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悪魔の樹(あくまのき)  作者: 一喜一楽
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(1-02)悪魔の樹

◇悪魔の樹


 翌日、昨日と同様に母に叩き起こされた。明日は自分で起きないと、なんか不味そう。両親の出勤を見送って真弓が来るのを待っている間、自分のSキューブにソフトをインストールして庭で、稼働させてみた。庭は土で固めて有るけど、Sキューブに取っては、小さな小石もバランスを崩す要因になる。ここで上手く動作すれば、バランスも問題無い。残念ながら体操会場より狭いので、所々にブレイクを挿入し停止させて確認した。ブーツを履いた状態でも、大会と同じ動作が出来ていることが確認出来ブーツを履いた状態のバランスも問題無かった。大会ではラインオーバーした技も、性能が上がっているので問題なく対処できた。追加で入れた機能は、樹が起動操作しなくても、聴覚センサで判断して動作させることだ。これで自分が何もしなくてもSキューブを配置してもらえば自動で演技出来る。正直、想定通りの動作してほっとしたし、このSキューブの追加機能の有効性を再認識していた。細かい所は、まだ有るがそう手間がかかる程でも無い。


 取り敢えずこちらはクリアだろう。一応、午後にでも、何処かで一通り動作させて見たいけど、良い場所が思いつかない。未発表の製品だから人前には出す訳に行かないし。真弓にでも聞いてみよう。


 真弓が午前一〇時位に来た。非常に眠そうである。


「真弓ちゃん、何時までソフト作ってたの?」


「うーんと、夜の一〇時位まで、ママに怒られちゃったから止めたの。あともう少しなんだけど」


「じゃあ、この後確認してここで仕上げちゃうか?」


「うんそうする」


 真弓からソースを受け取り、マックスの動作モジュールを除外して真弓が持ってきたバク転のモジュールを組み込んで、一旦エミュレータで確認する。全体的に綺麗に仕上がっており、CC社で披露したのよりも、女の子っぽい仕上がりになっている。やっぱりインパクトは有るけどマックスはちょっとね。


「どこが、もうちょっとなの?」


「バク転が、まだ私のに合わないの。片足を蹴り上げる所。でも大した事ないし、未だ私の踊りも変わるから」


「そうだね。この後庭で動作確認して問題無ければこのままFIXで良いかな? ただ一回は、真弓ちゃんと一緒にビデオ撮って合わせ込みした方が良いよね」


「うん、最終的な合わせ込みは来週の木曜日位が良いかな。それ迄はブーツに慣れないといけないし」


「じゃあそうしようか。今日からSキューブ持ち帰った方が良さそうだね。あとで手伝うよ」


「うん」


「庭に行こうか」


 庭でノートPCから音楽を流して、単体でのSキューブの動作がおかしく無いか確認した。腕立ての所は真弓が一緒に踊ってないので土の上での動作だったが問題無かった。真弓が、一緒に練習すると言って、Sキューブと踊り始めた。ブーツに慣れるためにブーツを履いて家まで来たらしい。踊っているのを見ると確かに真弓の踊りがふらついたりする。ブーツの重さと踵の高さに未だ慣れていないからだろう。ここはなんとか頑張って欲しい。


 真弓の庭での合わせ練習を見て、ずれている所の指摘やアドバイスをしてお昼前に練習を終わらせた。それよりも、真弓ちゃん有難う。今日はスパッツ穿いてないんだね。僕はこのシーンを一生脳内保存しておくよ。


「僕の方は、午後になったら、何処かで全体を通したのを確認したいんだけど、人が居ない所知らない?」


「うーん無いんじゃ無いかな? TD社の人に確認したら?」


「そっかそうだね、丁度話したい事あったんだ」


 午後だと何時から仕事が始まってるか判らないので昼食を食べる前にTD社に連絡をした。今回は直接会話と後ほどメールを送る予定。名刺に書いてあった番号にTELして、木蔦さんと会話する。


 先ずは状況報告。僕と真弓の両方の移植と動作確認が出来たこと。真弓の方は、ブーツでのダンスがまだ慣れていないため最終的なチューニングはまだ必要で有ることを伝えた。


 次に、こちらからの相談。僕の方の動作確認の為、どこか良い場所を教えて欲しいと伝えたら。TD社の場所を提供してくれると言ってくれた。ノートPCだけ有れば本体はTD社に有るのを使えば良いとのこと、明日迎えに来てくれるって言ってくれたので全て甘えることにした。明日は真弓も一緒に行って、ちゃんとしたフロアで練習できる様にも依頼した。真弓の方もとても有難がっていた。


