第一話 日常から非日常へ。
初投稿です。これからよろしくお願いします。
※少し変更しました。
私は運が悪い。
別に誰が悪いとかそういうことを言ってるんじゃなくて。
この事に関してだけは誰も悪くない。
親が悪いわけでもなく、ましてや周りの環境が悪かったんでもない。
そして、
私が悪いわけでも、ない
どうしようもないことだ。
毎日そう考えている。
毎日そう考えてきた。
なのに
頭の中では分かっているつもりなのに
どうしても
どうやっても
考えてしまう。
どうして
こんなめんどくさい五姉妹の三女に生まれたんだろう、と。
第1話 日常から非日常へ
ああ、めんどくさい。
私の一日は、大概この一言で始まる。
「ミナミぃぃぃ!起きろぉぉぉぉぉ!」
「うるさぁぁぁい!」
私はたいていの朝はこの二人がケンカする声で目を覚ます。
毎朝毎朝、ケンカして飽きないのだろうか、あの二人は。
私からしてみれば、二人とも十分うるさかった。
近所から騒音被害として訴えられないのが不思議なぐらいだ。
「ルナも。朝だぞ、起きろ。今日から高校生だろ」
「はいはい」
この人は適当にあしらっておくに限る。
未だにケンカしている二人を置いて、私は素早く着替えを始める。
着替えている途中、ふと本棚に目をやると、本一冊分の空洞がぴったりと並んでいるほんの列の間にできていた。
また、あいつか。
着替えを終えて一階に降りると、下には、いつものように既に朝食の準備が整っていた。
「あら、ルナちゃんおはよう」
「おはよ、サワ姉」
そして、サワ姉と朝のあいさつをかわす。
サワ、通称サワ姉は毎朝の朝食係だ。両親が共働きの私の家にとっては欠かせない存在。母が家に五姉妹だけで置いてける理由もサワ姉がいるという所が大きい。なにより、姉妹たちの中で一番真面目だ。
私はそのまま椅子には座らずに、周りをぐるっと見渡す。
すると、ようやくテーブルの端のほうで小さくなっている四女の姿を見つける。
「ユカ」
話しかけると、ビクッと肩を揺らし、何かを隠しながら頭を上にあげる。
「る、ルナ姉、おはよ。きょ、今日は起きるのはやいね」
と、言いつつも視線が泳いでいる。
「何言ってるのかな?いつも大体この時間だよ。
それより、君が今、手に持っているものは何?」
「別にいいでしょ、ちょっとぐらい」
「何を持ってるのかって聞いてるの」
「・・・・・・・・・・ごめんなさい」
ただならぬ気配を感じとったのか、ユカは無言で本を差し出す。
本には〈社会における対人関係の中の深層心理〉と、書かれている。
「ルナ姉さ、高一なのにどうしてこんな本持ってるの?」
当の本人は、勝手に本を持ち出したことを許されたと勘違いしているらしく、無邪気に質問してくる。
「学校で必要なのよ」
「でもこれってさ、えらい会社の社長とかが読む思いっきり難しいやつでしょ。学校とかで使わないじゃん。私だって理解するのに時間かかったよ」
「・・・あんた達は使わないかもしれないけれど、私はいるの」
私だってって何だ、私だってって。そう突っ込みたい所なのだがこいつは本当に頭がいい。この前ウチの二女リン姉(高二)がさんざん手こずっていた計算問題をあっさり解いてしまったという。ただ単にリン姉の頭が悪いだけなのかもしれないが。
「だぁーかぁーらぁー、いつもこんな早朝に起こさないでって言ってるの!」
「馬鹿か、お前は!逸美沢家の女たるもの五時起きは普通だ!むしろ、まだ遅いぐらいだ!」
「はぁ?逸美沢家の女たるものって何よ!うちは普通の一般家庭なんですけど!」
まだ、ケンカは続いていた。他にやることはないのだろうか。ああ、ないからやっているのか。
「ほらほら。早くご飯食べて支度しちゃいなさい」
「「はーーい」」
サワ姉の鶴の一声で二人はすぐさま椅子に座る。
「それでは
「「「「「いただきます」」」」」
