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市役所へ行く【心その2】

 ユニークと言っても、情報提供サービスの仕組みは表面的には単純で使い方も簡単だ。何をするかというと、こうだ。


 何か元いた世界でいえばネットで調べたいようなことがあった時、情報提供サービス士という国家資格を持ったやつが各自治体の市役所などにいて、そいつに口頭で直接知りたいことを尋ねる。尋ね方はネットで検索するのと同じで、知りたい内容をできるだけ単語か、それに近い短めの文章で情報提供サービス士に質問するだけだ。すると、その質問の答え、検索結果といった方がイメージとしてはぴったり来るが、とにかくその結果を情報提供サービス士がやはり口頭で答える、というものだ。


 ただ、信じられないのは、野子の話によれば情報提供サービス士というやつは、その答えを、瞬時、あるいは長くても10数秒程度で、何も見ずに(・・・・・)答えるのだ!

 もちろん、その間、何か機器を操作してそこで出てきた内容を答えている、とかではない。完全に、自力のみで、頭の中に入っている情報だけをもとに全ての質問に答えているらしい。


(そんなことが人間にできるのか? しかも、公共のサービスということは、かなりの人数が必要なはずだ。そんな特殊能力を持った人間がいるというだけでも信じられないのに、そんな希少な人材を大量にそろえられるわけない。やはり魔法でもあるのか、この異世界は?)


 野子も、どうしてそんなことができるのか、仕組み自体はよく知らないようだった。何でも、心理学がどうとか発達がどうとか言っていたが……。発達って、発達障害の発達か?アスペルガーとかのことか?意味が分からない。もしそれだと病気か何かの障がいのことになってしまうので、そんな単語が国家的インフラに関係するとも思えない。

 結局なぜそのようなことができるのかという仕組みについては全く想像もできなかったが、ただ、初対面の中学生にそれ以上あれこれ詰問するようなことはさすがにできなかったので、その点はスルーして今日に至る、というわけだ。


「ご利用ありがとうございます。初めてのご利用とのことですので、規則にあります通り、ご質問を開始される前に、簡単にご利用方法と手数料についてご説明させていただきます」


 上実かみのみが流れるように説明を始めた。


 内容的には、野子から聞いていた通りだった。手数料、要するに役所に納める料金は時間制になっていて、5分単位で100マネの料金が発生する。質問の数には特に制限はないが、利用者が質問を始め、その答えが返ってきて、利用者が『これで結構です』といった合図を口にするまでの合計時間で料金が決まる。5分で終われば100マネで済むし、ネットサーフィン的にだらだらと1時間質問を続ければ1200マネというそれなりの金額になるわけだ。もちろん、その料金だけでは人件費は賄えだろうから、足りない分は税金で補填しているのだろうが……。


 5分は短いようだが、ネットでの検索と同じで、あらかじめ質問したいことを単語レベルで整理しておけば、そんな短時間でも3つくらいは検索できそうだ。そう考えると、1件あたり30マネくらい、悪くはない料金体系だ。


「ところで、先におうかがいいたしますが……」


 説明を終えた後、上実の方から俺に尋ねた。


「先ほどご記入いただいた利用申込書ですが、お名前とご住所の欄に記載されている文字については、どのように理解させていただければよろしいでしょうか?」


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