どうして、俺たちは、デパートの「北海道物産展」に出かけないのか?
デパートの8階などで、催されている「駅弁大会」とか。
伝説の「釜めし」とか、神戸牛弁当とか、
「ああ、今、開催されているんだなあ」
と、チラシで見て、結局、行かない。
東海林さだおの縄張りだからか。
東海林さんだって、朝から晩まで
いるわけじゃない。
帰った頃を見計らって行けばいいじゃないか。
なのに、行かない。
大体、8階にあるのが、遠い。
一階には、ティファニーやプラダとかの、ブランド店が、
待ち構えている。
俺は、駅弁が食いたいだけなのだ。
ティファニー店員(なんて言うんだっけ)のマイナス50度の
冷たい目線を浴び、
悪魔のようなプラダ店員の氷の微笑を浴びつつ、
ジャージにサンダルという格好で進まなければならない。
シャネル、ジパンシー、バンジージャンプなどの
ブランド店員たちが、つぎつぎと襲いかかる。
服が買えぬなら、せめて、ハンカチか、ネクタイピンでも買え、
と迫ってくるのだ。
それら攻勢をかわしながら、二階へと進まねばならない。
兄者が、シャネルにつかまり、つれて、いかれる。
兄者は、ふりむきながら、
「弟よ、俺の分まで、北海道ラーメンを喰ってくれ。
チャーシューを、たのんだ、ぞ」
「あ、兄者ァァァァーーー!!!!!」(泣)
泣いている場合じゃない。
ブランド品に身を固めた、年寄りには見えないが、
若者にも見えない、紫色の髪の毛のおばさんの中を、俺たちは、
「こんな、格好でも、ええじゃないか」(ヨッ)
「どんな、格好でも、ええじゃないか」(ハッ)
「駅弁だけ、食っても、ええじゃないか」(トッ)
「ジャージはいてて、ええじゃないか」(ヨッ)
「サンダルはいてて、ええじゃないか」(ハッ)
「ズボンに、穴あいてて、ええじゃないか」(トッ)
と踊りながら(踊らなくてもいいけど)、
突き進まなくてはならないのだ。
「味見のウィンナー、ええじゃないか」(ヨッ)
「食べて買わないけど、ええじゃないか」(ハッ)
「買うつもりないけど、ええじゃないか」(トッ)
「タダの風船、ええじゃないか」(ヨッ)
「タダのジュース、ええじゃないか」(ハッ)
「タダならなんでも、ええじゃないか」(トッ)
もう、客じゃないですね。一種の打ちこわしですね。
「かくれんぼ、してても、ええじゃないか」(ヨッ)
「おにごっこ、してても、ええじゃいか」(ハッ)
「かけっこ、してても、ええじゃないか」(トッ)
一階にいる金持ちの中を、
8階にあるという駅弁大会を目指して、俺たちド貧民が、ねり歩く、
「逆タイタニック・アドベンチャー」状態が
爆発するのだ!! きゃあああ
「マネキンたおして、ええじゃないか」(ヨッ)
「マネキン、けとばし、ええじゃないか」(ハッ)
「マネキン、とばして、ええじゃないか」(トッ)
パニック映画である。ゾンビもにげるわ。
北海道のアイスクリームもドテ焼きも、「客寄せ」の
ためであって、運んでくるのに、どえらいコストが
かかっているのだ。
それは、なんとなく、わかる。
それなのに、アイスクリームだけ買って、なめるやつは、クズなのだ。
迷い込んだドブネズミなのだ。
店員の目が、それを証明している。
そこまで、言うのなら、ドレス・コードを作ってよ。
貸してくれるなら、ネクタイをつけますよ。
これ以上、店員の人相が悪くならないためにも、
よろしくお願いします。
おれは、ただ、駅弁が食べたいだけなのだ。