聖剣、駄剣にジョブチェンジする
「わかったらこれ以上あたしにつきまとわないでっ!」
文乃の言葉に衝撃を受けて固まっていた聖剣だったが、なんとか平静を取り戻すことに成功すると、
「悪いが文乃、それはできない相談だ」
「何でよ!? あたしの憂いを取り除いてくれるんじゃなかったの!?」
「む。それは……そうなのだが。しかし」
ぐぬぬ、となる聖剣。
そんな聖剣を和花は「ほへー」と面白そうに眺めている。
「……なんかあたしが悪いことしてるみたいな感じなんだけど」
「いや、そんなことはない! 君は悪くない!」
聖剣は慌てて言いつのった。
「ねえ、あんた」
「なんだ?」
「続き、言ってよ」
「うん?」
「『しかし』の続きよ」
「あ、ああ、それか。君は……吾輩の恩人だ。だから吾輩は、君に深く感謝しているのだ」
「恩人って。文乃ちゃん、何やったの?」
「別に大したことはしてないんだけど」
「そんなことはない。君は吾輩を救ってくれた。暗く冷たい湖の底に沈みそうになっていたところを見つけてくれたのだ。あの時、吾輩には君が女神に見えたものだった……」
「すごい! 文乃ちゃん、女神様だって! わたしのお願い事叶えてくれる?」
「叶えないわよ! 本物じゃないんだから! というか、この剣が大げさなのよ」
そう言いながらも、彼女は心の中では、
『そこまで思ってくれてるの? え、本当に?』
と、まんざらでもないのだった。
その証拠に、彼女の頬がほんのりと赤く染まっている。
「大げさなどでは決してない! 吾輩は本当にそう思っている!」
「も、もうっ、やめてってば!」
聖剣の言葉に、文乃が恥ずかしそうに身をよじる。
「なんか文乃ちゃんにべた惚れって感じだね~」
二人(?)の様子を眺めながら、ほへ~、と和花が感嘆する。
それに反応したのは聖剣だった。
「惚れてる、か。君の言葉は、あながち間違いではないな」
「え?」
と驚いたのは和花で、
「ふぇっ!?」
となったのは文乃だ。
ますます真っ赤になって、はわわっ、となっている。かわいい。
「聖剣さん! 文乃ちゃんのどこが好きなの!? そこんところ詳しく!」
「彼女の素晴らしいところはいろいろあるが……」
「そんなにあるの?」
「ああ、そんなにある。それこそ、言葉にしていたら、軽く一晩は明かせるだろう」
しかつめらしい声で語る聖剣。
「ちょ、ちょっと文乃ちゃん! こんなに好かれてるってすごすじゃない!?」
「う、うん、そうだね」
答える文乃の反応が薄いのは、想像以上に聖剣に思われていることを知ってパニックになっているからだ。
未だかつて、文乃はこんなに思われたことがないのである。
思いきり照れて、ちらちらとしか聖剣を見られなくなっている。
「もう聖剣さんと付き合うしかないよ! 文乃ちゃん!」
「い、いやいや、それはないから! ……な、ないよね?」
文乃は激しく混乱していた。
目がぐるぐるしている。
「ね、聖剣さん。文乃ちゃんのいいところを語ってたら軽く一晩明かせるって言ってたけど」
「うむ、言ったな」
「その中でも、特にこれっ! みたいなところってないの? 文乃ちゃんの、ここが一番好き! みたいな」
「一番好き、か」
聖剣が考える。
そんな聖剣を見つめる文乃は本当に激しく混乱していて、すっかり乙女の顔になって、聖剣の答えを、今か今かと待っていた。
「胸部だな」
「へ?」
と言ったのは和花で、
「……は?」
となったのは文乃である。
「胸部って……胸ってこと?」
和花の言葉に頷く。
「うむ。彼女の、極限まで贅肉をそぎ落とした胸部は、体を動かすために最適化された、とても素晴らしいものだ。吾輩は文乃のそこが特に好ましいと思っている」
聖剣、ドヤ顔である。顔はないが。
和花が「あちゃー」という顔をしているのも、文乃がうつむいて肩を震わせていることにも気づかない。
「極限まで……そぎ落とした……?」
「うむ、そうだ」
「そう、そっか、そうなんだ……」
「? どうしたのだ、文乃?」
「極限まで貧しい胸で悪かったわね……!!」
文乃は貧乳であることをものすごーく気にしていたのだ。
「文乃ちゃんの怒りが有頂天だよ……!」
「怒髪天よ!」
「そうとも言うよね!」
「そうとしか言わないっ! 聖剣――ううん、あんたなんか駄剣で充分よ!」
「だ、駄剣……!?」
「あたしの前に二度と姿を現さないで!」
「し、しかし! それでは君に恩返しが……!」
「そんなのいらないっ!」
駄剣――ではない、聖剣が彼女に恩返しできる日は、まだまだ遠い。
おっぱいは全て尊い(`・ω・´)