表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂おしいほどに君を愛している  作者: 音無砂月
プロローグ
2/64

0.ユージーンの場合

「スカーレット、リーズナは無事保護されたよ」

無表情で告げるのは緑の目と黄金の目をした端正だけど、だからこそ冷たい印象を人に与える男。

ルシフェル王国第三王子、ユージーン。

「‥…そうですか」

あの子はいつも誰かに守られているのね。

私とは大違いだわ。

「どうして、あんなことをした?自分の義妹を奴隷商に売るなんて」

どうして?

いつも誰かがそう投げかける。

「どうして?どうして?どうして?どうして?うるさいのよっ!」

いきなり不敬にも怒鳴った私をユージーンは怒ることなく真っすぐと見つめる。

「どうしてって?考えたことある?投げかけるばかりで、少しでもその理由を考えたことはある?」

「‥…」

「ないでしょう」

だって考える必要がないもの。

「ねぇ、もし奴隷商に売られたのが私だったら?リーズナじゃなくて私だったらあなたたちは助けてくれた?いなくなった私を血眼になって捜してくれた?」

「スカーレット」

私は答えを聞きたくなくてユージーンが何かを言う前に答えを言った。

聞かなくてもその答えは明白だったから。

「捜すことも、助けることもしないでしょうね。だった私は悪女だもの。捜す理由も、助ける理由もないもの」

「‥…」

ユージーンは何も答えない。

けれどなぜかひどく傷ついた顔をしていた。まるで私の言葉に傷ついているみたいだった。

そんなはずない。

私はただ事実を言っただけ。

あなたにとって大切なのはリーズナで、私じゃない。

あなたが愛しているのはリーズナで、私じゃない。

どうして私は生まれて来たの?

「あなたも災難ね、ユージーン。私がオルガの心臓に選ばれさえしなければ、私なんかと婚約しなくて済んだのに」

どうしてオルガの心臓は私を選んだの?

みんなが不幸になるだけなのに。

どうして私が選ばれたの?

「本気で言っているのか?スカーレットは僕と婚約したことを後悔しているのか?」

「私、あなたが嫌いよ。大嫌い」

「っ」

「当然でしょう。私は悪女だもの。私のモノにならないのなら、私を愛さないのなら要らないわ。みんな要らない。あなたも、ブラッティーネ公爵家も、この国も」

私自身さえも。

みんな大嫌い。

「良かったわね、ユージーン。私が死ねばオルガの心臓は主を選びなおす。あなたと私の婚約も解消ね。喜ばしいことだわ」

「何を言っている?」

困惑をするユージーンを無視して私は走り出した。

王家の森を抜け、行き着いたのは崖。

「スカーレットっ!」

ユージーンが追ってきたみたいだ。

きっとリーズナを傷つけた私が許せなくて、罰を与えたくて追ってきたのだろう。

私を思って追ってきたわけじゃない。

どうして、いつもリーズナばかりが優先されるの。

どうしていつも彼女ばかりが必要とされ、愛されるの。

「スカーレット、何をするつもりだ?こっちに来るんだ、スカーレット」

「嫌よ」

私は崖から飛び降りた。

私の名前を叫ぶユージーンの声が聞こえた気がしたけど濁流にのまれて分からなくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