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不思議を少しだけ。

およげ!たいやきくんにおける魂の所在についての考察

作者: 猶崎 迅
掲載日:2026/04/04

「およげ!たいやきくん」という曲をご存知だろうか。

1975年にリリースされ、空前のヒットを叩き出したシングル曲である。

その謎多き歌詞について、全てを事実として受け止めた上で、ここに考察を加えて行く。


まず問題となるのは、たいやきくんの主体である。彼 (1人称が「僕」なので、この文書では「彼」とする。僕っ娘である可能性もないではないが、この文書における論点ではない。彼(仮)とでも思ってくれれば良い)の言うには、


「毎日 毎日 ぼくらは鉄板の 上で焼かれ」


ているのである。これには2つのケースが考えられる。1つは彼は集合的意識を持ったたい焼きの生地である可能性である。この場合、彼が毎日焼かれることは必然であり、疑問を生じる余地はない。しかしこの後に出てくる


「お腹のあんこが重い」


と言う証言とは、決定的に矛盾してしまう。お腹と呼べそうな場所があるのも、あんこが詰まっているのも、たい焼きであって生地ではないからである。そうなると彼は、2つ目のケースである意識を持ったたい焼きである。と言う結論が導き出される。 しかし、通常たい焼きが焼かれるのは1度きりであり、毎日焼かれることはない。これが2番目の問題点である。


この矛盾を説明するには、逆にたい焼きが毎日焼かれるシチュエーションとはどんなものかを考えねばならない。たい焼き屋の店先を思い出して欲しい。まだ売れておらず、パック詰もされていないたい焼きが、鉄板の隅の方に置かれているのを見たことがないだろうか。その目的は保温、もしくは()()()()である。

そう、前日売れ残った彼は、鉄板の端でまた焼かれていたのだ。しかも毎日毎日と繰り返す以上、少なくとも数日にわたって売れ残っていたと推察される。店じまいと共に冷たい冷蔵庫に仕舞われ、開店前には鉄板で炙られる。そんな拷問のような日々を毎日過ごしていては、彼が厭になってしまうのも無理はない。そしてこの数日に渡る売れ残りという異常事態が、なぜ彼に意識が宿ったのかと言う疑問の答えとなるのではないだろうか。


通常、たい焼きの賞味期限は当日中、冷蔵庫に入れても2-3日とされている。彼はとっくの昔に寿命を迎えたはずのたい焼きなのだ。本邦には長い歳月を経た器物には魂が宿ると言う「付喪神」と言う概念がある。これが器物より遥かに寿命の短い食品であれば ーーほんの数日で魂が宿ると言うことすら考えられるのではないか。例えば99年ではなく、99時間、日付にして4日余りでも。

付喪神としての神格もしくは霊格は、海の水から彼を守り、海の中からエビに飛びついて来た得体の知れない存在を思わず食べてしまうほどの魅力を与えていたのではないだろうか。


そして最後に最大の疑問が残った。それは()()()()()()()()()()と言う問題だ。何せ当事者である彼は、釣り人のおじさんにたべられてしまっている。「そのオチだと、今まで語っていた臨場感溢れる恐怖体験は誰から聞いたのI川さん!怖いな〜、怖いな〜」と感じるのと同じように、彼から話を聞くことはできないはずなのだ。通常では。なんとも恐ろしい話ではないか。


なお、この文章は、たい焼きには通常魂は宿らないと言う前提で書かれている。筆者は寡聞にして魂の宿ったたい焼きに出会ったことはないが、もし日を経たたい焼きに魂が宿るのが通常であると言うのなら、ーー今後は目の前で焼き上げられたたい焼き以外は食べないことをここに記しておく。


結論として、食品の賞味期限は守った方が安全である。


猶崎迅 記す。痛む腹を抱えながら。(了)

付喪神は人に悪事をなすのですよ。外から悪事をなす器物より、内から悪事をなす食品の方が怖いな〜。いやだな〜。

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