その20
「だからぁー、アイツのキスめっちゃ雑なわけ!超下手くそ。もう唇がくっついたらキスだと思ってんの!甘いわ!そんなんで誰もときめかねーっつーの!!」
「秋さん.....、飲みすぎっすよ.....。いやマジで。」
あの飲み会から2時間ほどか。べらぼうに酔っ払ってしまった。今話してるけどこの記憶が残るかどうか分からないくらい酔ってる。
別に酒を勧められたとかはないけどなんか無性に腹が立った。小鳥遊さんの事とか長谷川の事とか久我の鈍感な優しさとかに。結果酒をあおってこの始末。気持ち悪さがないのがまだ救いだね。
「なによ?は?お前が飲みに行こってゆったんだから来たんだろーがあぁん!?すみませーん!ブルドッグくださーい!」
「おいやめろそれ以上飲むな!俺の財布が死ぬから!キャンセル!マスター、水ジョッキで!」
なんだこいつ奢るとかゆってた癖にケチくさいな。宵越しの金持つとかダサさ極まりない。ムカつくから後でローキックかまそう。
運ばれてきた水をコクコクと飲む。少し落ち着いたけどテンションは変わらない。
「まぁちょっとはストレス発散できたか?俺馬鹿だからこういった感じでしか慰めれないけど大丈夫か?」
「苦しゅうない良きにはからえ。」
「それなら良かった。マスター、チェックお願いします。お前歩けんだろ?先出てろ。」
ちぇ.....、もうお開きか。もう少し飲んで話したかったわ。話題は変わる事ないだろうけど。
この飲み終わりの寂しさはいつになったら感じなくなるのだろうか?永遠に寂しいままか。このまま帰って寝てしまえばいつも通りの日常が始まる。それが寂しくて仕方がない。
外に出ると町はすっかり眠っていて電車も止まり人もほとんど歩いてなかった。この世界に取り残された感、嫌いじゃない。
中二病上等の妄想をしていると財布を見ながらため息をつく久我が店から出てきた。こいつ多分もう札がないな。頑張れ若人。年末という怒涛の飲み会乱舞をどう賄うのか見物だ。
「もう俺の財布には銅貨以下しかありません。正直死にたいです。」
「年中金欠のあんたなら乗り越えられるわよ。大丈夫!駄菓子屋ならあんたでも戦える!」
「お前駄菓子なめんなよ!うまい棒二本目でオーバーキルだぞ。増税が憎くて仕方がない。」
大げさに肩を落とす久我。そんなになってまで奢ってくれる姿勢に敬礼だ。あ、めっちゃ睨んでる。絶対金返さねーからな!今日は奢るって言われたし!ふん!
「.....はぁ.....。まぁいい。後これ忘れてたぞ。」
と右側の髪に花柄の髪留めを付けられた。酔っ払った勢いで外してたのか。てか付けるとこそこじゃないけどね。髪留まってないからなそこじゃ。まぁ付けてもらう事は悪い気はしないけど。
「ありがと。スッキリしたところで私帰るわ!今日はごっそさんね!原付乗って帰んなよ!即通報するからな!」
「うっせー!置いて帰るわ!.....じゃあ気いつけて帰れな。またなんかあったら言えよ。」
最後に優しくそう言ってとぼとぼと久我が帰っていった。
「ふぃー。酔った酔った。一応メールでもありがとうってゆっとくか。メールでのアフター感謝も欠かさない私まじでいい女だわー。」
不可解な場所に付けられた髪留めを上機嫌で弄りながら暗い夜道を歩く。視界はガンガン周り今にも倒れそうだけど。
「あぁ歩くの辛い.....。後1分もしないうちに着くだろうけどタクシー乗りたい.....。」
細い路地に入りここを抜けるともうマンションが見える。あーやっと部屋で寝、
ガン!
意識が飛ぶ。頬の冷たさが地面から伝わってくるものだと気づくのに少し時間がかかる。どうやら倒れたらしい。え?なんで倒れてんだろ。気づかないうちに立てなくなるほど酔いが回ったのか?でも頭が痛い。酒のせいか?状況を全く整理出来ない。
(だめだ。全くわからん。立てないし、これはもう.....、眠い.....。)
ここらはあんまり治安悪くないしあと少しすれば朝日も登る。私はその体勢のまま眠りについた。あー肌寒いのが丁度いい.....。
そして私は病院の個室で目を覚ました。




