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クズライフ!!  作者: み9
小鳥遊の偏愛
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その1

 外のバイクが通る音で目が覚めた。格安オンボロアパートは窓を閉め切っても外の音をダイレクトに部屋の中に招きいれてくれるから困る。

 ゆっくりと体を起こすと窓からは鮮やかな朝日が目に入りなんとも気持ちがいい。

 大きく伸びをしてから今日の予定を思い出す。えっと……、大学の授業が2限から5限までか……、今日のバイトは休みだったか。

 とりあえず顔を洗って出る支度を済ませる事にする。今何時頃だろうか?この朝の気持ちよさから察するに余裕で2限に間に合う時間だろう。

 目覚まし時計をチラりと横目で見ると長針と短針は重なり堂々と12を示していた。


 「……2限もう終わってるじゃねーか!」


 訂正気持ちのいい昼だった。


 どうも初めまして、俺の名前は久我。ピッチピチの大学2回生、時々寝坊してうっかり単位を落としかけるどこにでもいるお茶目な大学生です。

 まぁ現実は彼女に振られて堕ちに堕ち就職が嫌で大学に逃げ、しかもその大学ですら怠慢にしている人生負け組予備軍です……。


 とりあえず、2限が終わっているとなるとお昼休憩を挟んでからの授業だから今から行っても1時間ほど時間が余る。

 顔を洗い汚いスウェットから着替えて大学に行く準備を済ませ外にでる。もう完璧に夏も終わり秋が始まったのか湿気もなく肌寒い風が首筋を冷やしてくる。

 「うー、結構寒いな……。一枚上着を羽織ったのは正解だったかな。」

 部屋の鍵を閉めアパートの階段を下りていく。うちのアパート安くて古いから気を抜くとこの階段でも死ねるから素敵だな。綺麗なバラには棘があるみたいな、違うか。

 不慮な事故もなく階段を下りきりすぐ横にある駐輪場に向かう。愛車のランザーク(原付)を出しながら時間の潰し方を考えていた。

 「うーん1時間ちょっとくらいか……、微妙な時間だな……。」

 無論答えは決まっている。誰に見せるわけでもないがしょうがない感を出すために考えているフリをしているのだ。

 煙草を一本くわえて火をつけ決まっていた結論を口に出す。

 「よし!パチスロ打ちに行くか!」

 ランザークのエンジンをかけ勢いよくアクセルをひねりパチ屋に直行した。

 どうも、ただのクズです!


 

 大学に行く途中の道に少し大きな光り輝く建物。よく寝坊した時とか大学終わりの暇な時に寄る行きつけのパチ屋だ。

 ランザークを置いて中に入ると平日の昼間にも関わらず人は沢山いた。

 「結構賑わってんなー。今日はイケそうな気がしてきたぜ……。」

 勝てそうな台を探すが中々決めあぐねてしまう。空いてる台はどれもこれも微妙な台ばかりだ。

 こういう時は直感で決める。目に入った空き台にすかさず座る。

 「この直感を、俺は信じる!」

 野口を生贄に捧げメダルを召喚し、いざ尋常に勝負!


 2時間後……。


 パチ屋を出ながら財布を開く。

「なんで……、もう諭吉が3人も死んだ……。ありえない……。時給-15000円.....。」

 ボコボコにされてしまった。今月の給料貰ってまだ来月にも入ってないのに使えるお金残り2千円って……、神は俺になんてひどい試練をお与えになったのだ……。

 無宗教のくせに神を呪いながら時計を見ると時刻は2時半、もう少しで4限が始まる時間だった。

 「やる事もないし仕方ない。授業出るかぁ。」

 ランザークに跨りパチ屋に中指を立てながら俺は大学に向かった。


 パチ屋から大学はそう遠くなくランザークで10分かからない程度の距離なので4限の始まる5分前には大学に着いてしまった。

 俺の通う大学は馬鹿すぎる事はないが頭が悪いのは明白な三流大学だ。後、無駄にでかい。

 正門をくぐり大学指定の駐車場にランザークを置く。

 ここでいつも自分が置いている所に他の自転車とか止まっていたらちょっとその持ち主呪いたくなるよね。俺心狭いから。

 無事呪わずに済むようでいつもの所に置くとぐしゃっと何かを潰した音がする。

 「……?あー、ジュースのゴミかよ。おっこのジュース俺の好みの奴だ、ポイ捨ては許されんけどセンスあるなこいつ。」

 たまたま買っただけなのかもしれないのに他人とのシンクロに謎の感動を覚えつつそれをゴミ箱に入れる。


 駐輪場を出て教室に向かおうとすると後ろからドンと強くも弱くもない力で押された。

 「珍しい!あんたが登校してるなんて!」

 振り向くとそこにはケタケタと笑う栗色のショートカットの背の小さい可愛らしい女の子が立っていた。

 「珍しくねーわ、大学生は大学に通うから大学生なんだぞ?」

 「休みより大学に来てる日にちの方が少ないあんたはどうなんのよ。」

 こいつの名前は秋。入学してから授業が同じになる回数が多く気も合いすぐ仲良くなった。多分大学の友達の中では一番仲が良いと思う。だから俺は、こいつの事を親しみを込めてモブって呼んでいる。理由は俺の人生において秋はモブキャラ並みの活躍しかしないだろうから。

 「うっせーなモブ。ニートでいいよニートで。じゃあな。」

 少し不機嫌になって歩き出すと秋はトコトコと隣について顔をのぞき込んできた。

 「え?ちょっとなんでそんなにイライラしてるのー?」

 少し顔を膨らませながら怒ってきた。俺その怒り方現実でしてる奴初めて見たわ。案外……、気持ち悪いな。

 「きもいからその顔やめろ。」

 素直な気持ちを口に出して言った。やっぱり人間素直が一番!

