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聖典少女は竜と踊る

予告どおり今回はラミアの過去編です

過去編になると若干鬱要素が高くなりますが

最後まで読んでいただけたら幸いです。

それは血塗られた記憶、生まれたときから戦場にいた私の記憶、私の記憶に鮮烈に残っているのは生首が宙を飛ぶ姿だった、顔の無い首、そのから飛び出す鮮血、たとえソレが私を生んだ物の血であったとしてもだ、私はその光景に抱いた感想は、きれい、だった。

私は生まれたときから戦場という揺りカゴで育ち、友はこの身を守る剣のみ。

来る日も来る日も、私は自分を育てた揺りカゴに敵の血を、魔物の血をささげ続けた。

十歳の時に聖典騎士団に拾われたあとも、私の生き方は変わることは無かった、ただその鮮血をささげる相手が、戦場ではなくラウラ様に変わっただけの話だった。


どうすれば効率的に血を捧げられるか、それのみを考え追求し探求し、たどり着いたとき。私の手には友であった剣すらなかった。


信じれるのは己の拳のみ。


そして、私は十七になっていた。

若干十七でありながら、強さという面では聖典騎士団筆頭、また「ラウラの白き剣」という異名すら持っていた。


その反面、人間性というものをかなぐり捨ててきた私に近づくものは、数少なくなっていた。

聖女、英雄と呼ばれながらも、その実態は狂戦士、ただ戦場に血を振りまくだけに生きている物。

血を求めて戦場をさ迷い歩く獣。






「ラミア、起きろ、敵さんのお出ましだぞ」


飛んでいた意識を呼び起こしたのはウスイ隊長の声だった、この曲者ばかりの聖典騎士団を纏め上げている唯一の良心であり、彼は「知覚者」、【ドリアドネの書】の表層部分のみだが例外なく読み取ることができる、の断章を持っているため、敵のレベルなどを事前に把握できるので隊長となったといえなくも無い、まあ、基本戦闘狂ばかりなため、隊長なんてめんどくさい仕事をやろうと思うやつがほとんどいなかったのもあるのだが。


「わかりました、それでウスイ隊長、状況はどうなのですか」


私の質問に、ウスイ隊長は表情を曇らせる、当たり前の話だった。今回の第三次魔物大侵攻その数は、いまや伝説となっている第一次と第二次よりもはるかに大規模なのでは、といわれているくらいなのだから。

実際、このアクアポリスの四分の一を占める古戦場地帯、はるか昔魔王と英雄王によって滅ぼされた第一次魔物大侵攻その際にこの地はおびただしい魔物の血と強すぎる広域殲滅魔法によって二度と草木の芽生えぬ不毛地帯になってしまったといわれている、をほぼすべてを黒い魔物たちが埋め尽くしている。


「境界国の動きはどうなのですか」


「古戦場地帯に接する国々は、境界線上に防衛線を引いている、それは魔物を寄せ付けない壁であり、そしてわれわれにとっても逃げ道をふさぐ壁になっているがな」


彼の、皮肉を込めた言葉に今度は私が表情を曇らせる。まあ、どの国も国境を持たずに戦い続ける我々聖典騎士団を積極的とは言わずとも助けてくれるという期待はあったのだが、今回は私たちは切り捨てられたようだ。

もう、彼らは、我々のことを捨石ぐらいにしか考えていないだろう。


「前は魔物の軍勢、後ろは各国の防壁、逃げようと思えば後ろから刺されそうな状態ですね」


「ああ、間違いなくな」


そう、と呟いてから、この戦場からどうすれば生き残れるか考えをめぐらしていく。


「とりあえず、敵陣に突っ込んで、広域殲滅魔法で吹き飛ばしますか」


よし、考えがまとまったとばかりに腕をぐるぐる回し始めた私のうしろで、ウスイ隊長さんはため息をついていましたとさ。


「まあ、どっちにしろ突撃しか脳がないんだがな、この騎士団は」


「後方支援、索敵、各国との交渉は隊長殿が行ってくれますからね」


感謝してるぜー、ありがとなー、など私の言葉に続いて、いつの間にか回りに集まってきた聖典騎士団の面々がウスイ隊長に声をかけていく。


「それでは隊長殿、突撃に当たり、注意する点はありますか」


騎士団の面々が顔をあわせたのを確認して、私はそう切り出した。


「はっきり言って、数が多い、多分俺たちは全滅するだろう、だから先に言っておく、生き残りたいやつは敵中央にいる飛竜種には近づくな、たぶん群れのボスだ、レベルは300、系統は「金」<ガウス>、厄介だ

