第一話 金穂市へようこそ
第一話の主な登場人物
佐山 光一 地域対策安定、事務課長
2017年3月31日、俺は金穂フェリー金穂港行きにの中にいた。
俺の名前は佐山 光一。元々は東京の市役所で地域課長をやっていたサラリーマン公務員、27歳独身だ。お見合い話もこの歳にしては余りないのでこのまま独身生活を貫くつもりだ。
俺は東京都内で前のように公務員を続け、職場に染み付いた古い昇格制度に身を任せて部長クラス以上の役職で定年退職、その後は年金だけでボヤボヤ老後を過ごす人生プランを夢見ていた。
しかしそんなプランはこの前の部長からのお呼びだしで打ち砕かれた...。
「佐山、お前は4月から金穂に行ってくれ。向こうでの役職は地域対策安定課、事務課って言うとこの課長だ。」
俺は一瞬夢を見ているのかと思った。
「え~~っ、か、か、か、金穂ですかぁ~っ部長。あんな所にどうして僕が行かなきゃならないのですか。しかも地域対策安定課ってどんな所ですか。」
俺が驚くのにも無理がない。金穂市は新潟県佐渡島から北西におおよそ60キロ進んだ金穂島にある小さな離島都市だ。金穂市は全国の地方都市ののなかでもトップクラス級で過疎化が進んでいる。
ちなみに金穂市の人口は50687人であり、18歳未満の金穂市民は9072人と全体の二割以下しかいない。その上金穂市は60歳以上の市民が人と全体の約7割もいる。
これだけ高齢者多く、若者が少なければかなり多くの割合の年金が必要だ。
つまり、金穂市は税収が他の自治体に比べて著しく少ない。
そのため、経費削減を目的として市役所職員1083名から837名、25個ある部署を8個までに削減、再度人事の振り分けを実施したのだ。
そんな中「観光課」「住民課」「交通課」を1つに集約したのが「地域対策安定課」だ。
「地域対策安定課」の名前の由来は「地域の観光資産や交通の管理、住民の皆様に対する質の高い自治体サービスの提供を先導し、自治体行事の安定克つ健全な企画及び運営を実施する部署」っと言う。
俺はそんな明らかに仕事が多い部署の課長となってしまうのだ。
「仕方がないのだよ佐山君。これは上からの命令だ。ここで逆らったら君は部長になれない。だからここは済まないが大人しく行ってくれ。頼んだよ。」っと部長は「頼むから指示を聞いてくれ」と言わんばかりの顔をして言った。揉めたんだろうな~、人事異動で。
「そっ、そんな~」部長の顔を見て俺はそれ以上言い返せなかった。
そんな訳で俺は金穂島にある金穂市役所へ異動となった。
「間もなく終点、金穂港に到着します。ご乗船ありがとうございました。」 アナウンスが終わると同時に船は金穂港の港内に進入した。やがて出入口のドアが開き乗客が船からどんどん降りていく。
俺は金穂港で市役所の人と待ち合わせをしているはずなのだが、ターミナル内には俺を出迎えようとする人はいない。それどころかターミナル内にいる人は何故か俺を見ると、「誰だあいつ」や「市役所の新任かもしれねーな。あー、何でここの税金は高いのかなぁ」等と言い。陰口を叩くようような仕草を取る。
「何の言いがかりだ」と思った俺はまだ知らなかった。なぜ皆がこのような事をを俺の近くで言うのかを。そしてそれが原因で俺のこの町での生活が大きく左右されることも。 第2話へ続く