僕の心配ごと
談話室の話し合いが大方終わる。大変なのはこれからだ。伊藤の場合本当に時間がない。村山先生の手腕に期待だ。
「まずはセンターだ。あと5ヶ月しかない。過去10年の試験問題を解け。解説は村山先生にお願いします」
「おう」
「わかりました」
伊藤と村山先生の反応はまちまちだ。
「伊藤。気合い入れろ!それ以外の勉強は中学校一年の教科書から丸写しで書け」
「先生、それは流石に無理では?」
川田が疑問を呈して来た。当たり前だ。
「伊藤は基礎がない。てか忘れてる。時間がない。一度、中学の復習をした方が良い。伊藤、遊んでいる暇ないからな。クリスマス?正月?今年はないと思え」
「へーい」
「昴。意味わかってる?」
「わかってるって」
「試験→解説→中学→試験に戻る。三日間。中学が終わったら高校。さあ、今日からスタートだ。村山先生、問題の準備、宜しく。今日は今年ので良いから」
「はい」
このサイクルで勉強出来れば大学合格も夢ではない。あとは伊藤の努力次第。万が一落ちても一浪して合格を目指すのも手だ。
「村山先生あとは、おまかせします。僕は帰って一眠りします」
「何だよー呼び出して。押し付けて。帰るのか?」
「悪い。徹夜開けで限界なんだ」
久しぶりの徹夜は眠い。年を取ったな。目の前の二人は元気なのに。
「なんで徹夜なんだ?」
「プライベートなんでノーコメント」
伊藤の質問は無視。村山先生だけは理由に気づいただろう。
僕は帰路に着く。伊藤達は今日から図書室で受験勉強だ。頑張ってほしい。僕はそのまま何もせずベッドイン。目が覚めたら夕方だった。
スマホが点滅している。手に取り確認。LINEが四件入っていた。
一件目。弥生さん。
『おはようございます。今から夜勤頑張ります。先生も明日のリハビリ。忘れずに』
二件目。弥生さん。
『昨日のH良かっです。筋肉痛になってしまいましたけど』
三件目も弥生さん。
『昨日の二人は別れなくても済みそうですか?気になります』
四件目。あ、村山先生。
『今日はありがとうございました。感謝致します。昴君を頑張らせたいと思います』
さてさて、どちらから返信するかな。事務を先にするか。プライベートはゆっくり。弥生さんは仕事だろうし。
『お疲れ様です。伊藤は問題だらけです。僕もフォローには入りますので頑張って下さい。念のため書きますが一浪も視野に入れて下さい。あと男女の仲は禁止です』
送信っと。あ、書き足りない。追加するか。
『伊藤の大学進学の動機は川田を追いかける。僕らはそれを応援することにした。その態で主任に話す予定です』
返信が来た。
『もちろんです。気をつけます』
『はい。口裏合わせます』
伊藤の件はこれで修了。次は弥生さん。
『仕事、頑張って。例の二人は別れずに済みそうです』
これで良いだろう。さあ、晩飯作るか。おもむろにキッチンに立つ。
「ピンポーン」
誰か来た?誰だ。意外な人物が玄関に立っていた。僕は出迎えに向かう。
「どうしたの?真央さん」
そこにいたのは弥生さんの妹。真央さんだ。なんだろう。
「うー。私も斉藤さんの連絡先、知っていれは来なかったんですけど」
「ま、まあ。上がって」
「いえ、外に出ましょう」
「なんで?」
「姉の彼氏といえ、一人で男性の家に上がるのはちょっと」
真央さんから見ると僕は警戒対象らしい。
「わかりました。下の店で何か、食べますか」
「宜しくお願いします」
僕らは外に出て一緒に食事をしながら話すことになった。このビルで安い食べ物?
「真央さん。パスタで良い?」
「構いません」
ビルの中に入るイタリアンレストランに入る。
「わ、お洒落ですね」
「僕の知る限りこのビルでは一番安いから」
店員に案内され、窓際の席に通される。景色ばビルばかりで良くはない。逆に見られる位置だ。仕方ない。席に着くなり真央さんはメニューを確認していた。
「斉藤さん。高いですよ」
「あぁ。でも今日はこの席だから半額だよ」
「この席?」
「ここ、ウチは人、入っているよって見せる席。宣伝だな。だから半額」
「見られるんですか?恥ずかしいです」
外に目を向けると人々が立ち止まり、たまにこちらをを見上げる。
「興味ある人しか見ませんから。さ、注文して」
真央さんは、諦めて食事を注文した。
「さて、お話はなんですか?」
真央さんに向き合う。わざわざ僕に伝えたいことはなんだろう?
「斉藤さんは姉といつ頃結婚する予定ですか?」
「わかりかねます」
「早めに結婚しませんか?」
結婚を急がされられた。しても良いが、僕が弥生さんに、きっちりプロポーズを決めなくては。
「なぜ?」
「我が家に姉の元カレが現れたようで」
「弥生さんの元カレ!」
単純に驚いた。弥生さんの元カレ。彼女から詳細は聞いていない。話す気もないだろう。今になり何故現れた?
「父から聞かされてびっくりしちゃって。でも今さらだよなーと思いながら、つい口を滑らせ姉に話したら」
「話したら?」
「喜んじゃって。元カレと再会したら斉藤さんフラレますよ」
僕が弥生さんに振られる?




