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着信

 夜風に当たりながらフラフラと歩く。大和ファミリーとの交流を終え帰宅の最中。彼等はまさに幸せ家族だった。飲み会の最中、懐かしい過去を思いだし心が痛かった。

 不意に着信音が流れる。スマホを手に取り相手を確認する。

 違う弥生だった。


『本日はありがとうございました。連絡は迷惑とは思いましたがアリバイ工作のため毎日一度は連絡を差し上げたいと思います』


 律儀な人だな。と思いながら僕も返信する。


『いえ、ありがとうございました』


 連絡は1ヶ月ぐらい続ければいいかな。あとは会うこともなく自然消滅。消滅後も半年は親、親戚等にバレないで引っ張れるだろう。



 次の日の朝。日曜日だ。特に行く場所もなく、洗濯、掃除をしまったり過ごす。あ、着信だ。誰だろうと確認する。母親からだった。


『なんだ?』


『なんだじゃないでしょ。お見合い上手く行ったらしいじゃない。どんな人だい?』


 付き合ったことにすれば、お見合い攻撃は無くなると思っていたが、今度は違う攻撃が来ていた。


『びっくりするぐらい美人だった。何で彼氏がいないか不思議な位だ』


『あら、じゃあ期待してもいいのかしら?』


『何をだ?』


『孫の顔を早く見たいわ。彼女の名前は?』


『立花弥生さんです』


『弥生さんね。彼女に今日は連絡したの?』


『いや』


『努力するのよね?直ぐに連絡しなさい』


『わかった。わかった』


 会話を強制修了させる。面倒だ。連絡?取るわけないだろ。お見合いの席で言った『まだ結婚する気はない』は嘘で、僕は『結婚する気がない』が本音だ。一生独身のつもりだ。もうあんな思いをするのはイヤだった。


 こちらから連絡は無くともあちらからはある。再び弥生さんより連絡が来た。定期連絡。僕の意見に偽装恋人を提案してきた彼女。彼女も僕のような傷があるのかも知れない。


『お早うございます。夜勤明けです。寝ます』


 当たり障りのない文章。楽でいい。しかし、看護士って夜勤あるのか。大変だな。気持ちをそのまま伝えた。


『お疲れ様でした。ゆっくり』


『予定外のことが起こってます。夕方連絡します』


 まさか2度目の返信が有るとは思っていなかった。予定外のことってなんだ?とりあえずOKの返信をする。


『了解』


 やることがなくなった僕は二度寝することにした。週末ば体を休めないと。ベッドに潜りかけた時また着信が来た。母だ。


『なんなんだよ』


『ちゃんと弥生さんに連絡した?』


『したよ』


嘘ではない。正確には向こうからの連絡だが。


『じゃあ弥生さんの今日の予定は?』


『夜勤明けだから寝るんだと』


『あら。あら。本当に連絡取ってたのね。頑張っている郁也に母さんからプレゼントあるんだけど』


『なんだ?』


『ホテルの平日限定ディナー券を貰ったから弥生さんと行きなさい強制です』


『おい』


『食事のあとは任せるわ。いい大人なんだから好きにして』


『意味わからん』


『郁也、母さんを安心させて頂戴』


 再び強制修了。なんなんだよ。この予定外の圧力。一気に眠気がぶっ飛んだ。静かにしてくれないかな。中途半端に目覚たため外出することにした。行く場所は駅前の行きつけの本屋。時間潰しにはちょうどいい。少し早めの昼食を家で取り本屋へ向かった。


 本屋へ入り浸り午後3時を回ろうとしたところに再び着信。着信0の日ばかりのスマホが今日に限っては忙しい。弥生さんだ。


『すいません。今、大丈夫ですか?』


『出先ですけと問題ありません』


『今朝、話した予定外のことなんですが、ウチの家族が勝手に盛り上がっちゃいまして、ホテルの平日限定ディナー券とか持って来て行って来なさい。願わくば先生とのツーショット写真が欲しいと言われました』


 彼女のライン内容に開いた口がふさがらない。どこの親も考えることは一緒か。好都合と言えば好都合か。


『問題ないです。来週どこかで行きましょう』


『いいんですか?』


『ウチの親もまるっきり同じ券を押し付けて来ました』


『そうですか。では宜しくお願いします。私は水、木が空いてますけど』


『では水曜日に』


『わかりました』


 彼女とのやり取りを終了する。なんだか、来週は忙しそうだな。両方の親の勢いにどっと疲れがでた。









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