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パソコンと先生

誤文報告ありがとうございます。


今後ともよろしくお願いします。

 リハビリの帰りに噂の談話室に入る。特に変わった様子もなく整然としていた。その場に留まり、スマホを片手に学年主任に連絡をする。

 川田の進路が変わる可能性を話しておかなくては。


「了解だ。川田のこと気にかけておく」


「よろしく、お願いします。あと病室でも資料が作れそうなので誰か僕の学校パソコンを病院まで届けてくれませんか?」


「お前な。怪我人だろ。こっちは任せて、治療に専念しろ!」


 怒られてしまった。資料作成は無理かな。とぼとぼ病室へ戻った。


 昼食は三浦さんが配膳する。食べ終わり一息ついたころ、再び彼女がやってきた。


「談話室は解決しました。他言無用でお願いします。今晩、二人揃って看護師長にこってり絞られます」


「どんな人達なの?」


 興味津々。彼女も噂話が好きなタイプだろ。


「答えられません。それより私は弥生先輩の態度が気になります。絶対に斉藤さんと何かありましたよね?」


 おぅ。こっちにトバッチリ来た。この追求の回避は厳しいな。どこまで話せる?


「えーと。やましいことはしてないです。弥生さんの休憩時間に少しだけ会話を交わしました。それだけです」


「愛の囁きがありましたか?」


「ま、まあそんな感じかな」


「どちらで?」


「ろ、廊下ですね」


「ふうん」


 明らかに信用してなそうな態度。頼むこれで引き下がってくれ。そして昨日の先客、バカヤロー。今日の弥生さんは100%警戒してくる。本日のHは無い。ま、まあ。今日はまったり会話するか。


「昨日の今。今日はチャンスです。談話室は100%空きます。バレないようにすればいいんです」


「いや、ダメだから」


 この子の感覚について行けん。

 三浦さんはやはり煽るだけ煽って病室を出て行った。一度出たのだか、慌てて戻り食器の回収をして行った。三浦さんの場合、仕事はオマケみたいに見える。



 昼食を終えると、ぽっかり空く時間になる。手持ち無沙汰だ。

 リハビリがてら病院内をうろつこうとしたタイミングで、村山先生がお見舞いに来てくれた。手には大量の荷物が持たれている。


「主任の指示で馳せ参じました。『暇そうだから持って行ってやれ』だそうです。重いんですけど」


 主任は電話ごしでは『任せろ』だと思ったんだけど、僕にやらせたほうが良いと判断したのだろう。


「ありがたく、使わせてもらうよ」


 村山先生より資料を貰いパソコンを開く。さてと川田の件だな。パチパチとキーボードを打つ。片手でも何とかなりそうだ。


「あのー」


「村山先生、ありがとう。帰っていいよ」


「ひどくないですか?」


「だから、ありがとう。帰っていいよ」


「私も構って下さいよ」


「えーと。イヤかも」


「ほんとヒドイ」


「冗談だ。どうした?」


 面倒だか村山先生の話を聞くことにする。


「生徒が私のこと先生と思ってくれないんですよ。何かお友達感で、舐められてる気がするんですけど」


 村山先生、正解。生徒はそう思っているよ。


「村山先生、先生は生徒達の気持ちを一番解る人なんです。奴らと同じ目線で話を聞いてやって下さい」


「斉藤先生。いつもそうやって誤魔化して来ますよね。もう誤魔化されません。」


「あのな、村山先生。1年目の新人がベテラン教師のように色々する事はないの。生徒とお友達で結構。今は仕事を覚えるの。教科を教える1年間のスケジュールを回せるようになること。経験を踏むこと。そうすれば生徒から信頼も得られます。来年は手伝いませんよ」


「教師って生徒と一緒に夕日に向かって走るじゃないですか?」


 おいおい、学園ドラマの視すぎ。


「まずは勉強を教える。これが教師です。第2段階で生活。勉強教えることも出来ないぺーぺーが生徒に馬鹿にされるのは当たり前です」


 僕の話を聞いた村山先生はシュンとしてしまった。きつく言い過ぎたかな。でもこれは紛れもない事実だ。


「せ、先生。例えばですよ。例えば。」


「何ですか?」


「例えば、その、生徒との会話の中で、恋愛相談とかあるんですよ。私もそんなにスキルないし、その......生徒から告白受けた場合どうすれば良いですか?」


 ぐお。僕と弥生の話か?僕は付き合っちゃている。その結果。彼女は転校。良いわけ無いよな。


「簡単です。学校を卒業したら考えて見る」


「簡単じゃないです。お互い好きで好きでたまらないんですよ」


「村山先生、まさか?」


 男子生徒と付き合ったりしてないよな?僕と同じにはなって欲しくない。ここは止めなくては。


「あ、あ、あ」


 村山先生は自分勝手に興奮して自分の発言に驚いている。どうやら告白はされているのであろう。


「男子生徒と付き合っているなら止めなさい。どうしても付き合うのなら教師を辞めなさい」


 くそ、正論だ。自分で言ってヘドが出る。本当は素直に応援したい。好き同士が職業を理由に別れなきゃならない、なんて悲し過ぎる。


「すいません」


 一言そういうと村山先生は静かに病室を去って行った。

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