 次に提案。デモの演舞をもう一つ実施したい事を提案した。一回目の演舞は、今の挿入歌で、二回目はエンディングテーマでただし、インストゥルメンタルのカラオケで。二回目の演舞で使用する為、Sキューブをもう一体借りたいと伝えた。それと、その一体は、もう一人のヒロインの衣装とボイスデータも要求した。


 木蔦さんから具体的に何をするのか聞かれたので今回の新製品の新機能を全てデモしようと考えていて、二体でカラオケを歌わせること、軽く躍らせることを伝えた。


 木蔦さんの返事は、取り敢えず保留。自分の一存では判断出来ないので、明日、来社時に回答するとのこと。今のTEL内容の事をメールに纏めて、木蔦さんと一応面識のある泡吹さんに送信した所で一息ついた。







 樹との電話が終わった木蔦は、開発部の上司の犬槇(いぬまき)にTELの事を聞かれていた。


「今のは、例の開発者の樹くんかい? 何かトラブルでも有ったか?」


「追加でもう一つ演技を見せたいと言ってくれまして。俺個人的には大歓迎なんですが……部長とかの許可取らないと、当日のスケジュール変更もしないといけませんしね」


「良いよ、許可するよ。樹くんが演技追加でやってくれるんだろ。どうせマージンの範囲で収まるんだろうし、俺の説明時間短縮しても良いしな」


「犬槇さんに許可する権限無いでしょ」


「お前だって、権限無いのに樹くん連れて来ただろ。ファインプレーだったけどな。まあその件は良いや。部長には話くらい俺が付けてやるよ。話し付かなくてもダマでやっても結果見れば文句言われないさ。営業の泡吹には伝えておけよ」


「はい判りました。泡吹には連絡しますけど。ずいぶん買ってますね樹くんの事」


「月曜日に話を聞いて、調べたよ樹くんの事はね」


「何か、判ったんですか?」


「樹くんはさ、既にウィザード級を超えてるよそれも圧倒的にね。その子が、うちのSキューブを制御してデモしてくれるんだから断る理由はないさ、変に気が変わって他のメーカーに行って専属にでもなったら、うちはこの事業撤退するはめになる位怖い存在だぞ」


「そこまでなんですか? 樹くんは」


「お前……」


 木蔦と犬槇の会話している所に、TD社のもう一人の化物が現れ、会話に混ざって来た。


「どうしたんですか、犬槇さん」


「おっ、(さくら)ちゃん。木蔦にさ、少し説教しようと思ってね」


「〝ちゃん〟は止めてください、恥ずかしいですから」


「未だ若いんだから良いだろ」


「そう言うのは、微妙に気になる年頃なんで……それより説教は私も参加させて下さい、結構木蔦くん危機意識足りないのでこのままだと、リストラされますよ」


「……勘弁して下さいよ」


「まあ、樹くんを引き込めたのは、大手柄だけどな、それとは別だ」


「ああ、その話ですか」


「木蔦がさ、樹くんの凄さを認識してないんだよ、ほんと近くで見て何も感じて無いってのはどう言う事かってね」


「凄いのは、判りますよ」


「どういう風に凄いのか言ってみろ」


「えーっと、Sキューブ制御がとても上手い事ですね」


「桜ちゃん。ダメだろこいつ」


「そうね、ダメね。まったく話にならないわ」


「これ見て何か言ってみろ」


 そう言って犬槇が一つの動画を再生した。


「三年前の、CC社の大会の五〇メートル走だ」


 一体のSキューブが、他者を寄せ付けず、ぶっちぎりで駆け抜けた。タイム9秒85


「凄い早いですね、この制御が樹くんですか?」


「それだけかい、桜ちゃん説明してあげて」


「木蔦くん、貴方も、会社入ってから研修で五〇メートル走、プログラムしたこと有るでしょ記録はどうだったの?」


「えっと、一八秒位でしたね確か」


「結構早いなお前」


「そうでしょ、その時は褒められましたよ」


「で、木蔦くんは、樹くんの記録観てそれだけなの?」


「えっと、ウソでしょこの記録、あり得ない」


「そうよ普通は無理ね。この記録を出すのは、私も今でも出せるとは思えないわ。最新型で一〇秒台が出せるかどうかね。妹の方がこう言うの得意だけど妹でも難しいでしょうね」


