バット女にご用心
特に何もなかった春の終わりごろ。
夜でも半袖で出歩けるような時期でも、俺はいつも通りパーカーでコンビニに向かった。
高校二年生だと補導される時間だが、この平和な街では深夜にパトロールする必要もない。
片手に○古タンメン中本とコーラを持ち、レジで金を払う。
「げ、またあの子だわ」
店員が外を見つめながら小さくつぶやいた。
釣られるように外を見ると、駐車場にバットを持った制服の女子高校生。隣町のヤンキーだろうか?
すぐに興味が失せ、商品を受け取り外へ出た。 絡まれないように、気持ち離れながら進む。
「ついに来たな……かかってこぉおおい!」
ヤンキー女子が急に大声をあげ、バットを振りかぶった。
一体、何事か! 俺の脳裏には既に『愛をとりもどせ!』が流れ始めていた。
彼女が見つめる先には、一匹のカラス。その眼球は、確実にバット女を狙っていた。
そして、バット女の上を通り過ぎる瞬間……フンを落とす!
あれは確実にバット女の頭を狙っているッ!
「ふ、既に三度も受けているその攻撃……見切ったり!」
バックステップで一歩分下がると、振りかぶっていたバットを一気に回す!
しかし、そのバットは空ぶったように見えた……が!
「まさか……フンに当てたというのかッ!?」
「分かっていないな小僧、あのカラスを見な」
いわれた通り、カラスを見ると呑気に飛んでいる。
だが、次の瞬間、カラスは何かにぶつかり体勢を崩した!
そして、そのままバット女の前に落ちてきた。
バット女は、そのカラスの足を掴み……
「フンは返したぜ……次は貴様が私のフンになる番だ」
そう言いながら、バットとカラスを抱えてどこかへ歩き去ってしまった。
俺は、ただ一つ思った。
――――――こいつ絶対関わっちゃならんやつだ。