図書室の午後、暴れる魔王さまと勉強する少女
前回の過去編が読み返したら、だいぶひどいことになっていたので。
今回はできるだけ丁寧に書きました。
最後まで読んでいただけたら幸いです。
時刻は夜、月の光と闇が支配する時間、俺は神殿の中を気配を消して歩いていた。
実際のところ、魔王である俺にとって闇は自分の眷属のようなものなので、夜になれば意識しなくても簡単に気配を消せるのだが。
目指すは、神殿の地下にあるという噂の、宝物庫だった。ひとつ言っておく、神殿の宝を根こそぎ奪うつもりは無い、珍しいものがあれば考えなくも無いが、金銀宝石などの宝にあまり興味は無い。
探しているのは、俺が封印されたとき、アウラが各国に与え封印させた俺の宝具のひとつ「薄蓮」、俺の愛刀である。
「薄蓮」がここにあるはずだと、昼間酔っ払って語ってくれた、アインハルトが言っていたのだ。
たどり着いたのは、神殿に内蔵されている図書館である。
中に入ると古書独特の紙のにおいと、静謐とも言っていい重厚な空間が待っていた。
整然と棚に並ぶ本と、見上げるような高さの棚、その奥、意識して探ると、わずかに風が流れ込んでいくようなそんな空気の動きがあった。
普段使われることの無い、忘れ去られた場所に向かって歩いていく、たどり着いたのはずいぶん、雑多なラベルの棚だった。
ただひとつだけ共通しているのは、その棚の本には、すべて本能的に人が忌避する呪いがかかっていることだろう。
棚の本を眺め回して、一冊引き抜く、なぜその本を抜いたのか、単純な理由だただ背表紙に「扉」と書かれていたから、ゆっくりとその姿を消していく本棚、その下には魔方陣が書かれている、読まなくても大体理解できているが、多分その魔方陣が、この世界に呪いの棚を召還していたのだろう。
誰も、この先の部屋に入り込むことが無いように。
棚があった後ろの空間、地下に伸びていく階段を、一段づつゆっくり降りていく。
下から流れてくる、威圧感、常人なら浴びただけで卒倒しそうなほどの殺気、我が愛刀が放っているだろうその気が懐かしく心地よかった。
愛しい人に会いに行く心持的にはそんな感じだろうか。
階段を焦らすようにゆっくりと歩ききり、封印の間に出る。
広間の中央には、縛鎖が何重にも絡みついた、「薄蓮」が突き刺さっていた。
何千年経とうと、欠けることなく錆ひとつ無く、威風堂々とそこに立っていた。
「薄蓮、遅くなったな、迎えに来た」
俺の声に反応するように縛鎖が、カタカタとゆれる、「薄蓮」が振動しているような、そんな錯覚ともつかない間のあと。
縛鎖が、その刻まれた封印呪ごと砕け散った。
まるで全身で喜びを表す子供のように、「薄蓮」から強烈な、先ほどよりも数倍密度の高い殺気が迸る。
「嬉しいか相棒、長かった雌伏のときを越えて、もう一度俺のわがままに付き合ってもらうぞ」
そして、俺は優しく包み込むように「薄蓮」の柄を握りこむと、一気に引き抜いた。
「「「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ」」」
俺は「薄蓮」の歓喜の声を聞いた。
そして、そのまま「薄蓮」を真横に振り抜く、俺がこの部屋に入ったときからずっと攻撃する隙をうかがっていただろう守護者の天使兵、天界に属する戦闘人形、の頭部を吹き飛ばす。
続いて、眼前に転移してきた二体、一体は魔法詠唱型なのを確認すると共に、詠唱する間の無く頭頂から真っ二つに切り捨て、二体目の突き出してきた槍形の宝具を受け流しながらその胴をなぎ払う。
続いて、三体転移してきたのを見計らうと、「薄蓮」刀身に魔量を流しその真価遺憾なく発揮させた。
-【断章魔法】<フラグメント>【血華兵装】<ブラドウェポン>
通常の刀に、断章魔法を付加させれば、間違いなくその刀は木っ端微塵になるだろう。
しかし「薄蓮」はそうなりはしない、その刀身に鮮血の色を灯し、脈動する、強く速く全身に血を送り込むように。
「薄蓮」が咲いた。
-「血刀華」
「薄蓮」から舞い上がった花びら、その斬痕によってすべての天使兵が血溜りの中に倒れ付した。
俺は口元に笑みを貼り付けると、やさしく「薄蓮」をその懐に作り出した亜空間にしまいこんだ。
-【断章魔法】<フラグメント>【空間創造】<エリアクリエイト>
そして、二度と振り返ることなく歩き出す。
その後ろには、あったはずの血溜りはなく、砕け散った縛鎖だけがそこに落ちていた。
どもども、お人変わって、シズネです。
今日はお昼から、図書館でお勉強をしています。
何の勉強かって?
