第2話 クソッタレ
勝てる訳ねぇだろ!
俺は勇者様だぜ
手足を引き裂いて、腑抉り出してやろうか
右腕と左脚を切断されたプスクが森の中で血を流しながら苦悶の表情を浮かべていた。
「はぁはぁ……クソッタレが」
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第2話 クソッタレ
プスクが封印から解放された事は1人のメイドの口から広まり、騎士団が確認した所……割れたクリスタルのような結晶破片と空っぽの空間だった。
「プ、プスク様が復活された。すぐに帝王様に!!」
「もうすでに伝えてあります!伝説のあのお方が」
「騎士団の誓いを覚えているか?」
「はい!プスク様の前で忠誠を誓う事ですね」
プスク様
あなたのおかげで我々は助かりましたよ
どこに行ったのですか?
皇子よ
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プスクは勇者の力で夕方のクロスナッツ帝国の城下町を移動していた。
「綺麗だなー」
血みどろの世界しか知らなかったプスクには理路整然と並んだ民家と笑い声が絶えない街並みや人々をゆっくり眺めていた。
「戦争はどうなった?やはり負けたのか……」
悔しさに顔を歪ませると祈りのポーズをした、すると半球上の聖なる誰にも見えない光が広がり出した。
「あそこまで追い詰めたのに」
黒いローブを着た男との戦い、最後は記憶が曖昧だった。
次の瞬間
プスクの聖なる光が闇の気配を捉えた。
まだ奴はいる……今度こそ
プスクは口を噛み締めるように閉じると闇の気配のした路地裏に飛び降りて行った。夕方の陽光が遮られて暗い。
プスクはゆっくりと歩くと階段を降りていくと路地裏の家と家の間にクズ木を張り合わせたような屋根が見えてきた。
「おい!?大丈夫か」
「ぐあああー!熱い」
「!!?」
プスクはテントのように垂れ下がった布を持ち上げて中に入ると4人の子どもが1人苦しんでいる少女に心配そうに駆け寄っていた。
「大丈夫!?」
「しっかりして」
「また発作が」
少女の身体は蒼い炎で燃えていた。燃えた身体の所から黒い骨が露出していた。
プスクはゆっくりと中に入る。子ども達が気付いて警戒するがプスクは蒼い炎に怯む事なく少女の腕を掴むと服をめくり、背中に大きな鬼の紋様が掘られている事を見つけた。
「ぐ、ぐあああー」
「だ、誰だよ」
「お姉ちゃんから手を離してよ」
「骨隷呪だ。さては貴族にやられたか」
プスクは同じように蒼い炎を出すと焦げた所を覆うようにゆっくりと気を流し込んだ。
「ぐああ……はぁはぁ」
「楽になったか同じ呪いを持つ者同士なら痛みが和らぐ」
プスクはゆっくり作業着の服を捲ると鬼のような紋様が背中に彫られているのを見せつけた。
「オレも骨隷呪を持っているからな」