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狂おしいほどに君を愛している  作者: 音無砂月
第Ⅳ章 オルガの願い

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59.神王は問う

「‥…ここは?私、どうしたんだっけ?」

ノエルがリーズナを助けてくれた。邸に帰ってきて、疲れたからノエルと休むことにした。そのはずなのに私は今、何もない真っ白な空間に一人、いる。

現実ではない。ノエルが私を一人にするはずがないし、最後の記憶はベッドの上でノエルに抱きしめられて寝ているところだ。つまり、ノエルの目の前で私を攫うことは常人にはできない。そんなヘマをノエルがするとも思えない。

これは自惚れではなく事実だ。

けれど安易に夢だと思えない。

恐怖は感じない。なぜか知っている感じがする。


〈スカーレット・ブラッティーネ。なぜノエル・オーガストを愛する〉


決して威圧的ではない。けれど圧迫感を与えるような重厚感ある声が上から聞こえた。


〈あれは既にただの人間だ〉


いや、常人とはかけ離れているからその表現は間違っていると思う。でも声の主がそういうことを言いたいわけじゃないのは雰囲気で分かるから私は突っ込むことはしなかった。


〈すでに神にあらず〉


「‥‥‥」


〈神でない、ただの人間になったあれを愛する理由などないはず〉


嫌な言い方をする。悪気はないんだろうけど、この声の主は他人を思いやることができない性格なのだろう。だからこそ言葉に遠慮がない。


「彼が何物であるから愛したわけではありません。彼が彼であるから愛したのです」


〈あれがいなければ、あれと出会わなければ、スカーレット・ブラッティーネ。そなたが何度も苦しむことはなかった。転生の輪廻を外れ、耐えがたい苦痛を味わうことはなかった。そなたの不幸はあれを愛した故に、あれに愛された故に、あれと出会ってしまったが故に始まったのだ。それでも、そなたはあれを愛するのか?愛することができるのか?〉


私が死ぬ度に別のスカーレット・ブラッティーネとして生まれ、再び死を迎えると言う謎の人生をこれまで歩んできたのはノエルのせいだと言いたいのね。

それが事実だとしても私はノエルを責めるつもりはないし、ノエルのせいだと思わない。彼はただ私を愛しただけだ。そして私も彼を愛しただけだ。ただ、それだけのことだ。なぜそれが罪になると言うのか。

「ノエルのせいじゃないわ。皆が選択した結果よ。その責任は選択した者に分散させるべきよ。個人に負わせるものではないわ」


〈そうか〉


「‥‥…」

そうか?って、それだけ?この声の主、声からしておそらく男性だろう。この男は何がしたいのだろう?

姿も見せず、名前も言わず、ただ質問を続ける。かなり失礼な男だ。


〈オルガの心臓、それの返却を求めると言ったらどうする?〉


どうするって、そんなの答えは決まっている。

「人には過ぎたものよ。私には必要ない。ただ抜き取ったら死にました。は止めてよね」


〈問題ない。普通の心臓に戻るだけだが。なぜ必要としない?神の力ぞ。普通の人間なら喜ぶ〉


「なら私は普通の小娘ではないようね。神の力なんて日常生活では必要ないわ。私はその力を使って世界征服なんて馬鹿なことを夢に見るつもりもない。私にとっては無用の長物よ」


〈そうか〉

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