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第十五話 激闘ヴァンパイアロード!

ギギギ……と開いた扉の先は、スタジアムのように広大な空間だった。中央には黒曜石でできた禍々しい玉座があり、そこに一人の男が優雅に腰掛けていた。血のように赤い瞳、夜のように黒いマント、そして、見る者を魅了するような整った顔立ち。こいつはダンジョンのボス……ヴァンパイアロードだ!


「ククク……久方ぶりの来客か。我が安寧を妨げる愚か者どもよ、その魂、我が糧にしてくれるわ!」


ヴァンパイアロードが玉座からフッと姿を消した、その瞬間!


「全員、最大警戒してください! ガイアは前へ、セレナとフィリアは左右に展開、リリアは中央後方へお願いします!」


アークのイケメンボイスが響く。パーティは即座に熟練の陣形を組む。しかし、敵もダンジョンボスだけあり、今までの魔物(モンスター)とは次元が違う。


「遅いな!」


冷たい声が響いたかと思うと、ヴァンパイアロードはすでにセレナの背後に回り込んでいた。


「まずは魔法使いからだ!」


「…させん! ガイアウォール!」


無口筋肉もといガイアが生意気にも自分の名前を付けた土の魔力を込めた土壁の技でセレナをかばう。しかし、ヴァンパイアロードは嘲笑うかのように土壁を避け、鋭い爪をセレナに振るった!


ガキン!


絶体絶命と思われた瞬間、ガイアが突進し、巨大な盾でその一撃を受け止める。


「……ふん!」


「ガイア!」


ヴァンパイアロードの攻撃はうまく防げたと思われたが、その爪が盾に食い込んでおり、ガイアの体から淡い光が吸い取られていく。


生命力吸収(ドレイン)だわ!」


セレナが焦ったように叫び、頑強なガイアの顔色が悪くなっていく。


「ククク、その生命力、いただくぞ!」


「調子に乗らないでください!」


アークが光の魔力をまとった剣で切りかかると、ヴァンパイアロードはそれを黒い短剣で受け止めた。そのまま後方へ飛び退き、右手を上空に掲げ空間に歪みを生じさせた。


「ふん……うっとおしいやつよ。貴様らごとき眷属で十分だ……我が(しもべ)たちよ宴の時間だ!」


歪みから、無数の影でできた猟犬や、血に飢えたヴァンパイア達が溢れ出す!


「まずい、アーク数が多い!」


フィリアが的確に矢を放ち、猟犬の頭を射抜くが、すぐに新たな影が生まれる。ガイアは盾でヴァンパイアの突進を防ぎながらも、その数の多さに押し込まれ、再びヴァンパイアロードのドレイン攻撃を受けて膝をつきそうになる。


「ガイアさん! ヒール!」


リリアの杖から放たれた癒やしの光がガイアを包むが、すぐに無数のヴァンパイアに囲まれ体力を消費してしまう。消耗は明らかだ。


「セレナ、広範囲魔法をお願いします!」


「く、魔力を集中させる暇がないわ…! くっ、バーニングストーム!」


セレナが放った炎の嵐はヴァンパイア達を捉えるが、すぐに新たなヴァンパイア達が現れてくる。


「……まずい。数が多いよアーク!ヴァンパイアロードを何とかしないと!」


フィリアは矢を放ちながら、アークに焦ったように叫ぶ。


「く、うぉぉぉー!!!」


アークは光属性の魔力をまとった剣で再びヴァンパイアロードに向かっていく。アークの剣とヴァンパイアロードの黒の短剣を何度か合わせる間に、少しづつだがヴァンパイアロードにダメージを与えていく。


「いける!」


アークが叫んだ瞬間、ヴァンパイアロードはニヤリと笑い、強力な闇属性の魔法で応戦してくる。


「ダークエッジ!」


黒い刃が無数に飛び交い、パーティは回避と防御に追われてしまう。さらにまずいことに、召喚された眷属たちによりアークパーティはじわじわと体力を削られていく。完璧だったはずの連携が、圧倒的な個の力と物量の前に、少しずつ崩壊していく。


「このままでは……!」


アークは歯噛みする。リーダーとして、そして最強の攻撃手として自分が切り開かねばならない。しかし、眷属の波状攻撃がうっとおしく、なかなかヴァンパイアロードに決定打を与えられない。その焦りを、ヴァンパイアロードは見逃さなかった。


「貴様が(かなめ)だな。ならば、まず貴様の心を折ってやろう」


ヴァンパイアロードの狙いがアークに集中する。ヴァンパイアロードが生じさせた黒い霧がアークを包み込み、視界を奪う。


「アーク!」

「アーク様!」


仲間たちやフレアの心配する叫び声が聞こえる。霧の中で、アークは気配を頼りに剣を振るうが、空を切るばかりで、逆に、背後や側面から無数の爪撃がアークを襲う。


「ぐっ……ぁっ!」


いくつもの攻撃を受け、アークの銀色の鎧が傷つき、赤い血が滲む。リリアの魔法で何度も回復しているアークだったが、リリアの杖から放たれた癒やしの光は、徐々に弱々しくなってしまっている。彼女の魔力も、もう限界が近いのかもしれない。


「ククク……英雄も形無しだな。その生命力、たっぷりと味わってやろう!」


アークたちパーティがピンチな状況だ。俺の隣では、フレアが自分の非力さに唇を噛み締め、祈るようにアークの名を呟いていた。彼女の瞳には、憧れの人が傷つくことへの恐怖と、何もできない自分への悔しさが滲んでいる。


え? 俺? 壁と一体化し、ガタガタと震え失神寸前の状態だ。


「ヒッ! ヒィィィ! む、無理無理無理! なんでこんなことに! 家に帰ってルナちゃんの動画見てたい!」


俺の情けない独り言に気づいたのか、アークを甚振るのに飽きたヴァンパイアロードが、ふと動きを止め、俺に視線を向けた。


「ククク……ハハハハハ……そうだ。絶望は、最も弱い者に与えるのも一興というもの。」


勝ち誇った表情で、ヴァンパイアロードは俺に向かって指を向けた。


「まずは、そこにいる情けなき弱き魂を、跡形もなく消し去ってやろう。」


ヴァンパイアロードの頭上に、絶望的なほどの巨大な闇の球体が現れる! もうダメだ! 俺の人生、ここで終わりか! 

英雄になって、ルナちゃんとフレアにチヤホヤされたかった……

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