ほかにも、それぞれ200クラスの火竜が三頭いる、だからお前ら絶対に近づくなよ」


「「「ああ、無理だ(やだ)!!!」」」


全員口をそれえてその言葉をつむぐ、なぜかって私たちは皆死にたがりのバトルジャンキーだからさ、戦場でならどこで死のうと後悔しない、それがウスイ隊長を除いた団員たちの偽らざる本音だ。


「さて皆、いこうか」


固まっている隊長の変わりに、筆頭である私が皆に声をかける。


「ラウラ様に栄光を、そして我らに一時でも速く安らかな死が与えられんことを」


「「「おおーーーー!!!」」」


駆け出していく戦闘狂ども、その心にある思いはひとつ、もっと強いやつと戦いたい、ただそれだけ。






邪魔くさい雑魚どもを、トリップしてるトリガーハッピーな魔法使いさんと、広域殲滅魔法しか打てない欠陥魔法使いに任せて、進路上の邪魔なやつだけ倒しながら最短距離で目的地を目指す、残った団員たちも進路上で予想外の強敵に出会い狂喜して戦い始めたやつ以外は、ほとんど同じような行動をしている、目指すは金竜<ガウスドラゴン>のみ。


そしてそこに立ったとき、私の周りには、安らかな死を得た者たちが続出していた。

私より先に金竜<ガウスドラゴン>たどり着き挑み、大地から打ち出された「金の棘蔓」<クイーンズウイップ>に引き裂かれたもの、火竜に挑み、その首をはねる代償に、振りぬいた大剣ごと他の火竜のブレスに焼き殺されたもの、ただ、ひとつ例外なく、彼らは死んでいく、ウスイ隊長の言どうりに、それでも彼らの中には一人も隊長の言葉を聞けばよかったと思うものはいないのだろう、私たちは戦闘狂、戦場を徘徊する血に飢えた獣なのだから。


「さて、私たちも始めようか、血に飢えたもの同士」


「ガぁーーーーーーーーー!!!」


とてもじゃないが、知性のかけらを少しも感じることのできない咆哮と共に、金竜のブレスが私に向けて放たれた。

それはとても吐息などといった生易しいものでなく、純金で出来た三角錐の突針が雨のように大量に振ってくる、そんな光景だった。


-【断章魔法】<フラグメント>【極光兵装】<ラグノウェポン>


私も出し惜しみはしない、その性能で言えば最強と歌われた魔王とですら互角にやりあうことも可能だろう、その兵装を身に纏う、ただし弱点といえば人並みはずれた魔力保有量の私でも全力で使えば、十分持たないところだろうか。

まあ、今はそんなことどうでもよい、ただ目の前の強敵との戦闘を、全力で全開で戦いたいという欲求に身を任せるのみ。


金竜のブレスが迫る中、【極光兵装】<ラグノウェポン>を発動させると無造作に手のひらをブレスに向けて極光を打ち出した、広範囲に拡散した金竜のブレスに一点に集中した中級魔法「極光剣」<フラッシュキャリバー>をぶつけることによって人一人分、私が通れるくらいの道を開くと、その空白地帯を金竜<ガウスドラゴン>に向けて跳躍した。

狙うのは、竜種最強の硬度を誇るといわれる金竜の額、額だけは唯一金でなく魔水晶の角がある、を狙って飛び上がった勢いのまま右手に込めた「極光」の力を拳に乗せて打ち出す、そうとして、私の身体は動きを止めた、私の身体を縛るのは「金の棘蔓」<クイーンズウイップ>、そして眼下には、「金棘山」<ガウスニードル>大地に切り立つ金の棘の剣山、縛られたまま叩きつけられれば、軽く【極光兵装】<ラグノウェポン>の許容防御ダメージを超える、待っているのは確実に死だ。


