第四十四章 己
「じゃあ、早速、お前に、稽古をつけてやる。」
老人は、指をポキポキ鳴らしている。
「え・・・、そんな・・・」
ヨウは、ブルブル震えている。
「なら、こっちから!」
老人が、飛びかかって来た。
「うわあ!」
ヨウは、サッと避けた。
「どうした!!何に怯える。」
老人は、頬を緩ませた。
「え・・・、いきなり・・・来たから・・・」
ヨウの足が、ガクガク震えている。
「なら・・・、Lv.Ⅰ!!!発動。」
そう唱えた瞬間、老人の腕に、蛇をモチーフにした、装甲腕が、現れた。
「うわあ・・・・・・・・・、信念、信念、信念を持たなきゃ・・・、俺は、俺は・・・、み、みんなを、守りたい!!!」
怯えたヨウの腕から、突然、眩い光が、放たれた。
「やっと、来たか。」
ヨウの腕に現れたのは、謎の紋様と、眩い光を放つ、「実体の無いような物」が、現れた。
「アラバナ。そのゲマルガは、「今の君の「こころ」」を実体化させている。つまり、善であればあるほど、悪であればあるほど、強くなる。」
老人は、硬直している。
「へ!俺は、善じゃない!悪だ。」
その瞬間、ヨウのゲマルガの色が、黒に変わった。
「やばい!Lv.Ⅰに「こころ」が、反発反応が起きている・・・。我が止めてやろう。」
突然、老人のゲマルガが巨大化した。
「ゼルバトラス!」
老人は、衝撃波を起こした。
その瞬間・・・
ゴオオオオン!!!!
衝撃波が、耳に入ってくる。
耳の中で、とてつもない音が、反響し続けている。
ヨウは、目の前が、ぼやけ始めた。
「くっ・・・、やっと、「悪」が出れるチャンスで、しかも、体を乗っ取れると思ったのに・・・・、くそおおお!!!」
ヨウのゲマルガは、白色に、染められていく。
「ふう・・・、世話かけやがって。」
そう、老人は、呟いた。
次の日、ヨウは、まるで何かに驚いたかのように、目覚めた。
「あれ・・・、俺、途中から何してた?」
「あんた、暴れてたよ。」
マタムネは、溜息をついた。
「え?」
ヨウは、頭を掻きむしった。
「あんた、偽善者なんじゃない?」
デナは、そっぽを向いている。
「ヨウ、REAL-HEAVENに行け。君は、そろそろ、自らの「悪」に、決着を、つけるときなんじゃないのか?」
老人は、無表情だ。
「確かに、俺は偽善者かも知れない。だけど、この世界に、早く、平穏をもたらしたいという気持ちは、本当なんだ!」
ヨウは、必死に、叫んだ。
「ほんとは、この世界を、俺の物にしたいんだろ?」
「黙れ!!!お前は、・・・ん・・・、うわあああああ!!!!」
ヨウの頭に、割れそうなほど、痛みが、走った。
「こいつは、もしかしたら・・・」




