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問題点を整理してみよう!その4

 野子が来る前に、とりあえず、部屋の中は片付けておいた。


「こちらの部屋は1人用なんですね。うちは、家族用なので2LDKになってます」


 キッチンの他には1部屋しかない俺の部屋を見て、野子はそう話した。


 JCを部屋に連れ込むなど、転生前の俺には生涯縁のないことだった。だが、今はそれどころじゃない。俺は予め準備しておいた色々な原稿を見せていった。


「資料の一種なんだけど、これ、どう思う?」


 まずは、例の原稿用紙にイラストをあれこれ描いてみた1枚を野子に見せてみた。


「猫と、猫耳の女子、それからへのへのもへじと、あとは……」


 特に何か感慨深いものはないようだ。


「じゃあ、これは?」


 次に、転生前、最初に就職したSEの会社での1日の業務の概要を思い出しながら書き出した業務日誌風の文章を見せてみた。


「……ああ、例の、設定用の異世界文字の文章ですね。所々私たちがこの世界で使っている日本語と似ていて、すごくリアリティーあると思います!」


 別の意味で感激はしてくれたが、俺が神様の原稿用紙に書いた文章でも読めてはいないようだ。


 次に見せたのは、昼間のうちに図書館で頑張ってこの時代の文字で書き写してきた、猫の飼い方の解説書の1ページと、図書館の司書に聞きながらたぶん売れている作家だろうと見当をつけて選んだ小説を適当に書き写した原稿を順番に見てもらった。


「猫の飼い方ですね、猫耳卓球部の資料ですか?」


 これも、特に何も心躍るものはないらしい。続いて他人の小説については、


「これは、杉田先生の作品ですか?純文学みたいですけど」


「いや、別の人の小説の一部なんだけど。内容的にはどう思う?」


「そうなんですね。綺麗な文章だと思いますけど、先生の作品のようないきなり心を掴まれるような感じまではしないですね」


 俺に気を遣っているわけではなさそうだ。表情が確かに違う。あんまり興味ないんだろうな、という空気がひしひし伝わってくる。


 最後に、野子たちに読ませた異世界部活シリーズの続きの話を1枚だけ、ただし、内容を英訳して原稿用紙の向きを変えて横書きで書いたものを見せた。これは、もちろん自力で英訳したものではなく、図書館行くついでに市役所に寄って、また情報提供サービスを使って上実に翻訳してもらったものだ。


 ちなみに、2回目以降のJTSの利用では、原則として最初に利用した際に対応した情報提供サービス士、俺の場合は上実だが、ができるだけそのまま担当するらしい。その方が、それまでのその人の質問と答えの内容が蓄積されて、より精度の高い情報提供ができるということらしい、仕組みは分からんが。

 

 話はそれたが、その英訳された俺の作品への感想は、ある程度予想通りとはいえ、それなりに衝撃的だった。野子は、渡した原稿用紙を横向きにして読み始め、


「あっ、続きがあったんですね!これ、本当にシリーズ化して出版して欲しいです!」


 と、明らかにテンションが変わって嬉しそうに俺の顔をのぞき込む。何となく、野子に尻尾が生えていてすげー勢いで左右に振ってるのが見える気がする。そのうち、目がウルウルしてきて、


「本当に、本当にお願いします!絶対すぐにデビューしてください!」


 と野子はエスカレートして、哀願調で訴え始めた。だが、しかし……。


(今、いきなり売り出すわけにいかんのだ。何せ限りある才能ギフトだからな。いくら哀願されたって今は無理なのだよ)


 心の中で、野子に答える俺。

 だが、それはともかく、これで知りたいことの大半は分かった。


 なかなか興奮の収まらない野子を何とかなだめて、俺の持つ社会人経験の全てを出し切るほどの丁寧なお礼を言って、その日は、それで野子にはお帰り願った。


(とにかく、まず、実験の結果を整理してみよう)


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