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MASK OF HEART   作者: 天川 榎
第三節 雪山の秘密
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第十四章  ときのたび



サノンは、ようやく家に帰り、落ち着いた。

家までの道のりは、地表が雪に覆われていた。


「はあ・・・、ココか、お婆さんの家は?」

ヨウは念には念を押して、確認した。

「そうさ。昔は、このへんは、ダンマリ村があったのだが、今では廃村してしまい、私一人しか住んでいないのだ。」

サノンは、悲しげに言った。

「それは、何年前のことですか?」

ヨウは、家の窓から、外を見ながら、言った。

「もう、十五年も前だ。この辺の風景も、家ばかりの風景から、草むらの風景に変わってしまったよ。」

サノンは、ショボンとなってしまった。

「そうなんですか・・・。」

そう、ヨウが言い放った後、暫く沈黙が続いた。

               *

「そうだ!これを持って行きなさい!」

サノンは、長い沈黙を引き裂いて、言い放った。

おもむろに、ポケットから、メダルの破片のような物を取り出した。

「これは、「ときのたび」をして以来、ずっと大切にしていた、「家族のメダル」だよ。私とアラバナの分があるんだけど、あなたがもしアラバナだったのでも、アラバナじゃなくても、あなたに持って欲しいの。これを、あなたに託すわ!」

サノンは、ヨウの手にそっと手渡した。

「本当に、持って行って良いのですか?」

ヨウは、戸惑っていた。

「いいのよ。マドウが使えなくなって、後もう少しで、逝ってしまうかも知れない体だからね。私の側にあるのは、私の家だけで十分ですもの。」

サノンは、笑いながら、一筋の涙を流した。

「分かりました。これは、自分が、大切に持っています。」

ヨウは、決意を固めた。

「ならいいわ。気をつけて、いってらっしゃい!」

サノンの笑顔が、いつの日にか見た、笑顔のそっくりだった。


二人は、ガバドに向かって、歩き始めた。


<第十四章 終>

<第三節 終>


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