-「極光剣」<フラッシュキャリバー>


まあ、まっていればだが、両手から「極光剣」<フラッシュキャリバー>を打ち出すと、そのまま「金の棘蔓」<クイーンズウイップ>をなぎ払う、ちなみに【極光兵装】<ラグノウェポン>の特殊能力<パッシングスキル>のひとつに光属性中級魔法の無詠唱使用があるので「極光剣」<フラッシュキャリバー>はかなり使い勝手がよい。

「極光剣」<フラッシュキャリバー>で「金棘山」<ガウスニードル>も破壊すると、とりあえず着地、そしてそのまま、全力で真横に跳んだ、それを待っていたかのように、さっきまで私がいた地点に金竜のブレスが突き刺さる、今のは危なかった。

いや、まずッた、飛んだ方がまずかった、私の着地した地点そこにはすでに「金の棘蔓」<クイーンズウイップ>が放たれていた、そして、私を縛りあげる「金の棘蔓」<クイーンズウイップ>と平行して、「金棘山」<ガウスニードル>も私の逃げ場を減らしていく、「極光剣」<フラッシュキャリバー>を出そうとする意識よりも速く、私の両腕を縛り上げた「金の棘蔓」<クイーンズウイップ>が私の集中力をそぎ落とす、そして何とか右腕の「金の棘蔓」<クイーンズウイップ>を振り払う間に最後の絶望が迫ってきた、左腕に「金の棘蔓」<クイーンズウイップ>周りを囲む「金棘山」<ガウスニードル>そして頭上からは金竜のブレス即死の三コンボが私を捉えた。


金竜としては、ひ弱な人間を一人踏み潰したような、そんな気分だったろう、眼前に左腕を失った私の姿を見るまでは、金竜のブレスが迫る中私は自分の左腕を「極光剣」<フラッシュキャリバー>で切り捨てた、あとはただ【極光兵装】<ラグノウェポン>の許容防御ダメージを超えないことを祈る無防備な跳躍のみ、結果、私は、満身創痍だった左腕を失い法衣も破れ血が吹き出ている。

残された戦闘方法は【極光兵装】<ラグノウェポン>の特殊能力<パッシングスキル>のもうひとつ、


-極光の【断章魔法】<フラグメント>限定使用


   光属性広域殲滅術式「破壊と創生の光明」<ビックバン>


その光は、金竜の半径1キロメートルをこの世から消滅させた、その力を使ったわたしごと...。






いま、思い出しても私は後悔していないようだ、そこで私が死に今ここで、過去の話としてそれを聞いたとしても。

聖典騎士団が、あの戦争から記録として抹消されていたとしても。


わかってはいるのだ、私たちは所詮ただの戦闘狂決して英雄にはなれないのだと。

あの戦争で漁夫の利をさらって言ったという国々も、今はもう滅んでいるときかされれば溜飲も下がるものだ。


そうな思考を振り払うように、私は歩き出す、目指すは中庭、自分がずっとあこがれ続けた魔王様に会いに行こう、自分が決してなれないだろう英雄と呼ばれる存在に。


そこに何が待っているか私は知らない、だか後悔はしないだろう。


だって、今私は生まれて初めて戦闘以外でワクワクしているのだから。












死亡者二人目です。

しかも二人ともヒロイン?

そんな鬱小説にもめげず最後まで読んでくれた方々、ありがとう御座います。

PVとユニークが徐々に増えていくのを眺めるのが最近の楽しみですので、

最後までお付き合いいただければ幸いです。

誤字脱字感想魔法英雄などそれ以外でもOKですので何かありましたら書き込んでいただけると嬉しいです。

それでは、作者の脳内垂れ流し駄文込みの鬱小説に最後まで付き合っていただいた方に感謝を、次話でまたお会いしましょう。

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