魔法に、この世界の歴史、生態系などなど、私にはまだまだ知ることがたくさんあるのですよ。
何々?英雄たちを召還したときあんなに説明キャラをこなしていただろって。
知りませんね、気のせいですよ。
もしくはあれはカンペです、それともきっと私の後ろで腹話術をしている人がいたのですよ。
まずは、そうですねクロノ様と旅に出るにあたって、この大地の地図でもみて起きましょうか。
この大地アクアポリスは簡単に言えば表裏一体二重構造型の空間といったところらしいです。意味がわからない?ええ、私もです。
この本、「アクアポリス大地の創造について」には、簡単に言えばコインのようなものだと書かれていますね。
何でも、コインが二枚あって、一枚目の表が私たちが生きるアクアポリス、多種多様の生態系を持つ生物界であり、その裏の面が魔界である、となっています。
そしてもう一枚は、表面が神々の世界、天界であり、その裏面には神獣などが生きる世界アインハルト様の生まれた世界でもある仙界があるそうです。
その二枚のコインはそれぞれ球形の大気を纏っておりそれぞれが合い方星なって、この宇宙を巡っている。とのことです。
いまいちわかりませんが、次にいきましょうか。
魔物はもちろん魔界の生物なので、どうやって生物界に出てくるかについて書いてあるみたいですね。
なになに、
生物界には東、南、西にそれぞれ魔界と生物界をつなぐ門、<ヘルズゲート>がありその周囲は、非干渉地帯「凪の境界」と呼ばれている。
ちなみに、南の門がもっとも魔物の行き来が多く、その「凪の境界」を囲うように広大な不毛地帯「古戦場」地帯が広がっている。
「古戦場」地帯とは、魔物の大侵攻が何度も確認された地帯でもあり。魔物の血の呪いや何度も行使された広域殲滅魔法で、二度と生態系が戻ることが無いだろう地帯をさす。
と、なるほどなるほど。
俗に、クロノ様達が長年魔物を戦い続けた場所を指すようですね。
ちなみに、北には<ヘルズゲート>なぜないのか。そういえば、さっきの所には書かれていませんでしたね。四方にあるならそう書けばいい話ですし。
なになに、
北には、一枚目のコインである【下層世界】と二枚目のコイン【上層世界】をつなぐ門<エンゲージリンク>があると。
なるほどこっから【上層世界】にいけるというわけですね。
もちろんのこと、つないでもたどりつくのは仙界らしいですね。
ちなみに、【上層世界】にもこちらと同じように仙界と天界をつなぐ門があり、それぞれ<ヘブンズゲート>と呼ばれているらしいですね。
なるほど、勉強になりました。
お次はこれですね、「竜の生態系 魔界と仙界の違い」だそうです。
ずいぶんピンポイントな気もしますが、ご都合主義なのでまーいいかなとおもいます。
えーと、なになに仙界に生まれた竜と、魔界に生まれた竜の違いについて、簡単に言えば理性的に生きているか本能のままに生きているかだそうです。
例をあげれば、仙界出身のアインハルト様が仙界代表、昔の魔物大侵攻にいたといわれている金竜<ガウスドラゴン>が典型的な魔界代表といったところだそうです。
強力なブレスと共に仙界竜は【古代魔法】<エンシェントスペル>を操り、人語を理解し時として数千年生きるものもいるとされている。ふむふむ。
本能のままに殺戮を好む魔界竜は【古代魔法】<エンシェントスペル>を使えない代わりにいくつかの固有パターンを持つ【干渉魔法】、たとえば自分の属性の棘を大地に生やしたりできる、を持っているそうですね。
実際、過去の大侵攻で現れた金竜<ガウスドラゴン>がそれらしきものを使っていたとの報告もあるそうです。
ちなみに、魔界竜人語などが理解できないのかというとそういうわけでもなく、理性よりも本能ままに生きている頭のよい生物といえるため、戦うとするなら交渉といったてを打てる仙界竜よりも厄介な存在であるといえる。
と、なるほど、本能のままに生きているだけで決して頭が悪いわけではないということですね。
さてさて、今日のお勉強はこんなところにしておきますか。
いつも図書室に入るととっても危ない気配を放っている戸棚を華麗にスルーして本を片付けて裏庭にでも行って見ましょうか。
るんるん、とことこ。
あらー、クロノ様と親しそうに話しているあの女狐は誰でしょうか。なになに
「ちなみに、クロノ殿、私は戦場で生まれ戦場で生き戦場で死んだため、恋というものを知らないのですが、長い年月生きているあなたから私にご教授願えませんか」
へー、何でしょうこの言葉に感じる、このどす黒い感情は。
重たいですね。
黒いなら、ひかりを当ててあげればいいですかね。
-「光よ」<ライト>
あら、クロノ様なぜそんな絶望的な目をなさっているのですか。
私が、一生懸命勉強しているときにそんな女狐なんかといちゃついていた。
「咲け...我が憤怒のままに...黒き絶望の華よ」<アビスシュラウド>
世界が闇に染まる侵食魔法の中、私の口元が月の様に見えたそうな。
絶望的な美しき三日月に。
最近シズネが一番チートになり始めてるなー、と思う今日この頃です。
シズネさん絶好調ですね。
封印宝具もこれから旅に出たあとぼちぼち出していくつもりです。どうしても書きたい宝具もあるのでがんばります。まあ、出てくるのは中盤くらいになるでしょうからがんばらないと。
というわけで
誤字脱字感想魔法英雄そのほかありましたら書き込みしていただけるとありがたいです。
それでは今回も作者の脳内垂れ流し駄文にお付き合いいただきありがとう御座いました。
最後まで作者のわがままにお付き合いくだされば、幸いです。