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クズライフ!!  作者: み9
小鳥遊の偏愛
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その5

 オンボロアパートに着き携帯を確認すると知らないアドレスから白紙のメールが一通届いていた。題名と本文どちらも白紙のメールが。不思議に思いながらもそのメールは淡々と削除した。

 寂しい薄汚れた部屋の扉を開けると月明りでかすかに照らされてほこりが宙に舞うのが見えた。

 「これは掃除しねーと駄目だなぁー。久しぶりに秋さん呼びますかー。」

 秋にはこれまでに4回ほど掃除を頼んでいる。3回目に少し嫌な反応されたから4回目あいつの誕生日サプライズで掃除頼んだら滅茶苦茶切れられたのがいい思い出だ。

 少し寝床周りを正してからシャワーに入る。お酒飲んだ後の熱々のシャワーって危ないけど気持ちいいんだよな。体に悪い事って最高に気持ちいい。

 寝巻に着替えると携帯に着信が入っているのに気が付く。公衆電話から32件ほど。32件!?さっき玄関前で携帯見てから15分くらいしか経ってないぞ!?

 「ふぁ!?なんだこれは!?怖い怖い怖い!」

 履歴すら削除し携帯の電源を切りすぐさま毛布に潜る。案外人間こんな事でも怖くなるもんなんだな。

 そんな恐怖の連想は続いて先ほどのメールも何かの前兆ではないかもっと言うと秋が家までついてこなくていいと言ったのも何かを予兆してたのでないかとありえぬ事を考えてしまう。

 そんな事を考えていると、うん普通に寝た。馬鹿だからそこまで深く考えれなかったのが本音です。



 ピンポンとチャイムの音で目が覚める。時計を見ると午前10時。

 「……誰だ?こんな朝早くに?新聞の勧誘だったら殺す……。」

 のぞき穴からロクに確認もせずにドアを開けるとそこには暖かそうな白いコートを着た小鳥遊が立っていた。

 「お、おはよう久我君!会いたくて来ちゃった。」

 「おはよう。お疲れ。おやすみ。」

 ドアを閉める。誰だっていいけど睡眠だけは邪魔せんでくれ。生きる楽しみが睡眠しかないんだ。起きてたって辛い現実しか見えてこないからな。

 「ちょっと待ってよ!」

 ドアを開けて玄関まで入ってくる小鳥遊。なんで?おやすみしたじゃん?

 「もう起きてないと学校遅刻しちゃうよ?今日歩きで行くんでしょ?あと朝ごはん作って来たんだ。一緒に食べよ?」

 そう言って可愛いバスケットを見せてくる。この時代と季節にバスケットとは中々乙なもんだな。乙って言いたかっただけだけど。

 そんな昨日からの一応彼女の厚意を無下にできるはずもなく渋々と小鳥遊を部屋に上げる。

 「汚いからちょっと待ってて。適当にスペース作るわ。」

 「あ、私も手伝うよ!いや、手伝わせて!」

 小鳥遊も参戦して一緒に片づける。片づけると言っても床に敷きっぱなしの布団を隅に追いやってゴミらしき物を捨てるだけだけど。

 あらかた掃除も終わり部屋の真ん中に小さなテーブルを置き朝食にする。少し小鳥遊が作って来た料理に興味があった。

 「何作って来たん?」

 煙草に火をつけながら聞くと、小鳥遊は凄く喜んだ顔でバスケットの中を見せてきた。

 「今日はお惣菜パンならぬお惣菜おにぎりです!おにぎりの中に色々なおかずが入ってるんだよー。後この魔法瓶にはなんととん汁が入ってます!どう?美味しそうでしょー?」

 「おにぎりって基本中に何か入ってるもんだろ。」

 バスケットの中身はいくつもの二口サイズのおにぎりが入っていた。昔よく母ちゃんに作ってもらったっけ。

 「じゃ、一つ貰うわ。」

 おにぎりを手に取りいざ、実食。具は卵焼きのようだ。

 「小鳥遊……。」

 「え?美味しくなかったかな?」

 不安そうな目をする小鳥遊に俺は驚愕の表情を浮かべた。

 「めちゃめちゃ美味いじゃんこれ!お店開けるんじゃね?」

 あまりの美味しさに称賛する。味について語れるほど色々な物を食べた事はないがこれは確実に万人が美味しいというはずだ。

 「本当に?よかったー。」

 小鳥遊は安心したかのようにほっと息をついた。

 「このおにぎりも食べてみてー。具がウィンナーなの。久我君ウィンナー好きでしょ?」

 「まじ!食べる食べる!」

 この調子で持ってきたおにぎり全部食わされて地獄だった事は言うまでもない。



 朝ごはんを終えて小鳥遊と話しながら一服していると大学に行く時間が近づいてくる。それと同時にパチスロにも行きたくなってくる。

 現実逃避と言うか逃げ癖がついてしまったというか、面倒くさい事だと思うと一気に他の事に逃げたくなるんだよな。

 ここで問題は小鳥遊だ。俺と一緒に大学に行くために来たのに俺が行かないなんて本末転倒も良い所。

 ふーっと煙草を一息ふかし小鳥遊の説得にかかる。

 「なー小鳥遊。今日大学行くのやめん?」

 「え……、嬉しい……。もう抱いてくれるの?」

 「どういう思考回路してんだお前。」

 頭ぶっ飛んでるだろこいつ。大学行くのやめないって質問がどう解釈したらお前を抱くになんだ。天才かな?

 「普通に大学に行くのやめて……、そのーメダルゲーム的な物をしに行かない?」

 「デートって事!?」

 「うん、そうそう。そんな感じ!」

 小鳥遊があまりにも目を輝かせてきたので咄嗟にデートに肯定してしまった。

 「やったー!久我君との初デート……、どんな下着着けてきたっけ……。」

 喜ぶ小鳥遊には申し訳ないが映画とかホテルに行くわけはない。こういうのにも合わせてくれないと後々付き合っていけないと思うからな。

 「小鳥遊、お前パチスロ打てる?」

 「パチスロ?えー、何回か友達と行ったくらいかな……。詳しくはないかな。」

 小鳥遊はケロリと答えた。何回か行ったことあるなら話は早い。

 「デートはパチスロでもいい?今月厳しくてさー。」

 申し訳なさそうな顔をしながら小鳥遊を見る。昨日2万円小鳥遊にもらって厳しいはずもないのだが大学には行きたくない。

 そんな俺に小鳥遊はいつもの可愛い笑顔をくれた。

 「いいよ!久我君と一緒ならどこでも楽しいし!」

 少し胸の真ん中あたりがずきりと痛んだ気がした。

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