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ねこが世界一周したよ

作者: ヒロモト
掲載日:2025/09/18

季節は冬だったが俺の心は熱く燃えていた。


「俺は世界一周するぜ!親父ぃぃ!」


「ばかたれぃ!」


親父の肉球ビンタは痛くなかった。


「何度でも言うぜ!俺は世界一周するんだ!」


「このぉ!」


何度殴られても肉球なので痛くない。


「俺は親父のように狭い世界で満足したくない!」


「衣食住の揃った家猫がどれだけ幸せかなぜわからんのだ……」


「恵まれてるから幸せとは限らない」


「……勘当だ。お前とは親子の縁を切る。二度と顔を見せるな」


「……お世話になりました」


こうして俺は世界一周の旅に出た。


らしい。


これはフィクションだから過去を振り返ることが出来るが、君たちに忘れて欲しくないのは俺たちが猫って事。

猫の記憶力なんて大したもんじゃあない。

大体1週間で親父の顔がぼんやりとしか思い出せなくなって、1ヶ月後にはすっかり忘れた。

俺は野良猫になったのだ。

その日生きることを考えるだけの毎日。 

孤独な旅猫。


十年経って俺は世界一周を達成した。


らしい。


フィクションは実に都合が良い。

世界をグルっと周って戻って来る長い長い旅が終わった。

まぁ俺はその事に気がついていないので立ち止まる気は無かった。

身体はドロドロ。お腹はペコペコ。控えめに言ってヘトヘトだが止まらない。


「そこの旅のお方」


「ん?」


結構いい家の窓越しに、年老いたノルウェージャンフォレストキャットのオスが声をかけてきた。


「なんだい?」


「ワシには息子がいた気がするんだ。あんたのようなね」


「俺はサンタの親父は知らないね」


オスはサンタ服を着ていた。

帽子まで被ってる。

親父の事は覚えていないが、サンタでは無かったと思う。

サンタのオスは話してみると結構面白いやつで、話し込んでいたら雪が降ってきた。


「この家には衣食住すべてがあるよ。今日は泊まって行きなさい」


「たまにゃあいいかもね」


長い事野良猫やってると衣食住の有り難さが身に沁みている。

衣食住。猫生これ以外はおまけだよ。

はー。ありがたい。今日は寝ているだけで飯が食えるのか。


「えっ!!?」


家主の人間は俺を見てやたら驚いていた。

世話になりますよっと。


「……クリスマスの奇跡?」

……


一晩だけのつもりだったが、いつの間にか俺は1週間も泊まっていた。

雨にも濡れない飯は自動で出てくるしトイレは綺麗。

ここは魅力的過ぎる。


「なぁ。あんた。もうここの猫にならないか?」


サンタ服から着物になったオスが言った。


「いいね」


「同じノルウェージャンフォレストキャットだ。親子盃といこう」


人間に長旅の汚れを落としてもらい鏡を見て俺は驚いた。

俺は結構毛並みが良かった。

俺はオスと同じノルウェージャンフォレストキャットだったのだ。


「じゃあこれからは親父と呼ばせてもらおうかな。どうした!?」


オスはシトシトと泣いていた。


「なにか悲しいのか?」


「うぅん。歳のせいじゃろ。困ったな。目ヤニが溜まるなぁ」


困ったもんだ。だがなぜか憎めない。

まるで覚えていないが俺の親父もこんな猫だったのかなぁ。


この家に来てからよく昔の事を思い出すようになった。

エヒメ、カガワ、トクシマ、コウチ。

誇らしい『世界一周』の思い出……。

この調子ならいつか旅立ちの日の事も思い出すかも知れないな。










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イイハナシダニャー  ( ;∀;)
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