第九章 いざ!
MASK OF HEART
第九章 いざ!
ヨウは、心を決めた。
「ヨツコシ」に寄ったとき、ふと思った。
僕は、何故か知らないが、この世界に来ている。
偶然の巡り合わせというしかない。
だが、僕は、何のために、この世界に来たのだろう?
この世界を救うため?脱・NEETするため?セオの秘密を探るため?
・・・、
セオの秘密って、何だ?
「セオは、本当に、寝返ってしまったのか?」
ヨウは、セオのことについては、全くと言って良いほど、無知である。
セオの過去に何があったかも知らぬまま、冒険を進めてもいい、むしろ、知らない方が良いように思えてきた。
「まあ、いいや!とにかく、コウザカタワーに行こう!何か解るかも知れないしね。」
ヨウは、とうとう吹っ切れた。
「こころ」の奥底にある不安が、消えたようだ。
*
ヨウとマタムネは、勢いよく「ヨツコシ」デパートを、出た。
早く市長に会った方が良いということは、薄々気づいていた。
「一体、どんな奴なんだろう?ダルマみたいな顔なのかな?」
二人は、思わず顔の筋肉が、緩んだ。
いざ、「コウザカタワー」に来てみると・・・
「只今休業中。再開は、三日後です。」
「はああああああああああ????!!!!!」
二人は、怒りと驚きの混じった声色で叫んだ。
周りの通行人が、二人をじろじろと見つめてきた。
「なんで?折角来たのに・・・」
ヨウは、なんとなく悲しくなった。
「・・・まあ、仕方ないさ!また、通行人に聞いてみれば良かろう!」
マタムネは、慰めるように、ヨウの肩に手をかけながら、言った。
「うん・・・。そうだね!また一からだけど、頑張ってみよう!」
ヨウの声色は、明るみを取り戻した。
*
「・・・すいましぇん!今市長は、何処にいらっしゃってるのですか?」
もう、インタビュー人数100人目だった。ヨウは、疲れ切った声で言った。
「ああ!あのタヌキ顔の市長ね!今は・・・、市長の家に居るんじゃないかな?市役所が、未だ出来てないからね。市役所は、「コウザカタワー」になるのですもの!おっほっほ!」
マダムみたいな女性が、答えてくれた!
「あ、ありがとうございます!」
ヨウは、ほっとした。
「で、その、市長の家は、何処にあるのですか?」
ヨウは、何気なく質問した。
「ああ、「コウザカタワー」から北に真っ直ぐに歩いていくと、そこにあるわよ!おっほっほ!・・・あ、そうだ!市長の家には、IDカードが無いと入れないのよね・・・、でも大丈夫!私、市長夫人ですもの!顔パスですもの!」
市長夫人は、自慢げに、言った。
「本当ですか!ありがとうございます!」
ヨウは、土下座をしながら、言った、。
「そんなに大袈裟にならなくていいわよ。なにしろ、市長(「モルモン」という名前らしい)は最近何だか様子がおかしいんです。昔はあんなに、自然そのものが好きだったのに・・・、今では、文明的なコンクリート世界にすっかり取り憑かれているようなのです・・・。」
市長夫人は、泣き出してしまった。
「大丈夫でござる!我々が、何とかするでござる!」
マタムネは、胸を張って言った。
「・・・本当に大丈夫か?・・・」
ヨウは、不安になった。
「ありがとう!あなた達に感謝するわ!ちなみに私の名前は、「ソール」よ。今後とも宜しく!」
ソールは、元気を取り戻した。
「さあ行こう!勇気を出して!」
マタムネは、二人を元気づけるかのように、言った。
<第九章 終>