問題点を整理してみよう!その2
あれこれ考えた結果として、俺は、とりあえず、才能の使い方を確かめてみることにした。
結局のところ、あの原稿用紙で何が出来て何が出来ないのか分からないと、これからの使い道を本格的に考えようにも考えられない、と思ったからだ。
では、どうやって確かめるか……。普通に考えて野子しかないだろうなぁ。
貴重な才能だが、さすがに野子にはだいぶ世話にもなってる。しかも、あの親切心、真っ直ぐな俺と俺の作品への想い、人でなしのキモオタの俺にとっても、いや、キモオタ=人でなしではないので念ためキモオタ一般の名誉のために言っておくが、とにかく彼女の気持ちには応えたい気がする。
そこで俺は、まずは野子のために、『異世界部活シリーズ〜ネコ耳卓球娘の地区予選大会〜』の続きを改めて神様からの原稿用紙を使って書いてみることにした。いきなりたくさん書いて何かよく分からない理由で全部無駄、というのは悪夢なので、まずは本当にあの原稿用紙を使えば俺の書いた古代文字でも野子が読めるのかどうかを確かめたい。ついでに、野子以外の人間にも読めるのかどうかも分かればベストだな。
俺は、続きの1枚目だけ書いてから、近所のコンビニ行って夕飯の弁当など多少の買い物をするついでに、空いているタイミングを見計らってレジで、
「あっ、あとこの原稿が1枚お店の前に落ちてたんですけど、何かお客さんから原稿落としたとか、そういう話あります?」
とJDくらい?に見える女の店員に声をかけて俺の書いた原稿を手渡してみた。
その店員は、いきなり過ぎたせいかかえって怪訝そうな顔をすることもなく、その原稿を手に取ってパッと内容に目を通してくれる。
「さあ、特に何か私どもの方では心当たりはないですね。でも、何かちゃんとした作家さんの書いたものなんでしょうか。かなり面白そうなお話が書いてありますね」
いいぞいいぞ、いい感じの反応だよ。
「店員さんもそう思います?」
「ええ、ライトノベルでしょうか。猫耳卓球部、まだ同好会みたいですけど、設定も個人的には好きです」
完璧だ。完璧に読めてる。しかも、この店員、ラノベ好きか?神様のやつ、本当にいい感じの街に転生させてくれたな、やっぱ神だけのことはあるぜ。
上から目線こそが俺のアイデンティティー、俺は神をも超える男、とりあえずかなり上の方から神様にお褒めの言葉をくれてやった。
俺は、部屋に戻って続きを書き始めた。しばらくして5時くらになると、隣で野子が戻って来たような物音がする。
俺は、8時くらいまでには、昨日の原稿を元にして続きの3話分、原稿用紙で合計20枚分を書き上げた。かなり強引だが、そこで一応完結するように手直しも加えてな。普通に読めば、書いた張本人の俺自身が唐突感半端ねえ、と思わざるを得ないまとめ方だったが、内容が野子の感想にどの程度影響するのかも見てみたかったので、かえって丁度いい。さらに、所々、わざと殴り書きで俺自身でも読めないほど字を崩して書いてみたりした。これで、何が読めて何が読めないのか、かなりのことが分かるだろう。
俺は、原稿を封筒に入れて部屋を出た。
これで、残り708枚。