 「きもいとかひどい!レディへの扱いが雑なんじゃなくって!?」

 「いや一人前のレディだったら俺もそういう対応してるからな?お前背も小さいしスタイルも別にじゃん?あとただついてないからレディだなんて発想が片腹痛いわ。」

 「下ネタとか……、マジで引くんですけど……。」

 秋は自分で肩を抱きながら一歩身を引いた。そういえばこいつ下ネタ駄目だったな。反省。


 教室に着くとだだっ広い室内にちらほらと生徒がいて授業の準備をしていた。俺は授業をあまり聞く気はないので後ろの方の席に直行してすぐ眠れるように筆箱にタオルを巻いて即席枕を作り机に置いた。秋も隣に座ってきた。

 「え?なんで隣に座るの?臭いから向こうの席行ってくれない?俺寝るし。」

 鼻をつまみながらしっしっと手で追い払う。

 「は?臭いって誰が?あんたが臭いんでしょ?あー臭い、ヤニ臭いクズ臭いわー。」

 「クズ臭いってなんだよ!クズって匂うの……?え、まじで?」

 性格で体臭が変わるなんてやばいぞ、どれだけ猫被って取り繕っても体臭でばれるなんて……、結構いいかもしんないな。

 秋は向こうに行く気はないのか授業の準備を隣でちゃちゃっと済ませて携帯をいじり始めていた。

 そしてチャイムが鳴る。

 その音を聞くと同時に俺はスイッチでも入ったかのように眠りについた。今日はなんだか疲れたよ……。パチスロしか打ってないけど。

 授業中の居眠りほど気持ちいい物はないと思う。講師の小さな声が良い感じの子守歌みたいに聞こえてきてすごく心地がいい。

 そろそろ意識も夢の中へという時に何か横からとんとんと叩く感触がある。

 「起きなよ、授業来てすぐ寝るとか怒られるよ?」

 なんだこいつおかんか?おかんなら俺の体調や精神状態を知ってここは寝かしておくべきだろ。あ、でもこのとんとんなんか落ち着く。

 「モブ、そのとんとん凄い寝れそうだから続けて。」

 「起こしてるのになんで寝る事を手伝わなくちゃいけないのよ!」

 ばん!と俺の背中を強く叩き前を向きなおした。女子のこういう時の暴力って結構痛いから反応に困る。

 それからは秋も授業に集中し始めたのか妨害もしてこずゆっくりと睡眠を取る事が出来た。



 ありのまま今起こった事を話すぜ……、目が覚めると授業が全て終わっていた。何を言っているのかわからねーかもしれないが俺にもわからねー。

 周りを見渡すと人は誰もおらず窓からは綺麗な夕焼けが教室をオレンジ色に染めていた。

 少し困惑していると教室のドアが開く音がした。

 「あ、起きたの?早く帰ろう。」

 秋だった。なんだこいつまだ残ってたのか?

 「何モブまだいたの?なんか用事でもあったん?」

 「いや用事は……あったっていえばあったし、無かったっていえば無かったけど……。」

 煮え切れない返答をする秋に納得する。そうか休みすぎた授業の講師に単位でもせがんでいたのかな?まぬけめ。

 「ふーん、まぁいいや。帰るか。」

 荷物をまとめ秋と一緒に校舎を後にする。外に出るとやっぱり生徒はほとんど残っておらず冷たい風の音が聞こえるほど静かだった。

 「結構寒いなー、モブこの後暇?飲みに行かね?俺金ないけど!ありがとう!」

 「飲みに行くのはいいけど……ってお金ないのになんで誘うかな!?しかもおごられる前提で!」

 そういいつつさりげなく財布の中身をしっかり確認する秋本当にちょろい。こいつ将来ヒモ男とかとくっつきそうだな。心配だ。

 「それじゃいつもの駅の居酒屋でいい?あそこならお財布にも優しいし。」

 「おし決まりだな!久しぶりだなー、超楽しみだわ!」

 俺は小さくガッツポーズをし何を食べようか考える。今日はモロキュウの気分だなー。

 「いや3日前も飲みに行ったからね?まぁ別にいいけど……。」

 「いや3日って72時間ぶりだぜ?久しぶりじゃん。」

 そんな感じで秋と楽しく歩いているといきなり後ろから可愛らしい声が飛んでくる。

 「あの!すみません!ちょっといいですか?」

 「え?」

 振り向くと綺麗な長い黒髪のふんわりしたファッションの可愛らしい子が立っていた。いや、可愛らしいというか……、正直ドストライクでタイプな子がいた。

 黒髪ロングっ子は恥ずかしいのか呼んだのに下を向いてもじもじしている。

 「何か用?」

 そう聞くとぱっと顔を上げて満面の笑顔が目に飛び込んできた。なんとも可愛い。

 「久我君だよね?私小鳥遊って言うんだけど少しお話したい事があるの。」

 小鳥遊は頬を赤らめながらそう告げた。


 これをきっかけに俺は小鳥遊と出会ってしまう。願わくばもっと違う形で出会っていればと悔やむばかりだ。

 


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