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悪魔の樹(あくまのき)  作者: 一喜一楽
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(0-02)もしかして浦島太郎?2

◇もしかして浦島太郎?2


 神がデュゥーに念話をしていた時に、梛にも同様に神から話が伝えられていた。


『梛よ、こちらの世界では(いつき)と名乗っていたのだったな』


「誰だ? なんで俺の名前知ってるんだ?」


『デュゥーの世界の神じゃ』


「神? そっか……やっぱり異世界には居たんだ……だったら俺の本名位は判るのか……」


『悪いが、元の世界にお主を戻すぞ』


「デュゥーは?」


『一緒に戻す訳にはいかんのは判っておるじゃろ、お主達はあの世界では殺される寸前だったんじゃからな。だからお主だけ戻す』


「何故俺だけ戻す必要が有るんですか? 二人で地球に居ても……」


『お主も薄々は判っているんじゃ無いのか? 戻さなければいけない理由が』


「じゃあ、やっぱり浦島太郎ですか?俺は、俺達は……未来に戻ってしまったんですか?」


『それじゃったら、何もせんよ。逆じゃ』


「……じゃあ、さっきの横浜はもしかして過去の横浜?」


『そうじゃ……お主に限る訳では無いが過去を変えられるのは困るんじゃ……神でも面倒なんじゃよ、大規模になれば完全に世界を分岐しなければならんしな、そなた達の言葉にすればパラレルワールドの生成になるか……今、お主を戻せば被害は殆ど無いからの』


「そうですか……」


 以前聞いていた通りなんだな……未来から過去に行くとパラレルワールドの生成が起こるのは……。


『まったく、妾達の世界を強引に渡るとは思っておらんかったわ……』


「申し訳ありません、逃げる事に夢中で何も出来ませんでした。そもそも時空転移するとも思ってませんでしたし……」


『既に終わった事はもう良い。悪いが元の世界の少し別な場所に移すぞ。同じ場所ではお主も殺されるであろうからな。それと今の妾との事も、デュゥーと出会っていた記憶も消させて貰うがな……記憶が有る事で又同じ時間に転移されると困るしな』


「俺の事はそれで良いですが、デュゥーは?」


『デュゥーには何もせんよ。お主に関しても一生記憶を消す訳では無い、そのうち何かの拍子で思いだすじゃろう(しばら)く時間はかかるじゃろうがな。その時になったらデュゥーを迎えに行けば良い、既にデュゥーにも伝えてあるし、お主達を助けてくれた男達ならばデュゥーを保護してくれるであろう』


「……判りました。デュゥーが無事に生きて行けるならば」


『ふっ……お主は今は人として生を楽しんで居るんじゃ、大して長くない人生じゃろうが十分楽しめ』


「なっ! それは!?」


『いつか会える時を待っておるぞ、またな』


「何ですか! それは!?」


 梛(樹)の記憶は消され元の異世界に戻された。





 同時刻の地球では男達とデュゥーは組織の本部に転移した。デュゥーは飲み物を出され、暫く待たされた後、別な部屋に案内された。部屋には貫禄がある一人の高齢の男がソファーに座って待って居た。


「まあ掛けなさい」


 素直に目の前に腰掛ける。目の前の老人からは物凄いプレッシャーを感じた。


「この組織の長をやっている権萃(ごんずい)じゃ。宜しくなデュゥーさんや」


「はっ、はい、宜しくお願いします。デュゥーと申します」


「まぁ、そんなに緊張もせんで良いよ」


 と言われても緊張してしまうのは仕方無い。長と言う存在というからには長老の事だと思う、元の世界でも私の方が上位の種族とは言え未だ若い私にとってエルフの長老には頭が上がらなかった。それほど長老は威厳も有ったし考えも正論ばかりだった。


「少し話を聞かせてくれるか?」


「はい」


「そなたはエルフになるのかのう?」


「えっと……向こうでは〝森人〟と、正確には〝森人の賢者〟言われています。向こうの世界で梛さんに聞きましたが、こちらの言葉ではハイエルフになると思います」


「やはりハイエルフか……こちらから異世界に行く事は有っても、異世界の人がこの世界に来るのは事例は有るのかも知れんが記録が無くての、ワシ達にとっては初めての事じゃ。デュゥーさんを見るとワシが異世界に行ってた時を思い出すな……」


「権萃さんも、異世界に行った事が有るんですか?」


「ああ、有るぞ大分昔じゃがな……まあワシの事は追々と聞かせる事にしようか、まずこの組織について説明しておこうかの」


「はい、お願いします」


「多少は鎌柄(かまつか)無憂(むゆう)に聞いているだうろうが、ワシも含めて組織に所属しているもの全員、異世界転移者なんじゃ。半数は、この世界で言う所の浦島太郎じゃな。同じ時代に戻って来れなくて、戻って来たこの世界に居場所が無くなった者達じゃ。残りは後から協力者になってくれた者達じゃ、金銭的な面、拠点の確保で協力して貰っている所じゃな。他にも色々あるがまあそれは追々と教えて行こうかの」


