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無限の未来

「あった、絶対これだ!」


 俺はもう一度叫んで、その白い封筒を開けてみる。荷解きした時には、結構あちこちに説明書きのようなものが貼ってあったので、そんなものの1つだろうと思って特に気にしないでそのままにしておいた封筒だ。


 中には、1枚の紙が入っていて、神様の字でこう書かれていた。


「これがお前に渡す才能ギフトです。この原稿用紙に書いた作品はお前の願いをかなえてくれます。全部で1000枚ありますが、代わりはありませんので大切に使ってください。神様より」


(紙に神か……、なんちって)


 とは微塵も思わなかったよ、さすがにキモオタオヤジギャグまみれの俺でもその時くらいはな。


(やっぱりそうだった)


 ……俺は、神様からの手紙を読んで、しばらくの間、ただ呆然としていた。


 そして、時間と共に、少しずつ状況を理解し始めた。

 俺の願いって?


 そうか、俺の願いか。


 俺は、俺の作品を誰かに認めて欲しかった。誰かに賞賛してもらいたかった。とろうサイトに投稿を始めた一番最初から、ずっと、ずっとそう願い続けていたんだ。その願いが、作品を通して、野子をあんなふうに虜にしたんだ。そうか、そういうことか!


 おそらく、この原稿用紙で俺が作品を書けば、それは自動的・・・に超名作、大ベストセラー的な作品になって他人を魅了するんだ。


 この、インターネットやパソコンがないだけでほとんど2万5000年前と変わらないリアルしかなさそうな未来都市ニッポンで、唯一の魔法、チートなアイテム、それがこの原稿用紙なんだ。

 まだ、はっきり言い切れる訳じゃないが、たぶん、野子がこの原稿用紙に書いた文字だけはちゃんと読めて、昨日駅前で新しく買った原稿用に書いた文字が読めなかったのは、この神様からの原稿用紙の何らかの効果のせいだろう、いや、それしか考えられん!


 俺は、どのくらいの時間呆然としていたか分からなかったが、徐々に正気を取り戻す中で、再び興奮が腹の底から沸き起こって来るのを抑えられなくなった。


 すごい、すご過ぎないかこれ?何を書いてもいいのか?どんな文章でも売れまくるのか?文字さえ相手には読めなくてもいいんだったら万能過ぎだろ!俺、ついにこの西暦2万7025年の日本で大ベストセラー作家として世の中に羽ばたいて行くのか?


 すごい、すごい、すご過ぎる。畳の上をもだえながら転がり回る俺。


「あっ!」


 とその時、突然また、頭から氷水をかけられたようなショックが走った。


才能ギフト、原稿用紙、1000枚……」


 俺は飛び起き、もう一度原稿用紙の束を探して段ボール箱の中から抱え上げた。


(紙飛行機……)


 興奮と絶望感が、胸の真ん中の辺りで、無理矢理水と油を混ぜようとした時みたいに決して混ざり合うことなくグルグル激しく回り出す。


 息が止まりそうになるのを無理矢理我慢して3回深呼吸をして、それから俺は原稿用紙の束に飛びついた。


 ……何度も何度も数え直したので、数時間は過ぎたかもしれない。


「728枚……」


 何度数えても、728枚で間違いなかった。


 この魔法の原稿用紙、1枚1枚値段のつけられないほどの価値のある紙の束、俺の未来へと続くバージンロード(ママ)を紡ぐはずのパピルスを、俺は紙飛行機にして飛ばして川に流したのか、しかも250枚以上も……、どんだけ童心に溢れかえっているんだ俺の魂よ……。


(死ね、死ね、転生しろ俺)


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