その16
見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた.....。
最悪だ。ゆっちゃんは多分寝てたからそれが不幸中の幸いか.....。いたたまれない気持ちになって飛び出して来たけど本当に最悪。久我に限って変な想像はしないだろうけどさ.....。てか急に盛んなよ長谷川!!そら誰だって急にキスされたら避けれないって!長谷川、後でシメる。
「あぁ.....、タバコ吸おっ。」
タバコはいつだったか、私が落ち込んでいる時に久我が勧めてくれてそこから吸い出した。吸い出したっていっても常日頃プカプカやってる訳じゃなく、落ち込んだ時や考え事をする時とかに吸う程度。
「国が定めた合法麻薬♪ここで吸わねば人生損損♪」
店を出てすぐの電信柱にもたれスーッと煙を吐く。いい感じのヤニクラがさっきの事の重大さを忘れさせてくれる。刹那的にだけど.....。
あぁなんて間が悪いんだろう.....。久我にあんな所見られるなんて詰めが甘かったわ。と言うか、見られてやばいと思ってることが嫌なんだけどね。小鳥遊さんと付き合ってから好きって分かったけど、徐々にその感情が大きくなって行ってるのがわかる。
「あー、もうちょい早く気づいてたらイケたのかなー。」
こればっかりは後悔しても仕方ない。だってずっと仲のいい友達だと思ってたしさ。高校生みたいにすぐ好きだなんて照れくさくって言えないし思えないよ。ま、久我はそういう目で私を見てないと思うのが一番の理由だけどね。
ため息をつきながら空を眺めているとガラガラっと店から誰かが出てくる音がした。多分あいつか。
「秋さんー。楽しそうっすね?」
タバコに火をつけながらニヤニヤと近づいてくる久我。名前で私の事呼ぶって事は.....。あー励ましに来てくれたんだ。やっぱり優しいなぁ。
「そう見える?ま、さっきまでは楽しかったかもねー。」
少し余裕のある態度を取ってしまうのは私の悪い癖。要らぬ意地を張ってしまう。女の子らしく素直に落ち込めたらいいんだけどやっぱり恥ずかしい。
「てか着替えてるけどバイト上がったん?」
もしかして私のため?と思ってしまうあたりまだ若いわ。
「休憩くれってゆったら上がらしてくれたわ。学生風情の後片付けしなくていいってまじラッキー。」
「風情て.....。あんたも学生でしょーが.....。」
お互い薄い笑いを浮かべてプカプカとタバコを吸う。こんな時間でも楽しいと思えるほどに私の久我への気持ちは大きい。
しばしの沈黙。お互いがお互いのタバコの煙を目で追い、どちらが本題を切り出すかを決めていた。いや私からは絶対触れたく無いけどな!
案の定久我が痺れを切らして沈黙を破ってきた。
「さっきの男って.....誰?彼氏なんていたっけ?」
言いにくそうに、でもハッキリとした口調。
「あー、ただの後輩よ。酔っ払って盛ったんでしょーね。」
「そうか.....。大丈夫なん?」
「大丈夫大丈夫!子供でもないしそんなん気にするほど乙女じゃなくってよ?」
嘘です、すこぶる落ち込んでます。いや実際キスされたことは本当に気にしてないけどさ。
久我を見るとなんとも真剣な顔をしていた。いつもこんな感じで気張ってたらもっとカッコイイのにな。
「.....秋。俺バイト終わって疲れたしビール飲みたいな。今から飲みに行くしついてこいよ。これ決定。」
とびきり優しい声色だった。
大事にされてんなー私、と思ってしまう。久我は仲がいいと判断した相手には物凄く優しく大事にしてくれる。友達は大事に.....か、小学生みたいな美学だけど結構好きだ。今日は甘えるか。
「ありがと。とりあえず飲み会終わるまで待ってもらっても?」
鋭い視線が私に刺さる。なんとなくわかったのはこれはいきなり刺さったって感じではなくじっくり観察された後に万を辞して刺されたって感じの視線だった。
(嫌な予感しかしない.....。)
こんな感覚に陥らせてくれる視線の持ち主は私の人生で1人しか出会ったことがない。どこから見られてた.....。完全に最初から見てたよな。あの子なら.....。
恐る恐る。ゆっくりと。視線の発信先を確認する.....。一つ先の電信柱に隠れた目と目が合う。
ニヤリ。
まただ.....。このなんとも言い難い恐怖を2度も体感するハメになるとは.....。背中には無数の虫がかけ登る感覚がし、かいたことのない汗が出る。
目が合い微笑みかけたそいつはゆっくりと私と久我に近づいてきた。その近づいてくる様はB級ホラー映画みたいに不気味だった。
「こんばんわー久我くん。秋さん。こんな所で何してるんですか?」
嘘のような笑顔で小鳥遊さんは私たちに声をかけてきた。人生山あり谷あり.....。谷深すぎんだろこりゃ。




