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お見舞い

誤字報告ありがとうございます。


今後とも宜しくお願いします。

 外はポツポツと雨が降りだしていた。リハビリを終え、昼食を取る。そのあとはトイレのための松葉杖特訓。やることが意外と多く、疲れてベッドに休んでいた。リハビリを始めたせいか、怪我をした部分も少しだけ痛む。


「「「こんにちは」」」


 大集団が病室へ押し掛けて来た。徒党を組んだウチの先生と生徒の群れだ。


「斉藤先生、ご無事で何よりです」


「ええ、なんとか生きてます。村山先生、授業は問題なく進めてますか?」


 まず始めに挨拶を交わしたのが同僚の村山先生だ。生徒の気持ちが一番わかるであろう1年目の女性教諭だ。学校を早退して直帰予定か、服装が遊びに行くぞーになっている。僕が指導教諭の立場だ。


「先生早く帰って来て下さいよ。主任にしごかられて死にそうです」


「主任は僕とは違い素晴らしい先生です。きっちり指導をしてもらい、授業を自分のモノにして下さい。」


「斉藤先生はラフで良かったのにな」


 彼女は怠け気味だったから丁度いいだろう。


「先生、生徒一同から花束です」


 今度は生徒達から花束を貰う。生徒有志には男子生徒は1人もおらず、女子生徒8名である。僕が担任を持つ3年クラスの仲良し女子5名と委員長。暴漢に襲われた時に助けた1年女子2名で構成されていた。

 花束を渡してくれた代表者はクラス委員長の川田葵さん。メガネっ子の三つ編みちゃんだ。13年前の彼女によく似ている。


「ありがとう。身動き取れないんで適当に置いといて」


「その前に花束贈呈済みの証拠写真撮らせて下さい。先生ナースコール」


 写真を撮ろうと提案してきたのは仲良しグループの中心人物、沢田梨沙。振った男が何十人いると噂が立つほどの美少女だ。クラスのムードメーカで有言実行するタイプ。今回の提案もコイツからだろう。


 でもな沢田。写真撮るのにナースコールはダメだろう。

 沢田の手が早くナースコールは押されてしまった。


「どうなされましたか?」


「押し間違いです」


「すいませーん。私達先生と写真撮りたいのでカメラマンしてくれませんか?」


「本当、何でもないです。沢田。余計なこと言うな」


「今行きます」


「来てくれるって」


「お前なぁ」


 沢田に振り回されるのは学校の日常であった。その都度、僕の代わりに委員長の川田が注意してくれた。今日の川田は突っ込み役を辞退しているようだ。


「失礼します。集合写真ですね」


 ほどなくして弥生さんがやって来た。仕事中に申し訳ない。


「はい。お願いします」


 沢田はテキパキとみんなの配置を決めて行った。僕の両隣に村山先生と委員長。前に1年2人。あとは適当だった。


「お願いします」


「行きますよーハイチーズ」


「もう一つの組み合わせもお願いします」


 川田の依頼により、もう1種類1年コンビが僕の横に来る写真が撮られた。

 写真を撮ると弥生さんは直ぐに仕事に戻って行った。本当申し訳ない。


「看護師さん美人だったね」


 ナースコールの首謀者沢田がポツリと呟く。そこから3年女子達の会話が拡がる。


「独身かな?」


「看護師さんって意外と出会い少ないんだって」


「うぁ。こんなとに優良物件が!」


「先生狙われてる!」


「先生浮気しないんだよ」


 浮気か。君ら想像力豊かだよね。村山先生。なぜ君まで会話に参加する。1年生は引き気味だぞ。あ、委員長も無言か。


「お前ら、勝手なこと言わない。あんな美人だそ。彼氏ぐらいいるさ」


 場を治めるため適当なことを言う。残念だかその程度では女子トークは止まらない。


「あの人以外の看護師さんも美人かな?」


「斉藤先生。選り取り見取りじゃん」


「葵負けんな!」


「わ、私!そ、そんなのじゃ...」


 委員長が流れ弾に当たってしまう。飽きれば止まるのだがそうも言ってられない。ここは病室だ。強引に止めてもらおう。


「静かに、ここは病室。他の患者もいるからな」


「「「はーい」」」


 疲れる。会話は何とか治まった。


「そろそろ、お暇しますね。最後に遠山さん西野さん」


 村山先生がまとめに入る。呼ばれた名字に聞き覚えはない。1年生コンビが僕の前に立った。


「「先生、守ってくれてありがとうございます」」


 2人で声を揃え感謝の言葉を口にする。そして頭を下げてきた。


「君たち2人が無事で良かったです」


「先生、本当にありがとうございます。先生がいなかったら私達どうなっていたか」


「いや、僕の方こそすまない。もう少し早く異常に気づいていれば怖い思いしなくて済んだのに」


「だって、だって」


 1年コンビはその場で抱き合い、泣き出してしまった。学校で子供達を守るのは教師の責任。彼女達が気にすることではない。だか泣きじゃくる彼女達にどう声をかけるのが正解なのかは解らなかった。


「はい、泣かない。ここで泣いたら先生に迷惑。」


 委員長が止めに入った。彼女はかなりのリアリストだ。現実的、事務的。誰かさんみたいだ。


「でも」


 委員長が泣いている二人の耳元で何かを話した。それを聞いた1年生コンビは涙を拭いて顔を上げた。何を言った?


 最後は笑顔になり皆帰って行った。

 さてと、この貰った花束どうしよう?


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