第四章 衝撃
MASK OF HEART
第四章 衝撃
洞窟を抜けた後、ヨウとセオは、別れた。
どうやら、セオは急用ができたようだ。
ヨウが周りを見渡すと、黄色い砂が、空までも包みそうな位に延々と続いていた。
「砂漠」だ。
セオの話によると、以前はここ一帯は草木生い茂る森林だったという。
それが、3年前に全て破壊され、砂漠となってしまった、という。
森林の名は、なんと「セオの森」と言うらしい。
彼が、この森(っといっても、砂漠だが)の守り主だったのだ。
確かに、彼の目には、希望の光を感じることができない程に冷め切っていた。
悲しい事実を、自分は知ってしまったようだ。
涙が、止まらない。
次から次へと、あふれ出していく。
こんなに、泣いたのは、初めてだった。
*
セオの話によると、ここから真っ直ぐにいくと「サンドラ」に着くそうだ。
その町は、それ程大きいとも言えず、小さいとも言えないらしい。
「とにかく、着いたら直ぐに、町長に会うといい。」
セオは、暗い声で言っていた。
とにかく、進んでみよう。
延々と続く、「砂と化した森」を。
果てしない砂漠を暫く歩いていると、何故か、湖のような物が見えてきた。
「オアシス」だ。
しかも、家がある。
しかし、人のいる気配は、全く無い。
「もしかしたら、セオの家?」
ヨウは、首をかしげながらも、その家に寄ることにした。
立て看板がある。
「ここは、セオ・アルバードの家」
やはりそうだった。
「やった!」
セオは、満面の笑みを浮かべ、ドアを叩いた。
コン コン。
「セオ?居るんだろ?返事してくれ!」
ヨウは、見えない不安にかられていた。
「おい、いい加減返事してくれ!」
ヨウは、限界ギリギリの音量で、力一杯叫んだ。
しかし、セオは、出てこなかった。
怪しい、と思い、ヨウは、扉のノブに手をかけた。
そして、ひねった。
扉が、「ギー・・」という音を立てて開いた。
やはり、誰も居なかった。
奥の方には、ベットが一つ。
中央に、机が一つ。
右側に、桐箪笥が一つ。
その箪笥の上には、セオと見知らぬ男性と一緒に写っている写真が、立てかけてあった。
とにかく疲れたので、ヨウは、セオのベットで、寝た。
*
暫く寝ていると、見知らぬ男性が立っていた。
セオと一緒に写っていた、あの男性だった。
「失礼ですが、貴方は誰ですか?」
見知らぬ男性は、不安がった声で、言った。
「ヨウと言います。失礼ですが、貴方の名前は?」
ヨウは、サラリと答えた。
「私は、レオンと言います。サンドラという町の町長です。」
レオンは、堂々とした口調で、答えた。
「え?貴方が、サンドラの町長なんですか?」
ヨウは、拍子の抜けた声で、言った。
「そうですけども、何か?」
レオンは、少し怒った口調で言った。
「あの・・・。セオさんを、ご存じですよね?」
ヨウは、おそるおそる言った。
「知っています。彼は、以前私に会いに来ました。そして、セオは、私に、こんなことを言ったんですよ。」
レオンは、セオの言っていたことを、次々と、言い始めた。
「私は、今、病に冒されています。それは、「悪心病」という不治の病なんです。一度この病に罹ると、だんだん自分の「こころ」から、「善」という概念が無くなり、「悪」が「こころ」を支配してしまうという、恐ろしい病なのです。この森を、私が、破壊し尽くしてしまうことに・・・、なることに・・・」
セオは、これ以上言葉が続かなかったという。
「実際に、セオの「悪」の「こころ」が、この森を破壊してしまいました。なんとも、悲しい事実です・・・」
レオンは、泣き始めてしまった。
「セオは、私を助けました!彼は、未だ、「悪」の「こころ」に、完全には染まっていません!」
ヨウは、泣き叫んだ。力一杯に、泣きじゃくった。
「何で、あんなに、心優しい人が・・・」
レオンは、泣きながら、つぶやいた。
*
しばらくして、緩んでいた涙腺は、元に戻った。
「そういえば、セオは、何処へいったのですかな?」
レオンは、首をかしげながら、言った。
「用事がある、とか言って、どっかに行きましたよ。」
ヨウは、あっさりと、答えた。
「まずいぞ・・・。サンドラに向かっているかもしれない。彼の「悪」の「こころ」が、サンドラを破壊し尽くしてしまうかもしれない!」
レオンは、怯えた声で、言った。
「なに?早く、サンドラへ向かいましょう!!」
ヨウは、慌てた声で、言った。
セオの家を出て、すぐさま、「サンドラ」へ、二人は向かった。