「有難う御座います。それで教えて欲しいのですが、神様が言っていた世界分岐とはどう言う事なんですか? 良く判らないんですが、何故、梛様が元の私が居た世界に戻されたのかも含めてお願いします」


「それはだな……ワシも今迄そんな事を考える事も無かったんじゃがの……」


 そう言い権萃さんが話し始めた。


「梛と言った男がいつ生まれたのか判らんが、今ワシ達がいるこの時間軸に来る事が出来た……梛と言う男にとっては、今この時間は過去になるようじゃ。そうなると梛と言う男が居る未来が確定している事になる訳じゃな。未来は決まっていないし随時変わっている筈では有るんじゃが、どんなにこの先歴史が変わる事になっても梛と言う男が存在する未来だけは変わらずに有る筈じゃ、でなければデュゥーさんが此処に存在する事が出来なくなる。判るか?」


 えっと、梛様が未来に居ないと、私の居た世界に来れなくなるから、未来には必ず梛様が生まれている必要が有るって事よね。


「……はい」


「梛に限った話では無いのだが、未来から過去に行って何かした場合には、その時点から歴史が変わる。変わってない歴史の流れで育った人達は、何処で変わった歴史を認識すると思う?」


「えっと……判りません」


「ワシも経験が無いので推測になるんじゃが、多分、神からの介入によって記憶が改竄されるんじゃと思う」


「神様によってですか?」


「そうじゃな……もう一つ極端な例を挙げようかの、そちらの方が判り易いかもしれんの」


「お願いします」


「大体七〇〇年程前にこの日本を分ける程の戦が有った。東軍と西軍に分けてな。戦は東軍が勝利したのじゃ。今のこの日本では歴史がそうなっている。もし未来から過去に転移した者が、西軍を勝利させる様に動いて実際に西軍が勝利したならば、歴史が大きく変わる事になる、歴史を変えた人物は、東軍が勝利した歴史の流れで存在しているのに、西軍が勝利した場合は若しかしたら生まれない可能性もある訳じゃな。まあ西軍が勝利してもその歴史を改変した奴が存在していたとした場合、そ奴の記憶はどうなる? 神としても修正不可能なくらい難しい事態になってくる訳じゃ。改竄する規模が大きければ大きい程、神にとってもかなりの手間がかかるじゃろうな、遥な昔と違って、今この世界の時代には、人の記憶以外にも記録している物が沢山有るからな。そうなると改竄する労力よりも、世界を分けた方が早い。世界を分ければその時点からの新たな歴史が刻まれる。東軍が勝利して繋がる流れの未来と西軍が勝利して流れる未来に別れる訳じゃ。歴史を改変した者が元の世界に戻るのかは判らぬが、戻ったとしても歴史を改変した本人には、相当なペナルティが施されると思うがな。自分が歴史を変えたと言う記憶は失くすと思うし二度と同じような事が出来ない様に能力を奪われるじゃろうな」


「判って来ました。梛様もそうなる要因になった訳ですね。だから神様が世界を分岐させない様に元の世界に戻したんですね」


「そうじゃな、デュゥーさんに話し掛けて来た神は、世界を分けないと言っておったんじゃろう?」


「……そういうセリフでは有りませんでしたが『梛様が此処に居ると世界を分岐しないといけない事になる。今なら未だ間に合う』と言っておられました。」


「フム……『今なら未だ間に合う』か……この世界で梛と言う男に会って話しているのは、うちの鎌柄と無憂だけじゃしなその程度であれば確かに神の介入も殆ど不要かもしれんな。鎌柄と無憂は梛と言う男に会った事を暫くすると忘れてるかもしれんがな。ワシも今話した事を神の介入に寄って忘れるのかもしれん。単に過去改変の話をデュゥーさんとしただけと言う体裁が整ってるとは思うが、紙や記憶装置に記録しても神の力で無かった事にされる可能性も有る。世界分岐のリスクに比べれば大した事では無いであろう……デュゥーさんやこれは頼みなんじゃが梛と言う男がこの世界に来た事は誰にも話さんでくれるか? 向こうから、こちらに来たのは男の力を借りた事にしても構わんが、一人で世界を渡って来た事にして欲しい」


「はい、判りました」


「此処には、変身の魔法を使えるのも居るから、それを習って習得すれば、この世界の街を観光する事も出来るじゃろう。色々と制限は有るがな。この国も昔に比べれば人がかなり減ったので、この周辺は人も来ないから余り離れなければ外に出るのも構わんよ。気に入った場所が有れば、そこに見つからない様に家を建てて住むのも大丈夫じゃ。家を建てるのも、そう言うのが得意な者もおるからな」


「はい、ご配慮有難う御座います」


「何か有れば無憂を頼ってくれ。無憂は異世界で亜神にまで昇りつめた男じゃ、戻って来て一応人間になっているが、能力は亜神のままじゃ。多分デュゥーさんの寿命について行けるのは無憂だけじゃろうな……」


 デュゥーは梛が生まれた世界で、梛が迎えに来るまで過ごす事となった。




よろしくお願いします。

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