「俺もだ、一〇秒台はなんとかなりそうだがな、それもこの映像見てから、一〇秒台出せそうだって判ったんだぞ。見て無ければ、未だに一四秒台だろうな」


「犬槇さん達、ウィザード級ですよね。それでも無理なんですか?」


「資格試験が有るわけじゃないから自称みたいなもんだけどなウィザード級は。Sキューブ制御の熟練者って意味ではウィザード級だと思ってるよ。桜ちゃんは女だからウィッチ級だけどな。それでも9秒台を出すのは、無理だな。どうやったかは予測ついてるが俺には出来ない」


「私にも無理ね。すべての可動部をマニュアルプログラミングで最適化させるのはね」


「気付いたのか、桜ちゃん」


「ええ」


「今年の、CC社の体操競技の映像では判らなかったわ。昨年の映像見てもまだ判らなかったけど、この映像で樹くんが何したかは判ったわ」


「俺もそうだ」


「木蔦! 樹くんが作った昨年の体操の時の映像だ、これ見てなんか言え!」


 体操競技で、樹くんのSキューブが演技をしているが、ラインオーバーや、回転不足が発生していた。


「プログラミングミスですかね。回転不足してますし」


「犬槇さん、木蔦は営業に行かせましょう。これで樹くんの凄さが判らないなんて開発として使えないですよ」


「まあ、木蔦が居なくなると樹くんと、開発部署として繋がりがどうなるか判らなくなるから今はペンディングだ。木蔦の代わりが誰か出来れば即時だけどな。樹くんは、結構巨乳好きらしいから、開発部署として桜ちゃんに期待するよ」


「教えて下さい犬槇さん、この失敗演技のどこが凄いんですか?」


「じゃあ聞くけど、体操競技で横回転不足とかで着地失敗するとどうなる?」


「えっと、次の演技で方向を間違えます」


「そうだな、それで?」


「あっ回転不足で着地の向きが乱れてるのに、方向を誤ってない。どうやったらこんな事出来るんだ? 電子コンパスか? いやそれだったら、他の演技者だって同じはず。ジャイロはそもそもこんな激しい動きじゃ追従できないし」


「少しは、判って来たわね。会場はスピーカーやら磁気を発生するのが沢山あるから電子コンパス使えないわ。それに体操競技みたいな激しい動きで、Sキューブが完全停止していない状態では瞬時に正しい方向は拾えないのよ。だから他の演技者も着地失敗すると次の演技で方向誤ったりするのよね」


「流石に四大大会の決勝出場者はそんなヘマしないようにしてるがな。どういう事か判るか?」


「えっと、大体の選手は、枠の更に内側で演技します。本来のSキューブの体操の競技エリアは四メートル四方ですが、実際は五メートル四方です。自分の位置を把握出来ないSキューブ用に、五〇センチ枠を広げているんです。今ではVC社やPO社は視覚センサーで認識出来るでしょうが、うちや、CC社は視覚認識が搭載されていません。それで演技開始位置を把握し易い様に4m四方の角と中心にSキューブ用にマークを付けてあります」


「まあそこ迄は、Sキューブ大会が始まった頃からの常識だな。その先は?」


「演技するSキューブは、基本的に縦回転の演技をします。縦回転の場合なら、多少回転不足でも、方向を誤らないし内側で演技してれば、外枠を外れ難いからです。横回転の技は最後の大技にするのが一般的ですね」


「そうね、それで樹くんの演技は、演技途中の大技で横回転を入れて、回転不足起こしているわ。でも方向を誤らない」


 どう言う事だ? どうやったら出来る? でもこれが犬槇さん達が気付いて俺が気付いていない事なんだろう。不可能じゃ無いのか? 実際樹くんは間違えずに出来ている……可能にしている制御は何だ?


