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問題点を整理してみよう!その3

 野子の部屋のチャイムを鳴らすと、野子ではなく、母親が出てきた。野子は丁度風呂に入っているらしい。

 

 俺は、夜にいきなり訪ねてきたことのお詫びを言ってから、野子に原稿を渡してもらうよう母親にお願いして封筒を手渡した。

 母親は、社交辞令なのか娘に変なものを渡したりしてないか確かめる意味なのかは分からないが、


「あら、私も読ませてもらってもいいかしら?」


 というので、俺は、もちろんです、と答えて一度部屋に戻って最初に野子に読んでもらった2話分の原稿を取って来て、それらをまとめて全部母親に預けた。


◇◇◇


 翌朝、7時半頃に、いきなり俺の部屋のチャイムが鳴った。もちろん野子だった。


「おはようございます。昨夜は、わざわざありがとうございました。すごく、すごく、面白かったです。本当にこれ、出版されてないんでしょうか?これが本になっていないなんて信じられません!アニメ化も待ちきれないです!」


 野子は、満面の笑みを浮かべてそう言った。


「ありがとう。どこか読めないところなかった?俺、字が汚いから」


「いいえ、漢字もだいたいルビが振ってありましたし、字が汚いなんてそんなことありませんよ。読み難かったところもありませんよ」


 なるほど、なるほど。


「あと、お母さんも読ませてもらったんですけど、あんまり面白くって、お母さんは今までライトノベルとかは読んだことなかったみたいですけど、先生の原稿を読んでからいきなり興味が出てしまったようで、今も、朝ご飯食べながら、私の持ってたラノベ読み始めてます。でも、そっちは、『何書いてあるんだか分かんないわ。全然違うのね。杉田さんの作品がものすごいのがお母さんにもよく分かるわ。どこか、知り合いに出版関係の人いなかったかしら。いたら紹介したいわ』と申しておりました」


 野子だけではなく他の人にも読めることは昨日コンビニで確かめたが、やはり間違いなさそうだ。原稿用紙の効果も見込んだ通り、超面白い名作としてどんな人間にも認識されるというところまではこれもまた間違いがないようだ。よしよし、計画は順調だ。


 俺は、頭の中で準備した通りに事が進んでいるのを確認しながらも、野子の笑顔を目の前にしてまた悶絶して床を転がり回りたい気持ちになった。


「気に入ってもらえたようでとっても嬉しいよ。あの、もし良かったら、学校から帰った後、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど」


 何とか理性を保ってさらに野子に予め準備していたお願いをする俺。


「本当ですか!?私にお手伝いできることがあるなら何でもします!」


「それは本当に助かるよ。ちょっと作品の構想を練りたいので、そのためのメモみたいのを見せたいんだ。それで、それがちゃんと読めるかどうかとか、どんな風に見えるかとか、普通の中学生の感想を聞きたいんだ」


「分かりました!今日は、4時半頃には家に戻って来れると思います。帰ってきたら、お声かけさせていただいていいですか?」


「うん。お願いします」


 俺は、そう言って、まだ色々話がしたそうに見える野子が遅刻しないよう、話を切り上げて彼女を学校に送り出した。


 ……そして、その日の夕方、野子は約束通り、俺の部屋を訪ねてくれた。

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