村の外……森を指さしながら叫び声を上げる。


「アイツ等が森から出てきたぞ! しかも、ゴブリンが後を追って来ている!」


 その叫び声を聞いた村人達は一斉に、物見台に登っている見張り役の者が指差す方を見た。塀のせいで姿は見えないが、微かに悲鳴と多数の者が走る足音が聞こえてくる。

 

「村の外に出ている奴等は早く、塀の中に戻れ!」

「弓を持って来い! ゴブリンを仕留めるぞ!」

「戦えない者は、家の中に戻れ!」


 避難を促す誰かかの声を切っ掛けに、村は一気に大騒ぎになる。避難誘導をする者、武器を持ちゴブリンを迎え撃とうとする者、唯唯戸惑いロクに身動きが取れない者……一言で言い表すと大混乱、であった。

 ゴブリンの巣が森の中に出来たと言う情報は既に周知の物であり、冒険者達が森の中に入り込んだと言う情報も既に村人皆が一度は耳にしている。その為、村人達はもしかしたら、万が一、と言う状況は想像はしていたが、まさか本当に最悪の事態を引き起こしてくれるとは……と言う心境だ。


「ヴェ、ヴェルさん……」


 アリシアは若干青ざめた表情で、俺に縋る様な眼差しを向けてくる。


「落ち着け、アリシア。取り合えず、一度家に戻るぞ。今の俺達に出切る事は何も無い、ここに居ても邪魔になるだけだ」

「は、はい!」


 俺とアリシアは急いで家へと向かう。その際、武器を持って塀の方へと向かう人とすれ違う度に、アリシアが唇を噛み締め何かを耐える表情を浮かべていた。ゴブリンと相対する事への恐怖で、何も出来無い自分が悔しいのだろう。

 俺はそんなアリシアの表情を横目で見つつ、とある決意を決めた。覚悟を決める切っ掛けなど、こんなものでも十分なんだなと思いつつ。


「ただいま……」

「おかえりなさい、アリシア」

 

 家に帰ると、クレアさんが安堵した表情を浮かべながら出迎えてくれた。


「大丈夫だった、アリシア? 村の外に出て作業をしていたのでしょ?」

「うん。でも、警鐘の鐘が鳴った時には村の中に居たから」

「そう。良かった……。じゃぁ、悪いけどアリシア。私、これからお父さんの所に行って手伝いをしないといけないから、ティムの事を頼んで良いかしら?」

「お父さんの所に?」

 

 よく見るとクレアさんの服装は、朝見た時の物とは違い動きやすい服装になっていた。


「ええ。直接ゴブリン退治の手伝いは出来ないけど、後ろで皆を支える手伝いは出来るわ」

 

 後ろでの支える……後方支援と言う事か。炊き出しや消耗品の補充と言った所だな。


「……ねぇ、お母さん。私もそれって手伝えないかな?」

「出来るとは思うけど、アリシアにはティムの面倒を見ていて貰いたいの。あの子、この騒ぎで不安になっているだろうし」

「……」

「だから、お願い」

「……うん。分かった」

「じゃぁ、お願いね」


 そう言って、クレアさんは用意していた荷物を持って家を出て行く。アリシアはクレアさんが出て行ったドアをジッと見つめ、暫く無言でその場に佇み続けた。

 







 喧騒も収まり警鐘が鳴って2時間程経った頃、リビングのテーブルでティム君と文字の勉強をしていると、ウィリアムさんがクレアさんと帰ってきたのだが……2人とも表情が暗い。

 俺達3人がそんな2人の顔を見て何事かと怪訝に思っていると、ウィリアムさんとクレアさんは椅子に座り俺達を見据へ口を開く。


「アリシア、ティム、そしてヴェルさん。早ければ今夜にでも、ゴブリンの襲撃が起きる可能性がある」

「「「!?」」」


 ゴブリンの襲撃が!? って、まさか!?

 俺が思わずギョッとした雰囲気でウィリアムさんを見ると、ウィリアムさんは軽く頷き俺の考えを肯定すある。


「知っての通り先程、森に入った冒険者がゴブリンを引き連れ村に戻ってきた。その戻ってきた冒険者を尋問して口を割らせたら、ゴブリンの巣に襲撃を掛けたと言い出したんだ」

「「……」」


 アリシアとティム君は、冒険者が巣を襲撃したと言う言葉を聞き絶句した。俺だって驚いてるよ。


「彼等、彼等が所属する冒険者ギルドでは新進気鋭の期待の若手冒険者チームって持て囃されていたらしいんですよ、だからか自分達の力を過信していたみたいなんだよ。ゴブリンの巣を襲撃した理由も通常依頼を細々かなすより、ゴブリンの巣を壊滅させた方がランク昇格の功績になると思ったかららしい。全く、馬鹿な連中だよ」


 ほんと、馬鹿な奴らだよな。勝手に暴走した上、自爆して人様に迷惑をかける何て……。


「その彼らですが、ゴブリンの巣に襲撃をかけた結果、3人の内2人は死亡。1人が片腕を失う重傷を負いながらも、命からがら村まで逃げてきたそうです。ゴブリンの巣にはゴブリンキングの他、ゴブリンメイジもいたそうで、巣に侵入して直ぐに一人がゴブリンメイジの魔法で殺られ、もう1人がゴブリンキングに切り殺されたそうです」

「ゴブリンキングとメイジって、そんなに強いんですか……」


 自分の力を過信していたとは言え、腐っても彼らは冒険者だ。少なくとも村人たちよりは、モンスターと戦いなれている上それなりに強かった筈だ。そんな彼らが手も足も出せなかったとなると……。

 ゲームや漫画のイメージに加え、ただのゴブリンが俺の蹴り一発で倒せた事から、ゴブリンは弱いと思い込んでいたが、どうやらそうではないらしい。


「はい。しかも悪い事に、生き残りの冒険者を追撃してきたゴブリンを私達が迎え撃ったのですが、その際ゴブリンの一体を仕留め損ね逃がしてしまいました。痛手は追わせましたが、あのゴブリンが巣に戻って村の事を伝えたら……」


 巣を襲撃した襲撃者達への復讐として、ゴブリンキングがゴブリン達を率いて村を襲いにくる可能性があるな。

 はぁ、援軍がもう直ぐ来るって言うのに何でこうなるんだ?















バカ達がやらかしました。いっそ、全滅してくれれば厄介事は無かったんですがね。

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