「これが今年の映像ね、同じ体操競技よ。これ見て、なんか言いなさいよ」


 これは……この前僕が間近で見て凄い演技に圧倒されて、その後すぐに樹くんに直撃しに行ったんだ。


「こっちは、ラインオーバーが多くて、回転不足は無い。ラインオーバーすると、そこを起点に演技が続くから、次の着地は手前になるとか、横方向に演技する場合は、ラインを超えたまま演技してしまうはず」

「そうだよ、だんだん判ってきたじゃん」


「木蔦が言った通りなのに、ラインオーバーして着地した後、一歩前に出て演技初めてるんだよこれ」


「木蔦くん、判る?」


「えーっと、最初からラインオーバーする演技だった?」


「そうね、その通りだわ」


「なんで、こんな制御が可能なら、ラインオーバーしないプログラム作れたんじゃないですか、樹くんは」


「昨年の映像と今年を比較すると判るわよ」


 動画を、2枚並べて較べてみる。


「ん? 昨年はシンプルなレオタード、今年はうちのアニメの衣装。衣装着ているのに、回転不足していない。じゃあなんで昨年は回転不足だったんだ? なにかミスったのか? ジャンプ力が足りない理由はなんだ、でも今年はちゃんと出来てる…」


「ちょっと難しかったようだな。たぶん昨年は、ミスったんだよ。どの開発者も同じで、床の反発力を計算出来ていないんだ。床によって、反発力が違うからちゃんとプログラムしても、演技場所が変わると回転オーバーだったり、不足だったりするんだよ。それを今回修正して来てるんだがな……」


「今年の樹くんは、この場所での演技は練習して無いのよ。だから、普通は床の反発力は、合わせ込めないの、判る木蔦くん。犬槇さんは判ってるようだけどね」


「じゃあ、どうやってこんな完璧な演技をしたんですか?」


「演技中に合わせこんだのさ、樹くんは」


「そんな事が出来るんですか?」


「出来るんでしょうね、実際出来てるしね、何回合わせこんだのかは判らないわ、でも、一回目の合わせ込みは、演技の開始合図直後よ、ここね、一回ジャンプして演技始めたでしょ、これで先ず合わせて後は、ダンスしてる時に調整したんだと思うわ」


「樹くんの凄さが判って来たか、木蔦」


「はい、判って来ました」


「まだ、有るのよね」


「ああ、有るな」


「まだ有るんですか?」


「これだけ凄い事が出来る樹くんは、何故今年はラインオーバーしているのか? でしょ」


「そうだな。桜ちゃんは凄いな」


「えっと、今年はラインオーバーせざるを得なかったのでは無いでしょうか?」


「ほう、どうしてそう思った」


「今年のSキューブは、回転演技には不向きな衣装を着ています。さらにボディーを改造して重くかつバランスを悪くしています。昨年の演技でさえ、たぶん樹くんの持っている旧型のSキューブでは、性能限界に近かったと思います。とすると、それを補う為に助走距離とスピードが必要になって、ラインオーバーしたのでは無いでしょうか?」


「正解ね。考えれば出来るじゃない木蔦くん」


「そもそも、普通は4m四方で演技させるのに、樹くんはきっちり5m四方で演技している。つまり、昨年も今年も5m四方無ければ出来なかった演技なんだよ。樹くんの持っている旧型は、樹くんが5m四方を使って更に限界性能出しきってあの演技なんだと思う。演技の完成度を優先してラインオーバーを許容したんだろうな」


「凄いな、性能限界を出し切る制御って」


「そうさ、カタログスペックを気にするんだったら樹くんみたいじゃ無いと意味無いんだよ。別な言い方すれば、樹くんに性能が足りないって言われたら開発見直しが必要だな」


「ひとつ答えが出てないが、どうやって横回転の着地失敗の時、方向を修正してるのかは、おれも推測迄だ。内部時計を使ったかなと思っている。桜ちゃんは?」


「私は、着地のタイミングの足の圧力センサと、身体の加速度センサ当たりじゃ無いかと思ってるわ、でも答えが判っても、私には出来そうも無いわね」


「俺もだ。ほんとどんな頭してんだよ樹くんはよ」


「もの凄いですね樹くんは、だから犬槇さんが言うように、ウィザード級を超えてるんですね」


「そうだな、樹くんを表現するなら、デーモン級って所だろうな」


「悪魔クラスですか? なんか格好良いですね」


「木蔦くん、そう言う意味でも合ってるけど、犬槇さんは違う意味で言ってるわよ」


「ギリシャ語だと発音はダイモーンになるけど、ギリシャ神話だと、人間と神々の中間の存在って事になってる。俺たちみたいな、普通の人たちから見ると魔法を使っているようにSキューブを制御しているウィザードより上位で、既に人間を超えて神の領域に入ってるって意味だよ。まあ、そんな長い意味じゃなくて悪魔でも良いけどな。〝悪魔(あくま)(いつき)〟って呼び名も良さそうだし、でも〝あくまのき〟の方がシンプルで良い感じだな、本来ならデーモンズ・ツリーだろうが、デーモン・ツリーかな、デーモン・ツリーなら呼びやすいし。それ以上の存在になったら魔王クラスだろうな」


