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超Q探偵  作者: XI
3/204

1-2

 少女いわく、彼女には母親の他に身寄りがないとのことだった。治安がいいとは言えない街だ。少女を彼女の自宅に一人で置いておくのは危険を伴いやしないかと考えた。よって、とりあえず、私のところで面倒を見ることにした。事務所は安全といって良い。少なくとも暴漢が殴り込んできたなんていう実績はない。それどころか、ひとが訪ねてくることなんて、そうそうないのだ。冷蔵庫にはキャベツとボイルされた海老、それに多少の米が入っている。私がいない間に空腹を感じるようであれば、それでなんとかするようにと少女に伝え、街へと調査に繰り出した。

 

 まず警察署を訪れた。窓口で対応してくれた男性の警察官に用件を伝えたわけだが、にべもない横柄な態度で「話は承った。役に立てるかどうかはわからないがな」と言われてしまった。だが、「マオが会いに来たとミン刑事に伝えてください」とお願いすると、相手の警官は面倒そうな顔をしながらも取り次いでくれた。そのうち、木製の螺旋状の階段を伝って二階から男が下りてきた。パッとしない濃紺のスーツにぼさぼさ頭の中年男性がミン刑事である。彼は私の顔を見つけるなり、「またお前か」とでも言いたげな、うっとうしそうな顔をした。


 暗い『フートン』の一角にある喫茶店にミン刑事と入った。私はお冷やだけで良いと言い、ミン刑事はコーヒーをオーダーした。値の張るコーヒーを躊躇なく頼める刑事は、この街にあってはやはり富裕層だと言える。


「で、用向きは何だってんだ?」

「女性を一人、探しています」

「名は?」

「ニーナ・ガブリエルソン」

「聞いたことがねーな」

「金髪の女性で、瞳の色は恐らく青空のようなブルーです」

「知らねーな」

「本当ですか?」

「嘘を言ってどうする」

「もう一度伺います。本当に心当たりはないのですか?」

「おまえのくどいところは好きになれねーな。知らねーもんは知らねーよ」

「ミン刑事が何かご存知なら話は早かったのですけどね」

「残念だったな」

「とはいえ、当案件の結末については、ミン刑事にも予測がつくのでは?」

「女が一人消えちまったってんだろう? だったら大方の見当はつくさ。わかっているとは思うが、直接娼館を洗うのはややこしいぜ? 女衒のヤクザに目を付けられちまうだろうからな」

「ええ。嗅ぎ回っていることを知られると、下手をすれば、どぶに沈められかねない。別のルートで探りを入れてみるつもりです。とはいえ、です」

「何だ?」

「私としては、ミン刑事に『こと』を解決していただいてもいいんですがね」

「俺を含めた警官が揃いも揃って真面目だとなると、おまえは食い扶持を一つ、失うことになりかねないぜ?」

「そうかもしれません」

「だろう?」

「しかし、私は行方不明者を探そうとしているわけです。すなわち、警察の仕事を手伝おうという立場にある」

「何が言いてーんだ?」

「警察から報酬をいただいてもいいくらいだということです」

「相変わらずだ。おまえはくどい男だが、折衝だけは上手い」

「多少、お支払いしてもらえますか?」

「やぶさかじゃねーよ。わかった。いくらか払ってやる」

「私に『やれ』ということですね?」

「ああ。それでかまわねー」

「わかりました」

「精々働くことだ。探偵サン」

「まあ、頑張りますよ」


 私は席を立ち、喫茶店をあとにした。


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