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弥生が重なる

 川田と弥生さんが重なる?川田と弥生が重なることは度々あったが今回は弥生さんだ。まさかの可能性に冷や汗をかく。あるの?

 バカな妄想を止め仕事を続けようとした。その時、じーっとこちらを見る川田に気づいた。不審に思われたらしい。物のついでだ。


「川田すまん。眼鏡とってもらえるかな?」


 確証はない。川田は川田。


「え?いいですけど」


 川田は眼鏡に手をかけ、素顔を見せてくれた。


「ありがとう」


「やっぱり眼鏡じゃなく、コンタクトの方良いですか?」


「うーん。伊藤どう思う」


「え!俺?俺の場合どっちも葵なんだけど。一般受けするのはコンタクトかな」


「やっぱり?でも目に何か入れるの怖いんだよね」


 伊藤に話を振り、この話題から逃げる。お勉強チームで話で盛り上がりを見せた。


 当然だが、川田の顔は弥生ではなかった。


 図書室の勉強会は休憩を挟みさらに一時間ほど続いた。伊藤はぐったり。川田に連行され家路へと向かった。村山先生は職員室へ戻る。僕は出禁のためそのまま学校を後にした。


 仕事の最中も帰路の最中も、一度思い付いた妄想が頭から離れることはなかった。自分の思い込み。希望がそう見させている?


 弥生と弥生さんは同一人物?


 弥生と弥生さん。年齢は合う。合うけど。名字違うし。眼鏡もかけていない。コンタクト?眼鏡を外している弥生の顔を思い出せ。海や一緒に寝ているとき......


 顔が重なった。


 えぇぇー!待て待て待て。なら何故名乗り出ない?名字も違う?やはり僕の思い違い。名前一緒のそっくりさん。バカな。


 本人には直接聞けない。誰に聞く?弥生さんの家族?真央さんだ!彼女なら詳細知っているはずだ。

 でもどう聞く?聞きづらい。家族の絆を壊さないか?冗談のノリで聞けば良いのか?どの変から?高校の話がいいか。


 色々な思いはあったが欲求がまさり、スマホを手にとっていた。連絡相手は真央さん。


『弥生さんの指定場所の検討が着きません』


『思い出して下さい』


 よし、既読。返信が来た。


『弥生さんって高校の時はどんな感じでしたか?』


『姉は高校にほぼ通ってません』


 通ってないの?あれ?やっぱり別人?


『何処の高校?』


 LINEの着信ではなく電話が鳴る。真央さんは短気。


『何で、そんなこと聞くんですか』


「えーと。プロポーズの場所探しのために僕と接点があるか確認したくて。」


『高校は知りません。』


「実の姉の高校なのに?」


『.......実の姉です!』


 静かだったのに、いきなり大声をあげられた。電話越しでも耳に響いた。


「そんなに大きな声出さなくても。おーい」


 電話が切れていた。怒らせてしまった。姉の高校を知らないのが癇に触った?どちらにせよ。真央さんから情報は得られそうもないな。仕方ない。明日には機嫌が治るだろう。

 さて、これからどうするのか考えているとLINE来た。突然電話を切った真央さんからの謝罪文かな?

 スマホを確認する。弥生さんだ。


『こんばんは。おはようございます。今日が夜勤最終日です。頑張ります。先生は明日、リハビリですか?』


『おはよ。僕は明日、最後の通院予定ですか』


『完治ですか?』


『完治です』


『おめでとうございます。明日お祝いしましょう』


『無理しなくて良いよ』


 弥生さんは夜勤開けだ。本当は眠いはず。


『明日は頑張ります。では仕事して来ます』


 至って普通の会話。明後日のことには触れず。肝心なことは聞けず仕舞い。明日は快気祝いらしい。モヤモヤしていると再びスマホが鳴る。今度は真央さんだ。


『姉の高校。清興。桜蔭』


 短い文。だか確定情報が来た。弥生さんの高校は僕の初赴任先と一致した。


『電話切って、すいませんでした』


 LINEに続きがあった。謝りの文章だ。直ぐに返信する。


『びっくりしたけど気にしてないよ』


『プロポーズの場所特定出来そうですか?』


『なんとなくわかった』


『え?高校だけですよ』


『任せろ』


 真央さんは不安そうだが、僕には確信が出来た。絶対に間違いない。あそこだ。

 その前に明日は最後の通院。プロポーズ前にイチャイチャしようっと。


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