ガン無視
この作品は牧田紗矢乃さん主催、第四回・文章×絵企画の投稿作品です。
この作品は、Mickさんのイラストを元に執筆しました。この場を借りて、御礼申し上げます。
Mickさん:https://509.mitemin.net/
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」
チーン、と鈴を鳴らす。
「ねぇ、いつまでも無視できるとは思ってないよね?」
とある寺の住職である私は、勤行をしている。
その後ろで、いつまでもちょこまかと動いている、白い衣、頭には輪、さらに羽が生えた存在。
そう、天使だ。
何と言えばいいのか、唐突に守護天使なる存在が取り憑いた。
私は仏の道を歩む者として、どうしたものかと思案し続けている。
ただ、結論は出ていない。
そのため、結論が出るまではともかく無視を決め込むこととした。
これも修行と考えてだ。
師匠がいうには、人の心は揺れ動くとある。
動くからこそ、その動きを見極めなければならぬとも。
私が受け継いだ教えの一つだ。
何事も柳のごとく、そして岩のごとく。
ただ、ジッと見定める。
天使がどうしたこうしたといったところで、私は動かない。
今日も、ただ一日を過ごしていくだけだ。
ともかく、誰にも見えていないこの天使をどうしようか。
目下のところの、最大の問題となっている。
私は、しかし、再び鈴を鳴らした。