その14
今日は私が入っているサークル『ユニゾンズ』の飲み会がある。音楽をやるサークルらしいけどちゃんとした活動に行った事がないためその実態は未だに分かっていない。友達に誘われて1回生の途中から入りずるずるとここまで続いている。続いているって言っても飲み会参加してるだけなんだけども。
サークルのメンバーは全員で40人くらいいるらしいんだけど飲み会となると半分以上が欠席する、理由はわからないけど.....。だから私みたいに飲み会だけ来るって子も珍しくない。今日も人数が少ないため招集がかかった次第だ。
そして飲み会をやる店に着いた。店の前でがやがやしてる団体に声を掛けて入っていく。
「お疲れでーす。ゆっちゃん今日こんだけ?」
「あ、秋お疲れー。そだよー、やっぱり飲み会になると全然こないねー。」
いかつい金髪に似合わないおっとりした雰囲気のこの子はゆっちゃん。本名は萌咲裕子、私をこのサークルに誘った友達だ。おっとりしてるけど口は悪い。容姿は良く優しいからモテるんだけど酔っ払ったら、
「口臭い近寄らんで。」
とかゆうもんだから彼氏はいない。ダメな方向で素直がでちゃう感じの子だ。
ゆっちゃんと談笑してると後ろからあすなろ抱きを仕掛けられた。
「だーれだ。」
はぁ.....またか.....。
「誰だって.....誰ですか?警察呼びますね。.....あ、もしもし警察ですか?今息の荒いロリコン男子大学生に後ろからランドセルを無理やり背負わされようとしています助けてください。」
「ちょ!やめて下さいよ!そんな性癖持ってないし!ってまじで掛けてるじゃん!すみませんって!冗談が過ぎました!」
「分かれば良し。許したげる。」
必死に両手を合わせハニカミながら謝るこの子は長谷川君。一個下の後輩だ。サークルで知り合ってからやたらと懐かれてこんな感じでスキンシップを取られる困った奴だ。まぁ年下だし可愛げがあるっちゃあるし良いんだけどさ。
「秋さんやっぱり飲み会は来てくれるんですね!俺いっつも秋さんと飲めるの楽しみなんですよー!」
「そう?私はあんまり楽しみじゃないわ。あんた酔うとすぐくっついてくるしウザイし。」
「何でそんなこと言うんですか!秋さんも嬉しいんでしょー?俺自分で言うのも何ですけど男前なんですよ!」
「自分で言うな本当に.....。まぁいい顔してるんじゃない?分かんないけど。」
「やったー!秋さんに褒められて嬉しいですー!チューします?」
「いらん!!」
と、見てわかるとおり長谷川君は私のことが好きだ。なぜ断言出来るのかと言えば夏頃に告白されたからだ。もちろん断ったんだけどまだ諦めていないらしくいつも会うとこんな感じでアプローチしてくる。まぁ別に嫌って訳じゃないんだけど正直困っている。なぜ困るかってゆうと.....。
「あ.....、長谷川君お疲れー。今日も.....なんかカッコイイね!」
「ゆっちゃん先輩お疲れっす!そうすか?あざです!今日ちょっとキメてきたんすよー。」
「うん.....。凄くいいよ!凄く!」
ゆっちゃん.....長谷川君の事好きなんだってよ.....。
まさに地獄です。はい。告白の件は一応私と長谷川君ともう1人しか知らない内密な件なのでゆっちゃんはなんにも知らない。ゆっちゃんに長谷川君の事相談された時はゲロ吐きそうだった。多分吐いたと思う。
だから本当に困る。長谷川君が戯れ付いてる時ゆっちゃんめっちゃ悲しい顔してるんだもん。私は長谷川君にこれっぽっちも興味無いことは伝えたけどやっぱり心が痛いな。恋心って難しいわ本当に。
「じゃあみなさーん。集まったんで店の中入りましょー!」
会長の号令で店の中に流れ込んでいく。入る前からどっと疲れたわ。あー生中飲みたい。
「あ.....。」
今日久我入ってたんだ。サークルの飲み会で会うの嫌だな。長谷川君にベタベタされてる所見られたくないし.....。
「あんた今日働いてたんだ。へー最近は大学もちゃんと来て関心関心。.....って何よその嫌そうな顔は!」
心底嫌そうな顔だ。めっちゃムカつくけど、多分私らのせいで駆り出されたんでしょうね。
「お前サークル.....。いや.....その前にモブ、お前いい度胸してんな、お前らのせいで俺今日休みだったのに駆り出されたんだぞ。この恨みは生ビール3杯とチャンジャときゅうりのどぼ漬けでしか許さんからな。」
やっぱり。ちょっと悪いことしたかな。でも生ビール3杯とチャンジャときゅうりのどぼ漬けで許すなんて安いわねこの男。少し笑っちゃう。
「何それ、はいはい分かったから。店員さん席にご案内してくれますか?」
と笑いながら言うと舌打ちしながら席に通された。え?本当に怒ってたの?どうしよ.....。
席は少し広めの個室。長テーブルが2つ用意されていた。普段は仕切りを使って何組か座れるようにしてるけど今日は団体用に席が作られている。
どこに座ろうか迷っているとゆっちゃんから声がかかる。
「秋こっち空いてるよー。おいでー。」
実はこのサークルのメンバーとは仲良くない。悪いわけじゃ無いんだけども。ゲームとかすると盛り上がれるんだけどいざ歓談するとなれば会話が続かないから結局は1番仲のいいゆっちゃんの所に一緒に座るのだ。
「あ、俺も一緒に座って良いっすか?」
と長谷川君。勘弁してくれ!お前は先輩の席に行って潰されてろよ!と言えるはずもなくゆっちゃんがいる手前断ることもできない。ゆっちゃんも長谷川君と飲みたいだろうし。
「じゃあ私とゆっちゃんの間おいで。私角っ子に座って飲み物とか回すし。」
「やったー!ゆっちゃん先輩隣失礼しますね!」
長谷川君が嬉しそうに入ってくる。ゆっちゃんはもっと嬉しそう。はぁ.....長谷川君にベタつかれないように会話回して行かないと.....今日も大変だ。
飲み物が全員に渡り会長が乾杯の音頭を取る。乾杯が終われば飲めや食えやの宴の始まりだ。ゲームを始める所もあればただただ話して飲んでの所もある。私達は後者で3人でずっと話していた。長谷川君が私の方だけ見ることを許さないかのようにゆっちゃんに話題を振る。なんで酒の席でしかも年下と同い年に気使わなきゃならんのよ!地獄だわ.....。
そんなこんなで宴もそろそろ30分で幕引きとなる時ちょっと厄介事が起きる。