 自分で言っていてこっ恥ずかしいけど、俺も未だ中二病が抜けて無いな〝悪魔の樹〟のネーミングなんてモロ中二病だろう。まあ〝魔王〟と付けないだけまだまともか……いや、大して変わらんな。


「そうね、良い感じねデーモン・ツリーって呼び名は、あんまり本名で大会とか出るのもね、まだ小学生で名前売れすぎても困るんじゃないかな。まあ本人次第だけど……」


「製品発表デモの時、プログラム開発者名を〝悪魔の樹〟デーモン・ツリーで呼ぶようにしておくか、樹くんに相談する必要あるけどな。まあ判る奴は判るだろう」


「そうよね。いきなりその名で呼んで気分悪くされて、他のメーカーに鞍替えされたらアウトだわ、うちの事業部」


「と、ここまでは、過去の映像を観て俺達でも判るわけだ。当然他のメーカーも判っているだろう。運良く、木蔦と泡吹のファインプレーで樹くんにうちの製品を使って貰えるんだが、これが他社だったらどうなると思う? ぞっとするぞ」


「そうよね、対応を誤ってCC社に行かれたら、うちだけじゃ無くVC社、PO社も事業撤退に成り兼ねないわ」


「まだ商用利用の契約は出来て無いが、前向きに検討して貰えるとして契約出来れば一年は縛れる。ただし出来るのは他メーカーの製品で大会に出るのと、他メーカーに開発したソフトを販売する位だぞ。VC社、PO社からSキューブを貰うのを禁止することは出来ないからな」


「うちとしては、継続して使って貰うように、機能をバージョンアップさせたり、開発環境を使いやすくしていったりしか出来ないわ。でも開発環境はとても重要よ使いにくいならまだ良いけど使いたい機能が無いだと致命的だからね」


「この辺は、全体ミーティングで議題にして意識を合わせておこう」


「ところで、犬槇さん、木蔦くんへの説教だけですか?」


「いやそういう訳じゃ…木蔦、樹くんはデモの演舞追加だけが用事だったのか?」


「いえ、体操の演舞プログタムの移植が出来たので、明日、実機確認で社内の場所を提供することに成りました」


「なぜそれを早く言わない」


「……すいません」


「時間は?」


「午前一〇時から二時間、場所は予約しました」


「はあっ? なんで一日中抑えておかないんだ?」


「他の部署が予約していました」


「判った後で教えろ、俺から全部こっちで使わせて貰うように連絡するから。あと、Sキューブ開発部は全員見学しろ、営業にも時間がある奴は見に来させろ。昼食の手配は?」


「えっと。見学は後ほどメール飛ばします。昼食は、営業に依頼します」


「見学させる理由はな、樹くんのデモ見れば絶対に開発部と営業の士気が上がるはずだからだ。それと桜ちゃん」


「ん、なんですか?」


「明日は、ミニスカで来てね。樹くんが来るからさ。あと女子の開発部員全員ね。いつもみたいにクマ作ってないで綺麗に化粧もしておいてくれるともっと良いな」


「……犬槇さん、小学生を誘惑しろと?」


「違うよ、綺麗なお姉さんが一杯いて、TD社は良い会社だなあ、また来たいなあって思って貰うんだよ。クマ作ってる顔見られたらTD社はブラックだって思われるぞ」


「取り敢えずは善処する様にします」


「昼も大分過ぎちまったな、木蔦、教育手数料として今度、酒奢れ」


「まあ良いですよ判りました」


 樹がTELとメールを送信し終わった所で丁度、お昼の時間だった。真弓が自分の家で作ってくれると言ったので甘えることに、この辺はずっと以前からなので、いつもの事であった。ついでに、真弓のSキューブを抱えて真弓の家に行った。Sキューブ本体は七kg程度であるが、梱包したりすると全部で一〇kgを超えるので、自分でも運ぶのは結構ヘビーであったが真弓に運ばせる訳には行かない。男の子の意地である。汗ダラダラでなんとか運んで、真弓の作る料理を食べてその日は解散した。


 自宅に戻った、樹は、明日TD社へ行くまでの間に、追加演舞を途中まで作り上げて明日軽くデモ出来るように仕上げようと思った。後は、ちょっとお茶目な機能を入れて驚かせて見よう。




よろしくお願いします。

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