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市役所へ行く【心その6】

 結局、上実にあれこれ尋ねてみても、この世界の歴史についてはあまりちゃんとしたことは分からないままだった。


 たぶん、超本格的に腰を据えて1つずつ質問していけばもうちょっとちゃんとした歴史が分かりそうだったが、とにかく情報提供サービス士というやつはほとんど機械的に一問一答で受け答えするようなので、そんな方法で2万5000年もあるこの間の歴史についてまともに納得できるレベルのことまで知ろうとしたら、丸1日かけても足りるのか分からない。いや、絶対に足りないと言い切れる。何せ、1万分の1に圧縮して訊いていっても、2年半かかるんだから。


 しかも、さすがの情報提供サービス士様も、所々分からないこともあるようで、


「そのご質問につきましては、ご回答するための基となる情報が欠けております」


 と、たまにではあるが、上実でも答えが出てこないことがあった。魔術か何かでない限りそりゃそうだろう、何しろ2万5000年だ、いろいろ頭おかし過ぎるだろう……。


 で、残り25分くらいになって歴史についての質問は断念したわけだが、その後気を取り直して少し短くなってしまった残り時間で訊いてみたこの世界の仕組みについての情報に関しては、それなりに収穫があった。


 まず、一昨日、野子から教えてもらった話については大筋で正しいようだった。この世界の基本的な仕組み自体は、ネット系がないだけで、俺のいた転生前の世界、どうも2万5000年前の日本らしいが、とだいたい一緒のようだった。もちろん、おおよそのところだけしか訊けていないので、これからまたよく分からないことに出くわすかもしれない。しかしそれでも、


(これなら、とりあえずバイトでもしながら食いつないで行けば、生きるだけなら何とかなりそうだ。少なくとも、いきなりトラップに引っかかって即死したり、モンスターに頭から食べられてゲームオーバーとかになる世界とはほど遠い日常になりそうだ)


 と思えるくらいには安心できた。


 ただ、野子の情報のうちで少し間違っていたところもあった。主に、本屋関係のことだ。

 野子の話では、この世界の日本では、ラノベやマンガなどのエンタメ系出版物については丸山文庫が8割くらいのシェアを持っていて、それよりはだいぶ小さな規模だが、幸誕社、散英社、中学館といった会社がこれに続いている、とのことだった。しかし、実際には、


「丸山文庫のシェアは、全ての出版物を合わせた全体としてのシェアが約80.5%です。杉田様がエンタメ系とおっしゃった分野ですと、丸山文庫のシェアは、約92.5%となります」


「また、幸誕社、散英社という会社は、すでにありません。丸山文庫に吸収合併されており、会社名ではなく、丸山文庫の持っているブランド名として、『幸誕社』『散英社』の名前が残っております。中学館については、会社はありますが、丸山文庫が100%出資している完全子会社となっており、役員以上は全て丸山文庫本社からの出向となります」


 ひどいな、丸山文庫、文芸の多様性もクソもあったもんじゃない。なぜか分からんが無性に腹が立ってきた。が、時間がない、とりあえず今日は状況を把握するに留めよう。八つ当たりのような気もするしな。


(……そうだ、文字だ、当面の緊急課題は文字の謎だった)


 文字についても、短時間の割に、上実のおかげでかなり状況が分かった。



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