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第5話 うち来ますか?

第5話の主な登場人物 

佐山 光一  地域対策安定課、事務課長

日下部 奈々 地域対策安定課職員

中村 竹蔵  金穂市長



第4話の続きから

俺の頭の中はただボーッとしていた。今日からすむ家がない。

俺は市長に「市長、説明してください。」と言った。俺はどうして良いか分からなかった。半分市長に当たるような言い方をしてしまった。市長は「分かった。ここでは難だから私のデスクの前にしよう。」と言って俺を市長室見たいなブース(以外゛市長室゛とする)へ連れてった。

ブースとは言っても個別指導塾のブースとほぼ同じだ。ちょっと小高い仕切りが回りを囲んでいる。

ブースの中には市長専用の大きめのデスクが一つあり、その前に三人掛けのソファーが二つ向かい合う形でおいてあった。

市長室に着くと市長がそのソファーを指差したので、俺はそこに座った。

俺は市長に「何で賃貸借契約書に俺の名前が書いてあったんですか。しかもどうして俺の職業が“土木作業員”になっているんですか。」と聞いた。市長は俺に対して「君は日下部君からこの島の事情について聞いておらんのかね?」といった。すると話し声が聞こえたのか自分のデスクに戻っていた日下部さんが慌てて市長室にやってきて「申し訳ありません市長、ついバタバタしていて佐山さんに説明することが出来ませんでした。」と言った。

市長はため息をついて「日下部君が言ってないなら私から言おう。」と俺に何故、金穂市の人々が金穂市役所職員の事を嫌っているのかについて説明を始めた。

市長から聞いた話は金穂市が抱えているどうしようもなく、自治体だけでは解決出来ないシビアな問題だった。

第一話で出てきた通り、金穂市役所は税収が他の自治体に比べて著しく少ない。そこで金穂市は少しでも赤字を改善するために何と、市が運行する路線バスの運賃や、戸籍証明書等を発行するときに発生する手数料を高くしたのだ。これに市民の皆さんが「市民の生活を楽にする為にあるはずの市役所が赤字改善の為に市民をの生活を金銭面で苦しめるとは何事だ!」等と言って怒り出し、市役所職員に嫌がらせをするようになり、お互いの関係が悪くなった。

市役所としては円滑な運営を行うため、市営バスの運賃や手数料の値上げは仕方がないと何回も集会を開いては説明しているが、市民は簡単には納得してくれないらしい。

さっき俺が保谷さんのアパートに入居することを断られたのも、市民からの市役所に対する嫌がらせの一環とのことだ。

ある程度の説明が終わった。取り敢えず俺は市長から「余り市民の皆様とは馴れ馴れしく話さない、手数料やバスの運賃の事で何かお叱りを受けたら゛すみません゛と謝る」と言う事を徹底するように言われた。

そんなことより俺の家!俺は市長に「俺は今日からどこに住めば良いのでしょうか?」と聞いた。すると日下部さんが「じゃあ、うち来ますか?」と言ってきた。

「えーっ!良いの?」俺は驚いた。

「はい、うちの実家は金穂市にあり、アパートやっているので。金穂市役所の人だと日根野さんが入居しています。確か一つ空き部屋が有ったはずです。」日下部さんの一言に俺は驚いた。ってか日下部さんの実家がアパートやっているなら元からそこに俺の新居を手配して置けばよかったじゃん。

市長にそう言うと「いやぁ~、同じ職場の人がやっているアパートなんかに入居させたら佐山君が落ち着かないかと思って。」と言ってきた。市長、職場と対立関係にある人がやっているアパートに入居する方が落ち着きません。

と言うことで俺はなんとか無事に新居を決めることが出来た。日下部さんのご実家が経営されているアパート「日下部壮」は金穂市役所から市営バスで30分くらいの所にある五階建ての単身者向けアパートだ。

そんなこんなで市長との話が終わったのは、定時の午後五時から一時間経った後だった。アパートの近くにあるバス停「裏金穂」に行く次の市営バスは18時15分に金穂市役所を出発する。 

今は18時10分、急いで支度をして停まっていた「大海経由裏金穂行き」の路線バスに飛び乗った。勿論、日下部さんと一緒だ。

さて、新しいアパートはどんなところだろうか?俺はバスに揺られながらそんな事を思っていた。

       第六話へ続く

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