その7
久我君と朝食を終えた私は外に出ていた。
今から久我君とデート。考えただけで頬が緩んでしまう。こんなだらしない顔久我君に見せられないよ。
デート先はパチ屋さんであまり煙草の匂いとかは好きじゃないけど、久我君と一緒ならどこだっていいし楽しくなる。その場に久我君さえいてくれるならゴミ置き場だって美しい摩天楼と化すよ。
他人が見ても一目でわかるくらい楽しそうに待っていると久我君が部屋から出てくる。実は着替えを外で待ってたの。まだ見られるのは恥ずかしいみたい。
「悪い待たせた。その首元寒いだろ。臭いかもしんないけどこれ。」
と、久我君はマフラーを手渡してきた。
臭くなんてない柔軟剤の匂いがする。
久我君のこういう優しさがすごく好きだ。思いやりがあるというか人の事をちゃんと見てる。なんの下心もなしに平然と優しくできる。ここが有象無象と違う久我君のいい所だ。
「ありがとう。凄く……あったかい……。」
「エロく言わんでいい。じゃ、行くか。」
久我君は優しく私の頭を叩きせっせと歩いて行く。叩かれた頭をさすり私も後を追った。
「小鳥遊今日勝ったら飲もうぜ。勝った時の生ビール程うまい物ないぞー。」
飲むと言う単語にすかさず反応する私。
「いいの!私お酒弱いから部屋に連れ込んで襲ってね!ゴムならちゃんとあるから!穴あきの!」
「ちゃんとねーじゃねーか!お前の性に対するアグレッシブさ怖すぎるわ。」
久我君はちょっと身を引いてジトっとした目で見てくる。久我君のジト目!可愛い!
久我君は手が早いって聞いたから手を出しやすいようにしてるんだけどなー、やっぱり直接的なボディタッチの方が効果的かな。
「久我君手つなぎたい。」
「ん?まぁいいけど。」
ぎゅっとなれた手つきで恋人繋ぎをされた。
その瞬間血が逆流したみたいに体が熱くなって顔から火が出るほど恥ずかしくなってきた。嬉恥ずかしってこういう事か。
久我君は平然と前を向いて歩いてる。嬉しいのは私だけか……。
そのまま歩くこと数分久我君がいつも行ってるパチ屋さんについた。
中に入ると耳うるさい派手な音と煙草の匂いで少し意識が遠のきそうになってしまった。
「今日はあんまり人いないから隣同士で打てそうだな。」
「うん!勝てるといいね!」
楽しそうな久我君を見てるとなんでも我慢できる。久我君と飲むために頑張ろう。
久我君が座った台の横に座り慣れない手つきでスロットを回していく。
3時間後……。
「お金貸してください小鳥遊さん。」
パチ屋さんの外で全額使ってしまった久我君が私に頭を下げてくる。
「でも私ももうお金ないよ……。」
私も全額使ってしまった。4千円くらいだけど。久我君が打ってる間はずっと休憩室でのんびり過ごしてたのだ。
「まじか……。もう死ぬしかないのか……。」
悲しそうな顔をする久我君。
「でも銀行にいけば少しはあると思う。」
その言葉を聞いた瞬間久我君の目がすごくきらめいた。
「小鳥遊……、ありがとう……。三万円貸してください……。」
「.....うんわかった!お金おろしてくるね!」
久我君の悲しそうな顔なんて見たくない。お金で久我君が嬉しそうな顔をするならそれでもいい。お金なんて働けば後で手に入るけど、久我君を笑顔にできるのは今しかない。
お金をおろして久我君に渡すと凄く嬉しそうにしてくれた。喜んでくれてよかった。
「ありがとう小鳥遊!おまえ本当に最高だよ。行ってくる!」
駆け足で久我君はパチ屋さんに入っていった。勝って久我君とお酒飲みたいな……。
久我君とパチ屋さんを出ると辺りはすっかり真っ暗になっていて月が綺麗に夜空に咲いていた。




