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僕の元カノ 出会い

 彼女と僕の出会い。それは13年前にまでさかのぼる。教師になり1年目。教師という職業に夢と希望を持っていた。生徒へのより良い指導をと青臭いことを思っていた頃の話しである。


 1年目は教科のみを担当。残りの時間は指導担当の先生の元、授業資料の作成。あとは雑務の仕事を少々。担任を持たない僕は生徒会と図書室の副顧問という役職を押し付けられていた。主顧問が顔を出さない人達だったため、その二つを掛け持ちで動きまくった。彼女との初対面は生徒会室だ。


 彼女は2年生の生徒会長。任期は3年生の夏休み前まで。3年生は受験に忙しいのだ。グリグリ眼鏡に黒髪の三つ編み。本校のスーパー優等生。生徒会の活動がない時はほぼ図書室で教科書を開く。


「水野は今日もここか。どの大学目指してるんだ?」


 彼女は放課後、必ずと言っていいほど図書室で勉強をしていた。それは今思えばとても不思議で。


「秘密です」


 彼女は迷惑そうに冷たく答える。


「そうか、お前ほどの学力あれば行き放題だろ」


「大学はお金かかりますから」


「進学しないのか?奨学金貰えるだろ?」


「借金です」


「まさか、就職組か?」


「どうでしょう」


「勿体ない」


 僕はあの頃、彼女の進路について相談にのっていたつもりだった。そして大学へ行けと再三説得を試みている。しかし、彼女が首を立てに振ることはなかった。

 そもそもぺーぺーの先生が進路相談とか、勘違いもはなはだしいのだが。


「先生。ウチの家は母子家庭なんです。大学へ行くお金はありません。高校だって難しかったから」


 グリグリ眼鏡のせいで、表情はわからない。機械のように淡々と彼女は話す。


 彼女との関係が変わり出したのは、彼女が3年の時、雨がしとしと降る梅雨入りあたりのことだ。

 映画館に一人で行くとその隣にいつものグリグリ眼鏡。ラフなTシャツを着、ジーンズを履いた彼女が座っていた。本当に偶然の出会いだった。


「せ、先生!」


「うぉ!水野かびっくりした」


「あぁ。そう言えば、先生もこのシリーズ好きと公言してましたたね」


「ああ。すると水野もか?」


「......はい」


 彼女は恥ずかしそうに下を見ながら顔を真っ赤にして返事をする。僕らが話すこのシリーズとは一部の熱狂的ファンがいる某宇宙戦争の続き物だ。


 モヤモヤしながら映画館を出る。映画の内容が謎が解き明かされスッキリしたかと思えば新たな謎が増えている。すぐに仲間と語りあいをしたかった。それは水野の一緒だったようで。


「せ、先生。そ、その時間があるようでしたら少し映画について私の話を聞いてくれませんか」


 一緒に外に出た彼女は怯えたように、それでも必死で僕を捕まえに来た。僕の場合この映画を語り合う友は腐るほどいる。彼女は女子高生だ。似たような趣味の人は皆無かも知れない。そう思い僕は彼女の提案を受け入れる。


「ああ、いいぞ。飯ぐらいおごってやる」


「そ、そういうのじゃなくて」


「わかってるって。映画の話したいんだろ。時間かかるし。僕も話たいからな」


 その日は大いに盛り上がった。機械的な彼女とは違ういきいきとした表情をする。この日より彼女の態度がガラリと変わった。あの事務的な喋り方が柔らかい物になっていた。僕も彼女の内面にひかれていた。


夏休み前、いつものように彼女と図書室で会う。彼女はこちらに気づくと笑顔を見せ軽く頭を下げる。この頃、僕は異性として彼女を意識している。


「弥生はまたここか」


 名字の水野ではなく名前を呼ぶ仲になっていた。


「はい、ここで先生を待ってるんです」


 彼女は恥ずかしがらずにそう言い放つ。その仕草全てに僕は安らぎを覚えた。

 彼女は受験生のはずである。何となく図書室へ来て参考書を開き勉強をしている。僕は彼女から見える範囲で本を開く。図書室には図書委員と僕と彼女だけ。

 彼女は小声で僕に話かけて来た。


「せ、先生と二人きりで夏休みに海で遊びたいです」


 突然の申し入れ。教師なら断る案件だ。流石に彼女だって二人きりは無理だとわかっていたはずだ。たぶん冗談で友達と行く付き添い保護者役の依頼だろう。


「OK一緒にいくか」


「はい!」


 僕は彼女の提案を受け入れた。まさか、本当に二人きりだったとは......

 

 朝、ご近所の駅で待ち合わせをする。


「先生、おはようございます」


「え?」


 挨拶をされたが誰だか解らなかった。ただここで待ち合わせをしている。人物は1人。


「弥生か?」


「もう、何言ってるんですか。弥生に決まってるじゃないですか」


 弥生を名乗る人物は彼女のトレードマークのグルグル眼鏡をしておらず、髪型もストレートに下ろしていた。服装も薄黄色のワンピース。夏らしい麦わら帽子などを被っている。


「カワイイ」


 ついつい本音が漏れる。


「あ、ありがとうごさいます。さあ、海に行きましょう」


彼女に手を引かれ、駅の中に突入する。その勢いに負け、何も聞かず彼女について行く。彼女しか来ないことを聞いたのは駅のホームに入ってからだ。

 潮風の匂いが海に着いた事を知らせてくれる。僕らは互いに水着に着替える。僕の方が先に着替え終わり彼女の登場を待った。


「お待たせしました。先生どうですか?」


 彼女の水着姿に言葉を失う。彼女の水着は黒のビキニ。大人ぶって見せるかのように思えた。僕もその姿に冷静さを失っていた。直視出来ない。


「あぁ。似合ってる」


 上の空で答える。


「さあ、行きますよ。先ずはあの離島まで泳ぎますから」


「待て待て待て」


 朝の駅前のように手を引かれる。これではまるで彼女の方が保護者ではないか。僕の立場は?とは思ったが、考えるのを止めた。

 その日、1日彼女と海を堪能した。離島まで泳ぎの競争。海の家の食事。何故かビーチバレー。砂遊び。などだ。

 夕方になり疲れはてた二人はぼーっと水平線に沈む夕日を眺めていた。彼女は僕の肩に体を寄せる。


「先生、私の恋人になってください」


 彼女から不意打ちの告白を受ける。教師と生徒の関係だそんな物を受け入れてはならない。受け入れてはならないのだ。理性ではわかっているつもりだ。でも僕は僕自身が信じられない行動をとる。

 僕は彼女の方を向き強引に彼女の唇を奪った。彼女は驚きのあまり泣き出してしまった。恐らく冗談で告白して来たのだろう。僕の勇み足だ。

 

 僕らは着替えを終え帰路に着く。電車の中では二人とも無言だった。僕は彼女に別れ際に誤りさっきのことは無いことにしてもらおうとした。

 電車を降り別れの時が来た。


「「あの」」


 二人の言葉が重なる。


「弥生、先にいいぞ」


「あの、先生。今から先生の部屋で、そのさっきのキスの続きをして下さい」


 今日彼女は色々と積極的過ぎる。許されるならしたい。


「流石にそれは不味いから」


 僕は教師だ。踏み留まるのが正解。


「先生好きです。私を先生の物にして下さい」


 曇りのない真剣な告白だ。僕は教師の前に男だった。彼女の肩を抱きそのまま彼女を僕の家に連れ帰った。



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