第四十五章 ひとり
「「悪」のプログラムを、「あの時」に入れられて、記憶が・・・」
老人は、ガクガク震えている。
「あっ・・・、う・・・、?!」
突然、ヨウの脳裏から、「何か」が、蘇ってきた。
「やっぱり・・・、この時を、ずっと、待ってた。」
ヨウの口調が、まるで、別人の様になった。
「「あの日」以来、ボクは、ずっと、閉じこめられてた。」
ヨウ・・・、いや、ヨウの中の何者かが、震えた声で、言った。
「ま、まずい!!!」
老人は、あたふたしているが、どうすることもできない。
「「グラモス」を、倒さねば・・・、うっ・・・」
ヨウは、頭を抱え、そのまま、倒れた。
老人は、ヨウのこと、自分のことをマタムネ達に話した。
「私は、昔グラモスの研究の助手をしていた。確か、プロトタイプのアンドロイドは12体あったはずだ。その全てのプロトタイプには、本物の「ヒト」から取り出した、「I.D.(Intelligence Device=知能装置)」という物が埋め込まれており、それぞれの人間でいう心臓辺りに、「こころのQ」がある。これは、人間の「マドウ」のパワーの限界を超えるために作られた物で、装甲右腕、装甲左腕、装甲脚、装甲胴、装甲頭が、それぞれLv.Ⅰ、Lv.Ⅱ、Lv.Ⅲ、Lv.Ⅳ、Lv.Ⅴとなるが、PRだけは、Lv.Ωが存在する。これは、装甲する物ではなく、金属化することを言う。メタルすることにより、身体能力は、Lv.Ⅴの一億倍とも言われているが、定かではない。さらに、ヨウ(アラバナ)の場合は、悪成体の人格と、幼体の人格、そして成体の三人格が共存しているが、Lv.Ⅰの覚醒により、共存のバランスが崩れ、ヨウの人格は現在不安定な状態だ。そして、ヨウだけの特殊な例なのだが、フラとは名ばかりで、正式な悪成体ではない。だが、早く手を打たないと、彼の人格は3つとも破壊され、死ぬだろう。とにかく、このことを理解してくれ。」
「は、はい・・・」
マタムネの返事には、戸惑いと不安が混じっていた。