起床してからこのやりとりが毎朝繰り返されるのだった。
in学校にて
「「「いいなぁーー!!」」」
私の周りに集まったまだ名前すら知らないクラスメイトが事前に打ち合わせでもしていたかのように、声を上げる。
新学期、教室に入ってそうそう取り囲まれた私は、いきなり私の姉達の話をして欲しいとせがまれ、今朝の朝食の話をしてみたところ、今の状態になっている。どうやら姉たちが家ではどのように過ごしているかを聞きたいらしい。
はっきり言って、この話のどこがいいのか分からん。それにはじめて会った人にはまず自己紹介だろ。
私がそんなことを思っているとは知らず女子は黄色い声を上げ、男子はこの話の輪に加わりたそうにこちらをチラチラ見ている。
「やっぱり逸美沢さんはいいなぁ、そんなお姉ちゃんがいて!」
「私もサワさんみたいなお姉さんがほしーい」
「えー、私はリンさんがいいなぁ」
はぁ、めんどくさい。何で女子ってこんなにめんどくさいんだろう、って私も女子か。
女子達が姉の話で盛り上がり始めたのでそろりと抜け出そうとしたときだった。
「逸美沢。放課後ちょっといいかな」
後ろから急に声をかけられ、振り向くと少々顔を赤くした男子が立っていた。
「頼む!この手紙を逸美沢の妹さんに渡してくれ!」
ここは学校の裏庭。私がここにこうして呼び出された回数約数十回。十数回ではない、数十回である。大事なことなので二回言いました。
こうやって私に妹や姉達への手紙を渡してくる男子(たまに女子)は大勢いる。私もこういったことは手慣れているのでいつも通りの手順を繰り返す。いつも通りの。
「わかった。で、どっち?」
「えっ?」
「だからどっちの妹に渡すのよ」
「あっ、ミナミちゃんのほうに・・・」
「そう。じゃあそれ貸してくれる?」
「ああ、ありがとうな!」
男子は嬉しそうに去って行った。私はそれを見送った----------------手紙を破りながら。
「・・・・ああ、めんどくさい」
うちは世にも珍しい五人姉妹だ。別に世間一般から見たら五人の兄弟姉妹なんてそれほど珍しくないのかもしれないのかもしれないけれど、五人全員女子だというのは珍しいほうだと思う。特に最近日本は少子化が激しいらしいし。それにうちみたいな姉妹は日本全国どこにもいないと思う。こんなことをいきなり言われてもどんなのだか想像つかねーよ、という方がいらっしゃるかもしれないので一応紹介。
長女・サワ
現在高校三年。礼儀正しく、人当たりもよく、だれでも分け隔てなく接する。しかも成績優秀な生徒会長という肩書がつきだ。このことから学校全体、ひいてはこの地域全体から人気があり信頼がある。男子・女子だけでなく教師などからのからの受けもいい。天然な所もあり、いわゆる癒しキャラである。その天然さのせいで今まで迷惑をこうむったことが何回かある。
次女・リン
現在高校二年。頭がよくない。性格は熱血漢で無駄に正義感が強く、がさつで礼儀正しいとは冗談でも言えない。お前はどこの少年漫画の主人公だと突っ込みたくなるほどではあるが、唯一誇れる点として、彼女は高校生とは思えない運動神経を持っている。その良さは大人顔負けで、高校生の大会出場したものではすべて優勝を修めている。本人にどのスポーツが一番得意かと聞いてみたところ「全部だ!」・・・らしい。主に女子から人気がある。ちなみに、新入生などはよく彼女が男だと大半が勘違いしている。はっきり言って、私が一番めんどくさいと思うタイプのやつである。
四女・ユカ
現在中学三年。頭がいい。めちゃくちゃいい。某名探偵漫画の主人公並みである。冷静な現実主義者で私以外とはほとんど喋らない。私個人の意見としては私とも喋らないでくれたほうがありがたいのだが、本人はなにかと私に話しかけてくる。いつも周りを見下したような発言をするためか敵が多い。ただこんな性格も可愛いと一部の男子に人気がある。私からしてみれば趣味が悪いとしか言いようがないが。
