表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋姫異聞録~Blade Storm~  作者: PON
第一章 世界放浪
5/125

第四幕

前回のあらすじ

追っ手を怒らせて、悪役に徹した主人公

「その言葉は聞き飽きた。里長の言葉を借りるなら、言葉ではなく、刃で己の意思を示して見せよ」


 二刀を振るう夜刀に対し、伊邪那岐は未だに刀を抜いていない。されど、そのことを考慮して、相手に時間を与えることなど愚の骨頂。彼の方は容赦なく伊邪那岐へと襲い掛かる。


 通常、刀というものは、片手で振るうには向いていない。西洋の刀剣と同じく、両手で振るい、相手の攻撃を受け、あるいは受け流し、そこから攻勢へと転じる。二刀になれば、本来、両手で支える刀の重量を片手で支え、なおかつ、体を流されないようにするために、己の体を完全に支配下に置くことが前提。それ故に、一本の時よりも、二本の時の方が動きは鈍重。それを知ってもなお、二刀流という戦い方が廃れなかったのは、その欠点を補って余りある攻め。


 それでも、完全に伊邪那岐を捉えることはできず、彼の頬、腕、脚に、うっすらと赤い軌跡を残しているだけ。対して、伊邪那岐はまだ、刀を抜いていない。取り方によっては、伊邪那岐が刀を抜く暇がないほど、夜刀が彼を追い詰めているように、見えなくもない。


「これで、終いか?」


「戯言を、俺は、序列七位。貴様は末席。俺が、この夜刀が、お前に負ける可能性は万に一つもない」


「他人が決めた評価に、そこまで依存できるお前の考えが、俺には理解できん」


「理解などされなくて結構。俺は、今、里の追っ手としてではなく、一人の女を愛した男として、貴様を斬る」


 夜刀のその言葉を聞いた瞬間、関を切ったように伊邪那岐は大声で笑いだし、こともあろうに、腰に差していた刀を一振り、その場に投げ捨てる。


「そのような啖呵を切られるとは、俺も正直、思っていなかった。すまん、先に笑ったことは詫びておく」


「なら、これはどういうつもりだ」


「見ての通りだ。里の傀儡として、俺を斬りに来たというのなら、情報を聞き出してから殺すつもりだった」


 挑発としか取れない行為をして、伊邪那岐はなおも言葉を続ける。


「だが、好いた女のために戦うというなら、この場で斬るのは、いささか無粋。お前を打ち負かすことにしよう」


 ニヤリと、口の端を釣り上げ、彼は笑う。


「やれるものならば、やってみるがいい」


 言葉とともに駆け出す夜刀。刀を拾う暇など与えない。相手がやる気になったことは、不安要素の一つとして含まれるが、それがどうしたというのか。自分の女を傷つけられ、男として黙っているのは、男にあらず。


「獲った」


 殺戮技巧、ななの座、大蟹おおがざみ

 剣の一族に代々伝わる、戦場において人を殺すためだけに洗練され続けてきた技。伊邪那岐の右を取った夜刀の両刀。その刃は前後から同時に襲いかかる。まさに、鋏のように相手の首、もしくは胴体を切断する。


「阿呆」


 その言葉と同時、夜刀の眼前に二本の矢が出現する。伊邪那岐は矢など持っていない。なら、この矢はどこから来たのか。思考してみれば至極簡単。彼が夜刀に対して投げつけた矢は、先ほど、女性が夜刀の身を案じ、放った矢に他ならない。


 如何に夜刀といえど、至近距離から放たれた矢を回避することは非常に困難を極める。当然、体を後ろへとずらす。それが、伊邪那岐の描いていた終了図であることを彼が知る由もない。


「しばしの間、寝ておけ」


 殺戮技巧、ろくの座、破砕くだき

 先ほど投げすてた刀を拾い上げ、左手は鞘へ、右手は柄へ。握ったまま抜刀することなく、柄頭で相手の鳩尾へと衝撃を叩き込む。本来の使い方であれば、体を捻り、相手の武器を柄頭で弾く、もしくはへし折る武器破壊の技。それを、夜刀の足を踏みつけ、逃げられないようにして、衝撃のみを彼は叩き込んだ。


「まったく、人殺しの技をこんなふうに使う日が来るとは、な」


勝負アリ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