第十四章 ときのたび
サノンは、ようやく家に帰り、落ち着いた。
家までの道のりは、地表が雪に覆われていた。
「はあ・・・、ココか、お婆さんの家は?」
ヨウは念には念を押して、確認した。
「そうさ。昔は、このへんは、ダンマリ村があったのだが、今では廃村してしまい、私一人しか住んでいないのだ。」
サノンは、悲しげに言った。
「それは、何年前のことですか?」
ヨウは、家の窓から、外を見ながら、言った。
「もう、十五年も前だ。この辺の風景も、家ばかりの風景から、草むらの風景に変わってしまったよ。」
サノンは、ショボンとなってしまった。
「そうなんですか・・・。」
そう、ヨウが言い放った後、暫く沈黙が続いた。
*
「そうだ!これを持って行きなさい!」
サノンは、長い沈黙を引き裂いて、言い放った。
おもむろに、ポケットから、メダルの破片のような物を取り出した。
「これは、「ときのたび」をして以来、ずっと大切にしていた、「家族のメダル」だよ。私とアラバナの分があるんだけど、あなたがもしアラバナだったのでも、アラバナじゃなくても、あなたに持って欲しいの。これを、あなたに託すわ!」
サノンは、ヨウの手にそっと手渡した。
「本当に、持って行って良いのですか?」
ヨウは、戸惑っていた。
「いいのよ。マドウが使えなくなって、後もう少しで、逝ってしまうかも知れない体だからね。私の側にあるのは、私の家だけで十分ですもの。」
サノンは、笑いながら、一筋の涙を流した。
「分かりました。これは、自分が、大切に持っています。」
ヨウは、決意を固めた。
「ならいいわ。気をつけて、いってらっしゃい!」
サノンの笑顔が、いつの日にか見た、笑顔のそっくりだった。
二人は、ガバドに向かって、歩き始めた。
<第十四章 終>
<第三節 終>