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男の料理と家出人

 久しぶりに自宅で料理をする。三大欲求の一つ食を満たす為だ。

 米を研ぎ炊飯器にセットする。カット野菜を皿に出し、レンジで暖めたハンバーグを盛り付ける。お惣菜ポテトサラダを乗せてオカズが完成する。お湯を沸かしインスタント味噌に注ぐ。ご飯の炊きたてを茶碗に盛る。斉藤家、ハンバーグ定食の完成である。


 こんなの料理ではない!と騒ぐ人がいるかも知れないが、我が家ではこれが一般的になりつつある。コンビニ最高。あとは発泡酒を添える。


 この二週間の入院。何だかんだで騒がしかったため、今の静寂に懐かしさを覚える。禁酒明けの酒はうまい。まったりと食事をしているとスマホが鳴るLINEだ。相手の顔を想像しながら画面を覗く。


『こんばんは。ご飯食べましたか?』


 ええ、もちろん相手はカワイイ彼女。


『食べてる最中』


『ちゃんと、野菜食べてますか?』


『食べてます』


 食べかけのコンビニ、ハンバーグ定食の写真を撮り、コメントに添付する。


『私より料理上手?』


『今度、作ってあげますよ』


『ダメです!それは私が先です』


 彼女のプライドを傷つけたかな?大人しく引こう。


『その時は宜しくお願いします』


『任せて下さい。先生。会いたいな』


『僕もです』


『今から行ってもいいですか?』


『昨日も話しましたが、まずは自分の仕事を大切に。弥生の休みの時に来てください』


 僕は来月いっぱい休みだ。たまに学校に様子見に行くかも知れないが基本暇人だ。弥生さんの気が向いた時だけ、こちらに来れば良いと思った。


『まだ、夜の時間は長いですよ』


 お誘い?うむ。そりゃね。したい気持ちもある。


『僕は弥生の家知りませんが、ウチに来るのにどれくらい掛かりますか?』


『1時間かな?』


 僕は今の時間を確認する。7時30分。8時スタートとして我が家に到着9時か。イチャイチャする時間はたっぷりある。それで良いのか?僕の時間は無限だが、弥生さんは次の日、仕事のはず。


『我慢します。日勤の最終日に会いましょう』


『私も我慢します。明後日のデート楽しみです』


『行きたい場所ありますか?』


 弥生さんの行きたい場所か。そう言えば平日限定お食事券があったな。そこが無難?あとは高層階のホテルでがっつりと。


『図書館はどうですか?』


『そんなとこでいいの?』


 予想外の回答に聞き返してしまう。僕は本好きだから特には困らないけど。彼女はどうなんた?本とにらめっこで会話もないのでは?そもそも社会人二人で行く場所かな?漫画喫茶、ネットカフェならわかるけど。


『はい。そこがいいです』


『では、弥生の休みは図書館で。日勤の終わりの日は例のホテルの平日限定ディナーに行きませんか?』


『あれですね。行きます。宜しくお願いします』


 よし!密かにガッツポーズを決める。やるぞ。

 彼女と長いやり取りが終わる。LINEで良かった。文字だと伝えたいことを堂々と伝えられる。


 気分が良い。もう一本は発泡酒を飲もうと冷凍庫(冷蔵庫?)を開ける。目的の物は一本もなかった。仕方なく下に買い物に行くことにした。

 地下の食料品売場は直通のエレベーターがなく、1階まで降りてから地下に入る。回り道だ。さっさっと買い物をする。発泡酒につまみ、明日以降のオカズを購入。再び部屋に戻るため一階を訪れる。

 見覚えのある二人が休憩所で静かにしていた。僕は時計を確認する。9時は回っていた。店も着々と閉店して行く。

 補導かな。ま、今から家に帰せば良いか。


「伊藤、川田デートか?」


 二人は声をかけられたことに驚きこちらを見る。


「斉藤か。なんでこんな何処にいる?」


 伊藤が川田を隠すようにベンチより立ち上がる。


「僕はこの辺に住んでいるからな。それより二人とも早く帰れ。あまりうろうろしていると補導されるぞ」


「わーた。わーた。動くよ。じゃあな。」


 伊藤は振り向きベンチに座る川田の腕を取る。川田はその手を振りほどいた。コイツら別れ話の最中か?そう言えば、昼に川田が喧嘩したって言ってたな。


「お前ら何があったか、知らないがまずは家に帰れ。川田わかったな」

 

 家に帰ろうとしないのはどうも川田ぼかったのでまず彼女に帰るよう促す。


「せ、先生の家に泊めて下さい。家には帰りたくないのです」


 川田は顔を上げ僕を睨み付ける。何がなんでも強い意思を感じられた。


「わかった。いいぞ」


「コラ、ロリコン斉藤!葵に何するつもりだ!葵!絶対だめダメだぞ!」


 伊藤が敏感に反応する。まるで姫を守るナイト様だ。恋心はないのか?それとも、兄弟愛?面白そうだから伊藤をからかって見る。僕は彼の耳元まで行き囁やいた。


「もちろん抱く」


「てめえ、ぶっ殺す」


「冗談だ。伊藤お前もウチ泊まれ」


 伊藤は間抜けな顔をする。川田はまだ何か思い詰めたままだ。こうして思いがけない二人の生徒を家に招待することになった。




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