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伊藤と川田

 教師の部屋に呼ばれ緊張する二人。ますばマンションの入り口で彼らの顔が強ばる。白いお爺さんに声をかけられ緊張。あの伊藤がカチコチで面白い。


「先生金持ち?」


「普通の公務員だよ」


 一般的に公務員は銀行から信用され資金も借り易いのだ。年齢も行けばそれなりの物は買える。若い時にほぼ無趣味だったため頭金もそこそこ貯まっていた。


 部屋についた時から態度が軟化する。イメージより普通ぽい作りで安心したようだ。そして緊張より興味が勝り部屋を見回し始める。


「伊藤あんまり、うろちょろするな。川田、お前も落ち着け」


 川田はうつ向き詮索を止めるが伊藤は変わらなかった。二人の行動は無視してまずは二人の親に連絡する。


 川田の家には感謝された。父と娘で大喧嘩し娘は出て行った。喧嘩の原因は進路だ。父親はどうしても獣医学部には納得出来なかったようだ。

 飛び出して帰ってこない娘に捜索願いを出す寸前だった。彼女の母親は直ぐに迎えに来たかったようだが断る。川田の様子を見て今日は返すべきてではないと判断した。本人に無理に帰れと言っても拒否するだろう。教師と生徒の信頼関係も大切だ。


 教師とは言え、独身むさ男の家に泊まる。川田のは母親は意地でも連れて帰りたかったらしい。そこで伊藤が一緒と伝えた。するとしぶしぶだかお泊まりが許可された。


 伊藤の方は男なので連絡するとあっさり許可が下りる。これが男と女の差であろう。


 二人の親に連絡を済ませ、部屋の様子を窺う。喉が渇いていたのか、川田が何かの缶を持っていた。伊藤が何か慌てている。缶?僕の部屋にある缶?


「川田お前何飲んでる!」


 僕も慌てて声をかける。そこには買い物してきたばかりの発泡酒の缶が開けられていた。しかも、空の缶が一本転がっている。


「せ?先生ら。先生キスしよう」


「「な!」」


 僕と伊藤。同時に驚きの声をあげる。


「キャヘヘ。何か楽しい。昴?昴ゴメンねぇ。私、今から先生とHなことするんだ~」


「おい、葵しっかりしろ」


「この部屋あつーい。脱いじゃお」


 伊藤は慌てる。うろうろしか出来ない。僕も考える?どうする?コレ。


「か、川田。わかった。Hしよう。ここで脱ぐな。ベッドに先に行って待ってろ」


「斉藤何言ってやがる!葵、まともに受けるな。」


 伊藤が止めに入る。彼の思考は正しい。だか、酔っぱらいの川田には無意味だ。


「はーい。何処ですか?」


「あの部屋開けたベットが見える。そこだ」


「了解でーす」


 川田は千鳥足で僕の寝室に入っていった。その様子を確認してから僕はソファーに座る。


「おい、斉藤。どう言うつもりだ。本当は始めから葵とやるつもりだったか?」


「伊藤。斉藤先生。敬称つけような」


「そんなのはどうでもいいだろう!葵はちょっと魔が差しているだけでお前のこと何かなんとも思ってないからな。勘違いすんな」


 川田のことを抱く宣言してから、伊藤の興奮は収まらない。言いたいことばかり言ってくる。でも、まぁ。同級生の女の子からあんな言葉かけられたら冷静にはいられないか。


「伊藤、川田のこと好きか?」


「な」


「そうか。好きか」


「付き合うとかじゃなく、幼馴染みとして好きだ」


「うっそー。川田と付き合えよ」


「俺、好きな人いるから」


「ふーん」


「どんな人?」


「一言で言えば大人の女性」


 年上好きだったか。


「川田は今頃寝ているよ。僕と伊藤はこの部屋で寝る」


「ああ、それでいい」


「伊藤の進路について話でもするか?」


「いらないし」


 伊藤が落ち着きを取り戻したので、この時間に何故ここにいるのかを聞くことにした。川田の母親から家出は聞いている。伊藤は巻き込まれたのだ。


「川田が父親と喧嘩したのは聞いているか?」


「ああ、本人から聞いた」


「で、なんであそこにいた?」


「葵から、『家出したから匿って』て連絡来た。始めは俺のウチ来る気だったらしいけど。渋ったら、アイツ走って逃げやがった。まずいと思って追って行動を共にした 」


 伊藤ナイス判断。感謝しかないな。


「川田の両親に連絡取らなぎゃダメだろう」


「葵がどうしても連絡入れさせてくれなかったんだ」


「どうするつもりだった?」


「ネットカフェに泊まるつもりだった」


 伊藤の事情聴取が終わる。二人で川田の様子を見ることになった。川田は予想通りすやすやと眠っていた。その姿は僕の弥生だった。僕は彼女の髪に手を伸ばし頭を撫でる。彼女は寝返りをする。正面に彼女の顔があった。


「おい、何やってるロリコン教師」


「え。ああ」


「斉藤、葵に触れるなよ」


 弥生じゃない。川田だ。僕はベットの側から離れる。後ろの伊藤に感謝だな。声をかけられなければ、僕はひどい間違いを犯していたかも知れない。


「ぐっすり寝てるな。部屋から出るか」


 僕らは予備の布団をとり部屋を出る。伊藤ともうちょっと話をしてから寝るか。もちろん彼の進路についてだ。


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