58.神王との対面
ノエル視点
ああ、ここか。
俺は真っ白な何もない空間に一人、立っていた。
今日、忌々しいスカーレットの義妹を助けた。本当は殺してやりたかったけど、冷静になって考えると生かしたのは正解だったと思う。だって、死なんて一瞬の苦しみだ。
安らかな永眠なんて与えない。
地獄の中で生きればいい。
スカーレットを抱きしめてベッドに横になった後はそのまま眠りについた。だからここは夢の中ということになる。ただ、厳密には違う。
精神体を無理やりこの亜空間に連れて来られたのだ。
俺はここを知っている。
〈久しいな〉
重苦しい声が上から降って来た。
『久しい』と言いながらその声には久しぶりの再会を喜ぶものではない。何の感情も籠っていない声。本当に感情がないのか、形式的な挨拶として口にしただけなのか分からない。興味もない。向こうも興味などないだろうけど。
「久しぶりだね、神王。何の用?」
〈相変わらず小生意気な奴だ。人の人生を歩んできても変わらんな〉
「あんたに礼儀正しくする必要はないからね」
〈まだあの小娘を追い回しているようだな〉
俺の中に緊張が走る。
あの小娘というのはスカーレットのことだ。
神王はもしかしたらまたスカーレットに何かするかもしれない。そう思うと怒りが込み上げてきた。
〈凄まじい殺気だな〉
「もし、スカーレットに何かするなら許さない」
俺の言葉に神王は初めて楽しそうに笑った。
〈どう許さないと言うんだ?人間のお前に何ができる?なぜあの小娘に執着する。ただの小娘だ〉
「あんたには一生分からないよ。神王、俺はねスカーレットの為なら世界だって滅ぼしてみせる」
〈‥‥‥〉
「スカーレットを傷つける世界なんて存在する意味がない」
神王でなくても理解できないだろう。
狂気的な愛を。
俺の愛はスカーレットを殺してしまうかもしれない。でも、ごめんね。分かっていても放してはあげられないんだ。
「神王、何度転生しようと、お前が何度スカーレットを苦しめようと俺は、俺たちは必ず出会う。そして必ず俺の愛で幸せにしてみせる」
〈お前の存在があの小娘を傷つけているとは思わないのか?〉
神王の言葉に俺は自嘲した。
「思うよ。何度も。でも、俺はスカーレットを手放すつもりはない。もし彼女が俺から離れるのなら俺は彼女を殺して俺も死ぬ」
〈狂気的だな〉




