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第十九話 英雄パーティとの別れ

大山脈のふもとのダンジョンに来た道を逆にたどり、クリスタルピークの街に戻った俺たちは、真っ先に冒険者ギルドへ向かった。アークたちはダンジョン攻略のクエストの、俺は『月光の魔石』の探索クエストの報告を行った。


ダンジョンが崩壊したという報告は一瞬ギルドを大騒ぎにしたが、 アークがヴァンパイアロードを倒したこと、隠し部屋にあった”月光の魔石”がダンジョンボスの存在に関与していたであろうことをギルドに説明してくれたおかげで、それ以上の大きな混乱にはならなかった。


そして、”月光の魔石”はその存在が明らかになったとともに、隠し部屋を発見した俺のものに正式になった。やったぜ!


自爆営業ではない、クエスト報酬の金貨が入った重い袋と、懐にしまった魔宝石の確かな感触。俺は生まれて初めてとも言える飛び上がりそうな全身の達成感に包まれながら、冒険者ギルドから宿に向かっていた。


「まったく、アンタって人は……死ぬかと思ったわよ」


「わ、悪かったって。でも、結果オーライだろ?」


「そういう問題じゃないのよ!」


フレアがぷりぷりと怒っている。その時、アークが横からおずおずとフレアに話しかけた


「フレアさん 祝勝会をやりませんか?」


「えー! やったぁぁぁ! もちろんやるー! インテンスも参加ね!」


「うっ、か、勝手に決めるなよ。」


「……参加しろ」


「は、はい」

珍しく無口筋肉が俺も参加しろと言ってくる。まぁ、アークたちパーティにはお世話になったし、これくらいはいいか。横ではリリアも嬉しそうにしてくれているし。


☆☆☆


翌日の夜、俺たちはクリスタルピークの宿屋の一室で、ささやかな祝勝会を催していた。


「皆さん、本当にお疲れさまでした! 乾杯!」


アークが木製のジョッキを高々と掲げる。その爽やかな笑顔は、昨日死闘を繰り広げたとは思えないほど輝いていた。

「は、はい! か、乾杯!」

俺も慌ててジョッキを掲げる。中身は子供用の果実水だが、気分は最高だ。なんたって、英雄パーティからお礼を言われているのだ!


「まさか、あのヴァンパイアロードを、あのような形で弱らせるとは……あなたのあの鎧と棒、一体何なんですの?」


セレナが、まだ少し信じられないといった様子で俺に問いかける。彼女の視線は、俺がテーブルの隅に大切に置いている『ルナちゃんマジ天使! 魔力増し増しキンブレ』に注がれていた。


「え、ええと、これはですね……推しへの愛を形にした、いわば聖なる棒でして……」


「はぁ。あなた、そういうわからないことをよく平気で言えるわね。ま、結局よくわからないってことね。」


セレナの突っ込みも容赦ない件。


「……よく分からんが、お前の魔力と共鳴していたのは確かだ」


無口筋肉のガイアが、肉の塊にかじりつきながらボソリと呟く。それにしてもガイア、あんたそれ酒じゃなくて果実水だな!? 見た目と違って、飲めなかったんだな。見掛け倒しめ……


「インテンスさん、すごかったです! あの光、とっても綺麗でした!」


天使のようなリリアがキラキラした瞳で俺を見つめてくれる。ああ、癒される……。ほんとお嫁さんにほしい……いや、俺にはルナちゃんが……


「まあ、結果的に助かったからいいけど、次はないと思いなさい!」


フィリアは腕を組み、フンとそっぽを向いている。だが、その口元が少し緩んでいるのを俺は見逃さない。なんだかんだ、実はツンデレか! エルフのツンデレ需要はありそうだ……


和やかな雰囲気の中、アークが俺に今後の予定を尋ねてきた。 「それで、インテンスさんたちはこれからどうするのですか?」


俺は胸を張って答えた。いや、正確には、果実水を飲んでむせながら答えた。


「げほっ、ごほ……お、俺は、いったんひかりケ丘村に戻った後、首都ルミナリアへ行こうと思います!」


「ルミナリアへ? 何か目的が?」


俺は懐からクエストの報酬を懐から取り出し、テーブルの上でジャラジャラと輝かせた。


「これがあれば、推しのライブに行き、ルナちゃん誕生祭に参加できそうなんです。限定グッズを買い占め、最高の引きこもり……いや、推し活ライフが送れるはずなんです!」


「……相変わらず目的がクズですわね」


セレナの冷たいツッコミが刺さるが、今の俺には効かない! すると、アークがほう、と感心したように言った。


「そうでしたか。実は我々も、ダンジョン崩落の報告でルミナリアへ向かう予定なのです。また会えるかもしれませんね」


「え、ほんとですかアーク様!?」


アークたちは別の任務があるため、ここでお別れらしい。いや、なぜ、フレアは「また会えそうですね!」って目がハートになってるんだ? まさかついてくる気じゃないだろうな……


「ではインテンスさん、フレアさん。またどこかで。達者で」

「インテンスさん、リリア、また会いたいです!」

「……死ぬなよ」

「せいぜい、野垂れ死なないように気をつけることですわ」

「……」

フィリアだけは無言で何かを言いたげに会釈だけして去っていった。最後までクールなエルフだぜ。 こうして、俺たちは英雄パーティと、再会を約束して別れたのだった。


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