五女・ミナミ
現在中学二年生。美人でスタイルがいい。好奇心旺盛。リン姉と折り合いが悪く、なぜかもてているのに男子に異常なまでの嫌悪感を抱いている。本人曰く、「この世にいるのは女子だけでいい」とのこと。リン姉はよく「そんなことでは社会に出たときに苦労するぞ!」と本人と(押しつけがましく)話し合っている。私はそんなに気にするほどでもないと思う。私と違ってミナミは女子には優しいのだから。
以上の通り、私の家族が普通ではないことが理解できたと思う。私もあまり人のことは言えないが、そこらへんはなんやかんや言っても姉妹であるということだ。だが、今までその“普通ではないこと”のせいで私が多大なる迷惑をこうむってきたことを帳消しにする理由にはならない。
だから私は---------。
「ルナちゃん!ごめんね、待たせて。生徒会の用事で遅くなっちゃったの」
「ううん、別にいい。気にしないで」
うん、全然待ってない。五時半から今まで校門で待っててもう七時だけど全然気にしてないよ。
「まぁ、久しぶりの家族そろっての外食だからな!」
「で!どこ食べに行く?ステーキ?とんかつ?」
「・・・・・あんまり脂っこいものは嫌」
いつもは忙しい両親が珍しく今日は外で食べようと言って姉妹そろって待ち合わせ場所へと歩いている。なんでも私の高校生への進学祝いも兼ねているとか。
べつにエレベーター方式で中等部から高等部へ上がるだけなのに。ああ、めんどくさい。
いつもどうりの日常。
その日常にちょっとめんどくさい出来事。
でも、そんなことがあってもそれは日常の出来事に過ぎず。
これからもその日常を歩んでいく。
例外などなく、だれだって。
そして私も。
----------------今の今までそう思っていた。
「ユカ!」
リン姉の緊迫した声を聴き、私は伏せていた顔を上げる。
ユカは底が見えない暗い穴に吸い込まれかけているところだった。
「ミナミもルナも!ユカを引き上げるの手伝ってくれ!!」
「ユカちゃん!頑張って!」
というサワ姉もリン姉も穴にほとんど吸い込まれている。
「リン!サワ!ユカ!」
ミナミは穴に向かって走り、三人に向かって手を伸ばす。
その手が空しく空を切る。
三人は穴に吸い込まれ、ミナミは前に倒れた。
----------否、倒れようとした。
穴は迎え入れるようにミナミが顔を地面につける前に、ミナミの体の下の地面にまで広がった。
そのまま音もなくミナミは穴へと落ちて行った。
私は立っていた。
四人が吸い込まれるのをただ単に突っ立って見ていた。
驚きはあった。
いきなりこんなことが起こって戸惑いもした。
自分が吸い込まれるかもしれないという恐怖のあった。
そして、
------------どこか、安心感もあった。
次第に、私は穴の様子がおかしいことに気が付いた。
止まっていたのだ。
消滅するわけでもなく。
襲い掛かってくるわけでもなく。
止まっていた。
まるで、その様子は従順な犬が飼い主に従っているようだった。
-------少なくとも、私にはそう見えた。
穴はゆっくり動きだし、私の前で再び止まった。
「私も行かなければならない?」
聞いてみた。
何故、穴が返事をするなどと思ったのだろう。普通では穴という地面に縛り付けられているものが動くことすらありえないのに。
穴は、当然だが返事をしなかった。
ただ、一瞬形が歪んだ。
「・・・そう」
私は踏み出した。
穴は私を迎え入れるように大きく広がる。
ゆんわりとした風が落ちていく私を包んだ。
日常という名の平和から非日常という混乱へ落ちていく中、私は思った。
ああ、めんどくさいな。と。
めっちゃ読みにくい・・・。なるべく精進します。