第二十九章 二人よ、急げ。
一方、ラルースが、牢屋から脱出していた頃、二人は、ホテルを急いでチェックアウトしていたころだった。
「早くしてくれ!女性一人がさらわれたんだ!」
ヨウが、足踏みしながら、暴れている。
「なら、早くお金を払って下さい。」
受付係は、整然と答えた。
「昨日盗まれたんだよ!なんか変な軍団に!」
「ああ、なら、ここで働いて、その分の給料稼いでください。」
「はい。」
ヨウとマタムネは、部屋に荷物を運ぶ仕事をやらされた。
そして、1時間後・・・
「はあ〜!疲れた!案外、仕事っていいもんだね!NEET辞めようかな。」
ヨウの顔は、爽やかになっていた。
「はい!仕事終わり!お疲れさん!」
係員は、にこやかに笑った。
「やったあ〜!」
二人は、絶叫した。
やっとホテルを出た時、何か忘れていることに気がついた!
「やべえ!ラルースのこと、すっかり忘れてた!」
*
ヨウは、焦っていた。
「ちょっと!やばいよ!ラルース、今頃、殺されてるかもしれないよ!」
「まあまあ、ヨウ、落ち着け。時間はたっぷりある。」
マタムネは、平然と言った。
「なんで!連れ去られたんだよ?あの「ムダン」に!」
ヨウは、かなりビクビクしている。
「それは・・・・、うっ!・・・」
マタムネは、頭を抱えながら、倒れ込んでしまった。
「大丈夫か?どうした?何があった?」
ヨウは、マタムネに寄り添った。
「・・・頭が、凄い、ズキズキする・・・」
マタムネは、見るからに、やばそうだ。
「病院に、行くか?行かないと、死んじゃうかもしれないよ!!」
ヨウは、戸惑っていた。
「だ、大丈夫だ。ほら、このとおり!」
マタムネは、立ち上がって、ピョンピョン跳ねた。
「良かった!凄く苦しそうだったから。」
ヨウは、満面の笑みを浮かべた。
「さっきの頭痛で、もやもやだった記憶が、ハッキリした。多分、ラルースは、昔の自分の研究所に連れ去られた。今じゃ、「ムダン」のエネルギー発生所にされているようだ。」
マタムネの顔つきが、頭痛で倒れ込んだ前と、全く違っていた。
「え・・・、あんた、科学者だったの?」
ヨウは、普通に驚いている。
「そうさ。昔は、一流の、科学者だった。だが、「ムダン」に連れ去られて、そのまま、記憶が全くなかった。そして、自分は何故か、武士になっていた。・・・記憶置換をされたようだ。」
マタムネは、もう武士の面影は、全く無かった。
「うん。そうだね。で、研究所って、何処?」
「ダサマの市庁から、南東に1000m行った所に、有るはずだ。」
「じゃ、急がないと!ラルースが、ピンチだ!」
「そうだな。」
すでに、マタムネは、武士の顔つきから、科学者に変貌していた。
しかし、彼の中には、今でも、「武士道」が生きているに、違いない。
*
ここは、ドランザ駅前。なぜか寂れている。
「ドランザから、ダサマまで、「鉄道」が通っているから、たった2分で着いちゃうよ。早いね〜。」
ヨウは、駅前の看板を見ながら、言った。
「そうだが・・・、何だ?この寂れ具合は?駅前に店一つ無いぞ。」
マタムネは、キョロキョロ辺りを見回している。
「まあ、良いんじゃない?電車が来れば、良いことじゃん!」
ヨウは、駅に近づきながら、言った。
「まあ、それもそうだな!」
マタムネも、駅へ、近づいている。
駅に、入った。
別に、何も起きない。
「何だ!何も起きないじゃん。」
マタムネは、ほっとした。
「まあ、切符買わないと、ね。」
ヨウは、目の前にあった、自動券売機に、お金を、入れた。
ココから、ダサマまでは、二人合わせて、630円だった。
「安い!」
ヨウは、ウキウキしながら、マタムネに、切符を手渡した。
そして、自動券売機の隣にある、自動改札機に、切符を入れた。
普通に、通れた。
「な、何だ!普通の駅じゃないか。良かった・・・」
マタムネが、ホッと一息ついていたら、電車が来た。
「ピンポンパンポン!間もなく、ダサマ方面ヘ向かう電車が、参ります。緑色の線の内側に、下がって、お待ち下さい。」
自動放送が、駅構内に、こだまする。
そして・・・
なんと、「リニアモーターカー」が、猛スピードでやってきた。
そして、止まった。
「すげえ!2006年の時なんか、全然実用化されていないのに!やっぱり未来は、すごいな」
ヨウは、感激している。
「何を言っているんだよ、これは、大昔の2030年に作られた、戦前の奴だぞ!超古いよ」
マタムネは、平然と、言った。
「あ!そうだったね、じゃあ、乗ろうか!」
二人は、リニアモーターカーに乗った。