第二十一章 船に揺られて何処までも
ガバド港から、貨客船「千景見号」という船に乗った。
乗り心地は、微妙だ。
「そういえば、この話知ってる?」
ラルースは、ヨウの肩を叩いて、言った。
「ん?何の話?」
ヨウは、少し気分が悪い様だ。
「一回、地球は、滅びたらしいよ。2006年から、たった30年後の2036年に、第三次世界大戦が起こって、30億人も死んだんだって。しかも、戦争をしたのは、中国とアメリカだけだったんだって。最後は核戦争にまで発展して、日本とかロシアとかが巻き込まれたらしいよ。しかも、戦争を始めたきっかけが、日本にあったんだって・・・。」
ラルースは、前に読んだ、古ぼけた新聞の記事を思い出しながら、言った。
「何だって?!戦争が起きた?そんなのあり得ないよ!だって、世界の国々は、平和を守ろうって、誓った筈なのに・・・。」
ヨウは、ブルブル震えていた。
「どれだけ、平和への努力をしても無駄だったってことなのよ・・・、だけど、今の世界は、ちゃんと平和が守られるようなシステムを取ったわ。もうこれで、二度と戦争は起こらないわ。」
ラルースは、自慢気に言った。
「そんなのウソだ!!だって・・・、人間の「こころ」に闇(悪)がある限り、戦争は起き続ける。だって、第二次世界大戦の時だってそうじゃないか!人間の「こころ」の闇を巧みに利用して、世界を戦争に巻き込んだじゃないか!二度と戦争が起きないなんて・・・、有り得ないよ。」
ヨウは、激しく反発した。
「世界は、変わったの。これが、「とき」の流れというものよ。もう私達のいた時から1000年も経っているのよ。世界が変わらないんじゃ、何時まで経っても戦争は繰り返される。このことのやっと、世界は気づいたのよ。」
ラルースは、必死に説得している。
「そうか・・・、「とき」は、常に動いているんだ・・・。そのことは、何となくだけど、分かったよ。」
ヨウは、首を縦に振った。
「良かった!!それで、今、世界をまた戦争に巻き込もうとしている組織があるのよ。」
ラルースは、真剣な眼差しで、ヨウを見ている。
「え・・・。」
ヨウは、それしか言えなかった。
「その名は、「ムダン」。天空国と地国を戦争させようと密かに企んでいるのよ。目的は、確か、「地と天空をムにすれば、真の平和が訪れる。」とか言ってたかな?とにかく、狂ってるのよ。」
ラルースは、世界の真相を熱く語った。
「狂ってるよ・・・、戦争を起こせば、何人、いや、何億人の人が死ぬんだぞ!!自分が、変えてみせる。二度と、戦争を起こさせないためにも。」
ヨウは、決意した。
「お〜い!もうすぐサザン島に着くよ!!」
マタムネは間の抜けた声で、言った。
世界は、だんだんと、悪い方へ、進み始めている。
だが、ここに、世界の運命に立ち向かおうとしている、一人のNEETが現れた。
世界の、過去、現在、未来は、彼の、いや、彼達の手に因って、好転し始めるのかも知れない。
そう。
運命は、変えられる。