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僕の仕事

 寝心地の悪さに早めに目が覚める。伊藤は床で爆睡している。僕はソファーで寝ていた。やはり足を伸ばせないと眠り辛い。

 川田の様子を見に自分の寝室を覗く。布団がモソモソ動いていた。


「川田、起きてるか?」


 布団の動きが止まった。


「先生。その、は、恥ずかしいので出て行ってくれますか」


「ああ、すまん」


 寝顔が恥ずかしいのかな?女の子だ。自分の部屋なのだか、ここは大人しく引き下がる。


「待って。シャワー浴びていいですか?」


「ああ、いいぞ、着替えウチにはないけど問題ないか?」


「問題ないです。持って来てます。洗濯しても良いですか?」


「勝手に使ってくれ。場所は玄関の横な」


 今度こそ僕は本当に部屋を出た。そして川田が部屋を出るまでソファーで寝るふりをする。ドアが開く音がした。薄目を開け確認すると、着替えの他にベットのシーツまで持っていた。


 僕は川田がシャワー室に入るのを確認し、起き上がる。朝食を作るためにキッチンへ向かった。冷凍庫(冷蔵庫?)を覗く。卵はある。ベーコンもあった。オカズはこれで良い。あとはパンか米か、だな。折角だ。焼きたて高級パンでもご馳走するか。

 開店と同時に下の店でパンを買うことにした。開店時間は朝7時。買って来てからハムエッグを作り、インスタントコーンスープだ。


 高級パンで伊藤に『斉藤先生』と言わせる。間抜けな理由だ。人質見たいな物を取れば、伊藤は軽くノリで答えてくれるはずだ。昨日、夜の進路指導でそう思った。基本悪い奴ではない。川田の進路について話すと伊藤も自分の進路について真剣に悩んでいた。


 朝食が決まったので部屋を片付ける。昨日の残骸。そうだ。酒飲み川田は説教しなくては。あとは家に帰って謝ること。

 キッチンで食器を洗っていると川田が風呂から上がって来た。トレードマークの三つ編みではなく、ストレートにおろした黒髪。キレイだ。


「川田ちょっとこっちこい」


「は、はい」


 川田の顔が引き締まる。いきなり呼ばれ緊張しているようだ。彼女をソファーに座らせる。


「昨日の話だが」


「あれは私の本音です。先生好きです。私のこと抱いてください」


 真剣な告白。目の前に僕が一番欲しい物があった。違う。一番欲しい物に近い物だ。たが、もう間違いを起こして行けない。あんな悲しい思いは二度とゴメンだ。


「川田。とりあえず、酒を飲んむじゃない!酒は20歳からだ!僕が罰せられるだろ!」


「え?その」


「次に家出するんじゃない。今回、伊藤がいたから大したことにならなかったが、見知らぬ男に体売るつもりか!」


「そんな事、絶対しません!先生ひどいです」


「川田。お前の気持ちは受け取れない。児童買春になる」


「な、何言ってるんですか先生。私は純粋に先生のことが......」


 川田は泣き出してしまう。それぐらいでいい。大人はずるいんだ。慰めはしない。慰めるつもりならこんな言葉は掛けない。


「今晩はどうするつもりだ」


「.....家に帰ります」


 泣きながらも川田は必死に正解を答えてくれた。これでいいんだ。


「じゃ、お父さんを説得出来る方法を考えようか。喧嘩の原因はなんだ?」


 いきなりの話題転換に川田は涙を拭き顔を上げた。


「お父さんは4年制の大学を出て私に公務員になって欲しいらしいです。それが生活安定するからっと。」


 うん。知ってる。安定の公務員。僕も教師だけど公立の教師。つまり公務員だ。その安定感は半端ない。


「獣医だって安定の就職先だぞ」


「医療関係はダメなんだって。労働環境が悪すぎて私の体が持たないんだって」


 お父さん。正しい。娘を守ろうと必死だ。でも糸口は見つけた。これほど娘を心配するお父さんなら説得出来る。


「川田。大丈夫だ。お父さんと三者面談しよう。僕が説得出来る」


「先生、そんな事出来るんですか?」


「出来ます。ベテラン教師ですから」


「先生。ありがとう」


 川田の進路について一区切りついた。絶対に希望の進路に行かせてやるからな。

 彼女と話混んでいるとそうそうに時間が立ち、そろそろパン屋が開く時間となる。僕は上着を取り外出の準備をする。


「先生、どこかに行かれるのですか?」


「今から朝飯買って来るから大人しく待ってろ」


「お手伝いすることはないですか?」


「そこの伊藤でも起こしておいてくれ。優しくな。ソイツもお前の被害者だかなら」


「被害者なんて......」


 パンを買い部屋に戻って来ると川田が消えていた。ぼーっと、テレビ画面を見、寝ぼけている伊藤に聞くとベランダで洗濯物を干しているとのこと。

 僕は朝食作りを始める。ハムエッグとインスタントコーンスープだ準備など物の数分て終わる。


「わあ、いい匂い」


「腹減ったな」


 川田がベランダより戻る。伊藤が彼女に同調していた。


「さあ、出来たぞ。食べたらすぐ学校にいけよ」


 夏休みだが彼らには課外と補習が待っていた。


「斉藤!何で俺はスーパーの食パンなんだ!」


 伊藤が自分の皿を見て怒りをぶつけてくる。想定通り。


「目上の人に謙譲語。最低限の言葉使い出来ないやつはそれでも十分。それに伊藤、お前質より量だろ」


「ふざけるな!」


 隣で川田が笑いを抑えている。


「昴、私の上げるよ。お詫びも込めて」


「川田それは許さん。伊藤の分もちゃんとある。さっき言った通り伊藤次第だ」


「何て言えばいい?」


「斉藤先生、僕も高級パン食べたい。ワン」


 伊藤が僕を睨む。それを俺に言えと?目はそう言っている。川田は興味深く、こちらを観察する。


「斉藤先生、俺も高級パン食べたい。わ、わん」


「良く出来ました。出来れば今後も斉藤先生を使って下さい」


「善処しまーす。頂き」


 伊藤は高級パンを食らう。朝食を追えると二人は課外、補習へと学校に向かった。僕はこのあと川田の家に連絡を取る。川田と家に帰る約束をしたと。



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